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ケニアにいても、日本にいても、締切はそこにある 【#50】
“最大出力”と“サステナビリティ”の統合
一切活動をしてなくとも、法人もひとつの人格なので、存在するだけで毎年都民税が7万円かかる。それを払うのが悔しいから、というわけでもないが、(自分が経営する)モメンタム・ホースを静かに再始動させた。いつも温かくサポートしてくれる会計士の先生には頭が上がらない。
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久々にモメンタム・ホースのメンバーと仕事をして、みんなの編集力が著しく伸びがてて、嬉しさと誇らしさを覚える。自分がケニアでポーカーをしてる間も、みんなはブレずにずっと仕事に取り組んでいたので、当たり前なんだろうけど。自分もブランクを埋められるよう、一つ一つ丁寧な仕事を心がけたい。
20代の頃は「働くこと」と「働き方」を分けて考えられていなかった。例えば「ライター」は向いているけれど「ライターの働き方」は合ってない人を何人も見てきた。抽象的にいうと、(いま全力で仕事に取り組む)最大出力と(メンタルもケアしながら中長期で働く)サステナビリティのバランスは自分で差配しながらコントロールしなくてはいけない。特に起業家・フリーランスの場合、この二つを自分なりに統合しないといけない。
作業でパツらないために意識していること。まず、自分の集中力の持続時間と総量を過信せずに把握する。請負った仕事は締切に関わらずに一度早い段階で着手する。その上でかかりそうな作業量に見通しをつける。持っている仕事群に優先順位をつける。そして、リソース(集中力)をアロケーションする。ひと言でいってしまえば“PDCA”ということになるわけだが、その時々の自分の身体的精神的リソースは可変なので、過信することなく微調整を繰り返すのが成熟なのかもしれない。
時間と精神を溶かして、原稿を立ち上がらせる
すっかり、カジノ生活から離れて、家でシコシコと原稿執筆に取り組む毎日だ。生活のモードをシフトしてしまえば、案外、人間は自分が敷いたレール通りに行動できる。
そもそも、ブックライティング専業の人って日本に何人くらいいるんだろうか。体感100人くらいだろうか。ビジネスとしてのブックライティングの善し悪しはいくつかある。難儀なのは、基本的に出版までギャランティ発生しないので、作業開始からキャッシュインまでのタイミングが遅い。一方、携わる本が増えるだけ一応印税は積み上がる。いずれにせよ、専業一本足打法は成り立たなくなりそう。
原稿を書き始めてみると、難産じゃない原稿がない。離れてみて、ライターのヤバさに気づく。"heaven helps those who help themselves(天は自らを助ける者を助ける)”が完全に脳内こだましてる。
「俺、天才だな〜」と独り言を呟きながら、ゴリゴリと原稿を書くと、進捗が2倍になる(気がする)。
今も昔も、原稿を執筆するときはSportifyのプレイリスト“Deep Focus"を聴いている。圧倒的没入と引き換えに、膨大な時間と精神が溶ける感覚が怖い。
過集中して原稿を書いてると、ふとした瞬間に、脳の糖分メーターが枯渇しているのに気づく。
原稿の難所にぶち当たったら、そこで止まるのではなく、一旦先に進むことにしている。しばらく経ってから立ち戻ると、意外な糸口が見えて解決したりする。いつまで経ってもブレークスルーする気配がなければ、粘るより、潔く寝てしまった方がいい。一夜明ければ、頭がクールダウンしており、別のアングルから切り込めたりする。
原稿の難所で行き詰まり、一旦、TWICEのMVに逃避するムーブを何度も繰り返している。気づけば、YouTube ShortsのアルゴリズムがTWICEで最適化されている。脳と指先はアルゴリズムの奴隷なのだ。
原稿作業の休憩時間に『THE DAYS』観進めた。そのたび、どんどん暗い気持ちになった。でも切迫したシーンが続き、息を飲んだ。突然の有事に、毅然とした態度でぶれることなく、命を賭としてまで挑んだ本部長がカッコいい。そして、福島の廃炉作業はいまだに続いている。
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ケニアで無職、ギリギリの生活をしているので、頂いたサポートで本を買わせていただきます。もっとnote書きます。