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うるおいとにぎわいのまちを目指して。徹底したデータ活用・検証からアプローチする東近江市の交通戦略とは

滋賀県東部の中核都市に位置する東近江市。2005年、2006年に近隣7市町との合併を行い、発展を続けています。
同市ではJR西日本や、近江鉄道、近江鉄道バスのほか、市が運営するちょこっとバスなどの公共交通によって住民の移動を支えています。さらなる住民の交通の足としての公共交通の充実に向け、デジタル乗車券「RYDE PASS」の導入などさまざまな取り組みを推進している都市整備部 公共交通政策課の主任の加藤様にお話を伺いました。


東近江市 都市整備部 公共交通政策課 主任 加藤 洋大氏

ーー東近江はどのような地域なのでしょうか?

 東近江市は、1市6町が二度の合併で誕生した市になりますが、市民の認識としては、東近江市というよりも合併前の市町のイメージの捉え方が強いように感じています。
 東近江市の中心地である八日市は、古くから2つの街道が交わる地域の商業の中心地で、賑わっていたと聞いています。私は、そんな八日市の商店街にある自営業の家で生まれ育ちました。
 八日市以外にも、「近江商人のふるさと」である五個荘、近畿最大の耕作面積を有する一大穀倉地帯があるなど、豊かな田園地帯でもあり、都市と田園の両面があるまちだと感じます。

ーー合併は東近江市にとって大きなポイントですよね。そんな中で加藤さんはこの課でどのような内容に着手されているのでしょうか

 現在の課に異動したのが、令和2年4月で、日本国内でも新型コロナの感染が拡大しつつある時期でした。
 私は、コロナ対応として、令和2年度、令和3年度に実施した近江鉄道、路線バスを利用し通学する子育て世帯に通学定期券購入の支援をする補助金事業を担当しました。この補助金を実施したことで、後々、様々な公共交通政策を検討する上で、重要なデータを得ることができました。
 例えば、時間帯によって近江鉄道が発車する時間帯にコミュニティバスが運行していない、通学費の問題で公共交通ではなく家族に車で送迎をされているといった課題を定量的に把握することができました。
 明らかになった課題に対して、令和4年度にはちょこっとバスを増便し、令和5年度から近江鉄道や路線バスで一定の通学費を超えた額を市が支援する補助金制度を作り、家族送迎ではなく、公共交通を利用して通学できるように取り組みをしました。
 最大の取組は、令和3年度に策定した地域公共交通計画です。地域公共交通計画は、東近江市の今後10年先の公共交通の方向性を定めるマスタープランとなるものでしたので、人口推移動態、都市計画や福祉政策等も踏まえつつ、計画を検討するのは、やりがいもありましたが、苦労も多くありました。

ーーこの規模の取り組みを短期で結果まで出されているのは凄いですね。当初、住民の方のご要望などはどういったものがあったのでしょうか?

 市民からは、近江鉄道、路線バス、ちょこっとバスの交通系ICカードの導入が最も大きな声としてありました。近江バス、ちょこっとバスは、令和2年3月に交通系ICカードを導入しました。
 この他にも、和式トイレの洋式化等の声もあり、地域公共交通計画に基づき、令和7年度中に鉄道駅の全駅洋式化を目指しているところです。
 私たち行政側も、公共交通を利用しやすい環境整備に向けて、研修会に参加し、様々な情報を得るようにしています。
 特に、情報の可視化について取組を進めています。公共交通の学識者の方もおっしゃっているように「利用者に知られていない情報は存在しないのと同じ」という点は、その通りであると思い、令和4年度にバスロケーションシステムを導入し、Google等でちょこっとバスの時刻表を簡単に検索できるようにしました。
 また、路線毎、停留所毎の利用状況などを定量的に把握し、ダイヤ改正に活かすことを目指し、ちょこっとバスに乗降カウントシステムも導入しました。
 公共交通政策実施に当たっては、利用者の御意見(定性情報)に加えて、利用動態などの定量的な情報も含めて、より効果的な政策実施を目指していきたいです。


ーー様々な取組みをされる中でRYDE PASSを知ったきっかけなどはどうでしょうか。

 東近江市には、まちづくりにとっても必要不可欠な公共交通機関であり、地域交通再生のロールモデルとして注目されている近江鉄道があります。
 東近江市だけでなく、近江鉄道のあり方を議論してきた近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会では、1人でも多くの人々に近江鉄道を乗っていただくきっかけとして、令和2年度から毎年秋に近江鉄道全線乗車キャンペーンを実施しています。
 キャンペーン実施中は、利用者が普段の2倍の利用があるなど、一定の効果があるのは分かったのですが、「誰が、どこから乗っているのか。」といったより具体的な情報を集め、鉄道利用だけでなく、地域のにぎわいつくりに活かすための具体的な定量データが取れたらと、課題も感じていました。
 そんな時に、近江鉄道株式会社が「びわこ京阪奈フリーきっぷ」で「RYDE PASS」を利用したのをきっかけに、デジタルきっぷの存在を知り、令和4年度に実施した近江鉄道全線乗車キャンペーンで「RYDE PASS」も利用できるようにしました。
 「RYDE PASS」を利用したことで、利用者の乗降実態等が見える化できるのは、利点だと感じましたし、より沿線自治体が一緒になり、近江鉄道の利用促進を図ることで、地域のにぎわい創出に繋げると感じました。

ーー県外からお越しになる方についてはどうでしょうか?

 東近江市には、びわこジャズ東近江をはじめ、地域のイベント、聖徳太子に縁のあるお寺、近江商人発祥の地など観光地としても楽しめるスポットが複数あります。近江鉄道沿線には、朝ドラや時代劇、映画の撮影でも使われているロケ地があり、おすすめです。
 公共交通としては、通勤・通学の足としての機能が最重要ではありますが、市外の方がビジネス、観光で来られる際に、利用していただけるように取組を進めていきたと思います。
 また、市内在住の方は、近江鉄道やJRを利用してお出かけする方もいらっしゃるので、京都方面の施設と連携し、一回でも多く公共交通を利用してもらえる機会を創出できないか等と思いを巡らしています。

ーー官・民の連携でやるべきことや実現したいことはありますか?

 公共交通は、人々がどこかにお出かけする時に利用する移動手段なので、公共交通を使ってお出かけできる取り組みはやっていきたいですね。
 RYDEさんと話をしている中でも、ランチ時間帯や夜のお酒を飲んだ後の移動手段など、他地域の事例などを伺い、飲食と伴うシーンなどで家族送迎ではなく公共交通を利用しておでかけできるまちにしていければと思います。

ーー街中にお出掛けするために店舗様などと提携して特典を付与したり、市内の飲み屋に行く前にRYDE PASSで事前に乗車券を購入していただいて「飲むならRYDE」などとおっしゃっていただいているエリアもあったりします。そういった目的地との連携は有用のようですね。
最後にRYDEに期待していることがあればお聞かせください。

 デジタルきっぷは、公共交通に加えて、飲食店等のクーポンなど、ポータルサイト上で決済・利用・おでかけの動機づけまででき、その結果を可視化し、次の公共交通の利用促進等に活かせることができるのが最大の利点だと感じます。
 今回は、近江鉄道全線乗車キャンペーン実施時にちょこっとバスのワンコイン企画で導入させていただきましたが、核になるのは近江鉄道なので、近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会での議論を踏まえつつ、路線バス、コミュニティバスも含め、ポータルサイト上で決済・利用・おでかけへのきっかけ作りができるようになることを期待しています。
 デジタル技術を上手く活用し、市民だけでなく、ビジネスや観光で訪れる人々など、誰もが公共交通を利用しやすいまちとなり、東近江市が目指す「うるおいとにぎわいのまち」に近づけるよう、努力し続けていきたいと思います。

東近江市役所前にて

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