見出し画像

【検証結果を公開】投票式でコミュニティメンバーにお金を配ったら超上手くいった

九州大学でQUSISというコミュニティを運営しているryogaといいます。

コミュニティメンバーに公平にお金を配る仕組みを検証したのでその結果を公開します!他のサークル・コミュニティ運営に活かされれば幸いです!


【QUSISについて】

QUSISは九州大学の学生で構成される学生コミュニティです。メンバーそれぞれが自由にプロジェクトに取り組み、日々コミュニケーションが起こってます。お問い合わせも歓迎です!連絡してね!

【コミュニティのお金の課題】

①眠ったままの貯金

QUSISには創立当時にスポンサーの方々から集めたお金がまだたくさん残っています。毎年みんなで使えそうな部室の備品やイベント時の食事代など、少しずつ使ってきましたがそのほとんどが活用されずに眠っている状況です。

②貯金を活用したい

貯金の使い道は、結局全員が得するような設備投資(本とかディスプレイとか)に収まりがちですが、これでは使う金額が限定的すぎて解決になりません。僕がやりたかったのは必要なコミュニティメンバーに渡すことです。

学生がプロジェクトを進めていると、お金の壁にぶち当たることが良くあります。福岡から東京への移動費などもそれなりの出費です。そこにQUSISの貯金を使ってもらって、コミュニティメンバーの活動を応援するのはとてもいい使い道なはずです。

③お金が雑に使われてしまう

メンバーそれぞれに、必要な金額を申請してもらうとしましょう。しかしこれでは貯金がかなり雑に使われてしまう可能性があります。

基本的に人はお金は貰えるだけ貰おうとすると思います。僕もきっとそうです。移動費がもらえるとなれば、ちょっと高めの飛行機を使ったり、本来必要ない移動をすることも気にしなくなるはずです。また誰でも移動費を払ってもらえると、金銭目的でコミュニティに所属する人が出てきてもおかしくありません。

④厳密な基準は作れない

ここで必要になるのが、申請を承諾するかしないかの基準をつくることです。しかしこれが非常に難しいです。金銭の利用目的は多岐にわたるため、それぞれを運営メンバーが判断するのも面倒です。

【立ち上げたプロジェクト】

QUSISの貯金の一部を必要なメンバーに渡しつつ、お金が雑に使われるのを防ぐにはどうすればいいか、実際に検証してみるプロジェクトを立ち上げました。QUSISの貯金から5万円を取り出し、全体にこのように連絡をしました。

50000円 』の使い道をみんなの申請と投票で決めていきます!個人やチームは例に従って必要な金額をこのチャンネルに投稿してください!
(例)
【提案するチーム】運営メンバーの4人
【使い道】4人でご飯に行きます
【金額】8000円(4人×2000円)

連絡のスクショ

要点とtodoをまとめるとこうなります
①お金が必要な人は、提案する人・使い道・欲しい金額を申請する
②申請に賛成する人はその投稿に✅スタンプを押す
③1週間後、✅スタンプが多かったものから金額が渡される


この決め方で5万円が実際に誰に、どのように使われるのかを実験してみました。「なんかDAOのトレジャリーっぽいね!」と思った方、全くその通りです!DAOのトレジャリーを参考にしています。

【5万円の結果】

結果的に5万円がどのように分配されたか紹介します。固有名詞はxxxでぼかして記載します!

#提案する人
xxx(4人でプロジェクトを進めているチームです)
#使い道
北九州で開催されるアイデアソンの交通費
#金額
10970円(4人分)

✅26個ついて申請通過!

#提案する人
xxx(運営メンバーの1人です)
#使い道
QUSISの交流会で予算をオーバーしてしまっていた食事代)
#金額
1,424円

✅24個ついて申請通過!

#提案する人
xxx(個人名です)
#使い道
スタバつくるアプリCoffee inc を買う
#金額
300円

✅22個ついて申請通過!

#提案する人
xxx(環境課題を解決するデバイスを作ってる人)
#使い道
プロトタイプの作成費
#金額
9000円(木材や針金、塩ビパイプなど)

✅19個ついて申請通過!

#提案する人
xxx(個人名です)
#使い道
Progate1ヶ月プラン代を1ヶ月間頑張る人に渡す
#金額
1,490円×希望人数

✅17個ついて申請通過!

#提案するチーム
xxx(Xを頑張って伸ばそうとしてるメンバーたち)
#使い道
Xプレミアム代のプレゼント企画をしたい!
#金額
2760円(1380円×2ヵ月分)

✅16個ついて申請通過!

#提案する人
ryoga(僕です)
#使いみち
使い道が決まらなかった分を貯金に戻す
#必要金額
999999円

✅8個ついて申請通過!(後ほど解説します)

#提案する人
xxx(個人名です)
#使い道
新規事業支援について話すための食事代
#金額
5000円(2名分)

✅3個つきましたが、5万円使い切っているのでお金は分配されませんでした!

「これ何のための申請?」と思った方のために解説です。

#提案する人
ryoga(僕です)
#使いみち
使い道が決まらなかった分を貯金に戻す
#必要金額
999999円

残り時間が1日を切った段階で、全ての申請を足しても5万円を超えませんでした。このままでは、終了直前にてきとうに1万円申請して自分で✅を押しても申請が通ってしまうことになります。その対策のために足切りラインを作ることにしました。

このように申請することで、どれくらいを足切りラインにするのかみんなの投票で決めることができます。✅が多かったものから必要金額が流れるため、この足切りラインに届かなかった申請にはお金が分配されません。

【結果の考察】

今回のプロジェクトの目的を再確認しておきます。
「QUSISの貯金の一部を必要なメンバーに渡しつつ、お金が雑に使われるのを防ぐにはどうすればいいか、実際に検証してみること」です。

①使われた金額について

5万円を超えていないという点が非常に興味深いです。お金がもらえるかもしれないとなれば、全員で5万円を取り合うこともできたはずです。今回それが起きなかった理由は「5万円=みんなのお金」という認識を正しく共有できたからだと思っています。

ただ単に欲しい分を申請するのではなく、5万円のうち自分が貰うならいくらか、どんな使い道ならみんなが納得してくれるか、それぞれが考えることで申請内容がとても丁寧なものになっています。急を要さないために、今回は申請をしなかった人もいるはずです。単にお金を配るとこうはなりません。

②分配されたメンバーについて

僕は誰よりもQUSISのメンバーのことを見ている自信があります。申請に通ってお金を受け取ったメンバーは全員、信頼できるメンバーであり、それぞれの活動を僕は心から応援しています。彼らに必要な金額を渡せたことにとても満足してますし、分配された金額にも全く異論ありません。

③通過しなかった申請について

今回、金額が分配されなった申請が1つありました。分配されなかったというのは✅スタンプが十分に集まらなかったということです。基本的に

【提案する人】に信頼がおける
【使いみち】に納得できる
【必要金額】が妥当である

この3つの条件が揃うと✅スタンプは必ず集まり、申請が通る可能性が高いです。今回の事例でいうと、【提案する人】と【使いみち】に問題がありました。普段からあまりコミュニケーションをとっていないメンバーでしたし、「食事に行く」という使い道がしっくりこなかったために投票しなかった人も多かったはずです。

仲良くみんなで投票しあうのではなく、申請にもちゃんと淘汰があったことを僕は嬉しく思っています。

【このプロジェクトの本質は何か】

コミュニティの貯金を有効活用するこのプロジェクトは以下の通りに進みました。このプロセスに隠れている本質的な構造はいったい何でしょうか。

①お金が必要な人は、提案する人・使い道・欲しい金額を申請する
②申請に賛成する人はその投稿に✅スタンプを押す
③1週間後、✅スタンプが多かったものから金額が渡される

このプロセスの本質は「信用の現金化」であると僕は考えています。

普段からコミュニティ内でコミュニケーションをとり、自分の活動や進捗を開示すると、自然とコミュニティ内での信用を得ることができます。そこで得た信用を現実的な支援に変換できるということです。

具体的に考えてみます。コミュニティに入ったばかりの人や普段全然コミュニケーションをとっていないメンバーはこの仕組みではお金を受け取ることができません。なぜならコミュニティ内での信用が十分になく、投票が集まらないからです。

信用があれば何でもOKというわけではありません。僕はみんなからそれなりの信頼がありますが(違ったらどうしよ…。)僕が10回も申請をしたらどうでしょうか。2回目までなら投票が集まりそうですが、それ以降は「ryogaもらいすぎだよ!」となって投票が集まらなくなるはずです。信用も引き換えればなくなります。

この企画をするとき頂いた意見

この企画を進めるにあたってこのような意見がありました。

みんなのお金を使うのだから、「なぜその金額なのかの説明義務」「本当に使ったのか事後報告」を義務付けた方が良い。

というか普通はそうするものですよね。ですが僕はこの2つ義務は全く必要ないと思っています。その理由は「信用の現金化」という側面を考えると明らかになります。

「なぜその金額なのかの説明義務」「本当に使ったのか事後報告」は本質的に何をしているかというと「信用づくり」です。担保となる事実を持っていくことで、自分の申請の信用を強めることができますよね。

しかしすでにコミュニティ内で信用を勝ち取っているメンバーは、余計な信用づくりをする必要がありません。信用を無駄に固めなくても、投票を集めることができるからです。コミュニティでまだ信用を持っていない人はともかく、説明義務や事後報告を義務化する必要はないと思います。

またこんな意見もありました。

有料アプリ300円分を申請して22個の✅をもらい、お金を受けとった人がいましたが(その方をAさんとします)それを踏まえて

あのアプリはAさんだけじゃなくて、ダウンロードしたい人全員にあげるべきではないのか?

この意見をくれた方は恐らく、今回のプロジェクトを「多数決で良い結論を出そう!」くらいに認識してしまってるんじゃないのかな、、と思いました。繰り返しですが、このプロジェクトの根本は「信用の現金化」です。多数決ではありません。

誰もが信用を現金化する自由があって、それを行使したのがAさんだけだった。それは成功してAさんは300円の現金をゲットした。ただそれだけです。

終わりに

コミュニティが持つお金を、メンバーに配る方法を検証してみました。この信用を現金化する仕組みは他のどのコミュニティでも再現性がありますし、特殊なツールを使うことなく、提案する場所とスタンプさえ押せれば実施することができます。

今後もQUSISの大切なお金をよりよく使えるような仕組みを作っていこうと思います。読んでいただきありがとうございます!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?