
一橋大学ジョン・マンキューソ准教授によるハラスメント(6) マンキューソ氏に対するARIC側の2016年12月20日抗議について
2016年12月14日のARIC研究会襲撃事件の犯人である白人男性極右が、じつは一橋大学准教授のジョン・マンキューソ氏であったこと、それがどのように発覚したのかについては、下記前々回の記事で説明しました。
今回の記事ではARIC側が行った抗議について書いていこうと思います。
なぜ一橋大学マンキューソ准教授のハラスメントについて発信するのか
ところで、なぜ私たちはマンキューソ氏によるハラスメントについて、このように情報発信を続けるのでしょうか。それは現在進行形でハラスメントが3年近く続いているだけでも、私個人としてもARICとしてもマンキューソ氏を看過できないからだけでもありません。
それは一橋大学のハラスメント委員会そのものが機能不全に陥っている、もっと言えばハラスメントを告発した学生をむしろ窮地においやるという、構造的な問題をマンキューソ氏の問題は象徴していると思うからです。そしてこの問題は一橋大学だけでなく、日本各地の大学のハラスメント防止・人権擁護制度の機能不全という問題を象徴していると思うからです。
『戦う姫、働く少女』(堀之内出版)の著者であり、私たちにマンキューソ氏が犯人であることの手掛かりを教えてくれた河野真太郎先生(昨年度まで一橋大学、2019年度から専修大学)が次のような記事を書いておられます。
必読の記事です。一橋大学が新自由主義改革の中で、教職員が疲弊させられていく様子と構図がよくわかります。ここでは次の点に注目していただきたいです。
だが、私は一橋とそこで今も働いている人たちを断罪したいわけではない。問題は歴史的かつ構造的であり、一橋大学だけに当てはまるものではないのだ。(太字修飾は引用者)
私も同じことを言いたいです。マンキューソ准教授の問題について、私は一橋大学の教職員を断罪したいわけではありません。マンキューソ准教授のハラスメント問題を通じて、一橋大学の、ひいては日本各地のハラスメント防止・人権擁護システムの機能不全・欠陥の原因を明らかにし、問題を是正する方途を探りたいのです。
前置きが長くなりましたので、本論に入ります。
2016年12月20日事件――ARICによる一橋大学マンキューソ准教授への抗議と、氏によるハラスメント
前々回に既に書きましたが、2016年12月14日のマンキューソ准教授によるARIC研究会襲撃事件直後の当時は私も他のARICメンバーも心身ともにボロボロに疲弊していました。しかし、氏が一橋大学の教員であることがわかると、なおのことそのハラスメント行為は罪深く、私個人としてもARICとしても、絶対に看過できるものではありませんでした。
私はマンキューソ氏に対し、まずは2016年12月14日のARIC研究会を襲撃したのがマンキューソ氏本人であることを確認するため、また研究会を襲撃した真意を問うとともにこれに抗議するため、2016年12月20日の授業終了後に彼に直接会いに行くことにしたのです。
前々回詳しく書いた通り、犯人がマンキューソ准教授であることは、ジャパンタイムス記事中の顔写真と人物像でほぼ確定していました。しかし当の本人が研究会を妨害していない等とシラを切る可能性も十分にあったのです。時間が経てばたつほどその可能性は高まります。そのため修論提出一か月もない、師走であと2週間で2016年が終わろうとしていた当時、私はなるべく早くマンキューソ氏に会いに行かねばなりませんでした。
それで12月20日の夕方、私ともう一人のARICの学生スタッフ一名の2名で授業後にマンキューソ准教授に会いにいきました。
はたしてマンキューソ氏は悪びれもせず当日に妨害にやってきたのは自分だと認めました。その上で、こちらの抗議には誠実に耳を傾けず、むしろ、「F●ck」や「Bullshit」等という言葉を用いて私たちを威圧し、罵倒してきたのでした。まるで12月14日のARIC研究会襲撃事件と同じです。
しかしその日は、12月14日の研究会襲撃事件よりも悪いことが起きました。マンキューソ氏は自分を慕う学生3人が授業後に帰ろうとしていたのをわざわざ呼び止め、自分が座る教卓の周りに呼び寄せると、その学生たちに向かって必死に抗議する私たち2名の様子を逆手に取り、デマと誹謗中傷をはじめたのです。マンキューソ氏は学生に向けて、こんな風に抗議してくるARICは理性のない、暴力的な極左学生だ、等と誹謗中傷しだしました。これは教員の立場を利用して学生を煽動する極めて悪質なハラスメントでした。(驚くべきことに、学生3名は私たちの話も聞かずにあからさまにマンキューソ氏に加勢したのです。実はマンキューソ氏はそのハラスメント体質を嫌う多くの学生を生み出す一方で、上級レベルの英語の授業とスペイン研修を利用し、自分を熱烈に擁護する少数の学生を毎年輩出しているのです。なかには匿名アカウントをつくりツイッターとフェイスブックで、マンキューソ氏が流布する私たちに対するデマを拡散する学生・卒業生もいるのです。マンキューソ氏はSNSでは自分では直接デマを流さずに、学生・卒業生に匿名アカウントをつくらせてデマを流させ、それを自分で拡散するという手を多用しています。この驚愕すべき実態については、回を改めて書くことにします)。
(6月10日追記)この日、私たちが暴行したというマンキューソ准教授のデマについて。
((6月10日追記)※あらかじめ、マンキューソ准教授のデマを一つだけ否定しておきます。マンキューソ氏は私たちがこの時に暴行したというデマを流しています。たとえばこの時の様子を、一橋大学マンキューソ准教授は、次のように描写しています。
14日はあなたは踊っていませんね。踊っていたのは他の学生達です。あなたが踊ったのは20日です。教室のドアをいきなり開けて急襲した時に「ハロー!覚えてるう?」と大声で言い、手を振って踊りながら入って来ましたね。そして二人で私に肩パンを始めました。
— John Mancuso (@japan_john) July 1, 2018
…。
一読しただけで、このツイートがデマであることがわかるでしょう。いったいどこに踊りながら「肩パン」(つまり暴行)する者がいるというのでしょうか。どう考えてもありえない、説明じたいに矛盾があるからです。
念のため早いうちにハッキリと書いておきますが、2016年12月20日の抗議時に、私ももう一人の友人も、マンキューソ准教授との身体的接触は一切ありませんでした。私たちが話していたのは教卓の横で立ちながらであり、マンキューソ准教授は教卓の椅子に座りながらであって、常におよそ50センチ以上は距離が空いていました。(またほかにも後にも、マンキューソ准教授に私たちが暴行を加えた事実は一切ありません)
そもそもマンキューソ准教授は私たちに暴行されたと主張しながらも、その説明はひどくあやふやで、いつ、誰に(私なのか、もう一人なのか、2人ともなのか)、どのように暴行されたのかという具体性を欠いています。暴行など存在しなかったから当然です。そもそもマンキューソ准教授は、後述するように私たちが一橋大学ハラスメント委員会に襲撃事件について2016年2月に措置を申し立てたことに逆上してからはじめて私たちに暴行されたというデマを流し始めたのです。2017年6月に彼の襲撃事件についてはハラスメント認定がなされない決定が下されたことに安堵した後、私たちに報復的ハラスメントを加えるために2017年8月に一橋大学ハラスメント委員会に対して、私たちから暴行されたという虚偽の申立てを行ったのです。だからマンキューソ准教授のデマは実は非常にあやふやなもので、その「真実性」は本人の口からではなく、授業内外でマンキューソ准教授のデマを信じた学生の匿名でのSNS投稿を証拠に持ち出したり、後述するシンパの学生・卒業生にデマを吹き込んで虚偽証言をさせて、その虚偽証言を証拠にするという方法を用いています。追記終了)
さて、当時私たちの抗議に話を戻します。そのときのマンキューソ氏の説明はしかし、筋の通らない意味不明なものでした。
なぜ研究会を襲撃したのか?という私たちの問いに彼はひたすら、ARICはトランプ大統領の発言を文脈から切り離して間違って理解していると繰り返すばかりです(他方で、氏は12月14日のARIC研究会を襲撃した事実、英語で怒鳴り研究会をぶち壊した事実、名乗ろうともせず匿名で逃げ切ろうとした事実については、全く反論できなかったのです。マンキューソ氏としては、問う側に回ることで、答える責任を回避する戦法をとったのでしょうが、事実関係を争わないということは裁判では相手がいう事実関係が真であると認めたことになります)。
では根拠は?と何度も私たちは聞きました。マンキューソ氏は私たちがトランプ大統領の発言を捻じ曲げたという根拠をなんと一つも示すことができませません。彼はARICのウェブサイトにあるトランプ大統領の引用が誤りであると繰り返しましたが、私たちがどこなのかを教えてほしいと言っても、結局示せません。あたりまえです、そんなサイトは存在しないからです。それでも頑張るマンキューソ氏は、ノートPCを開き、ARICのサイトにアクセスし、何やら探すフリをしていましたが、わずか一分ほどで「ない」と言って、探すのもやめました。そこでマンキューソ氏の口から出たのは、
「お前らがサイトを消したのだ」
というものです。繰り返しになりますが、そんなサイト自体存在しないのですよ。事実無根のデマです。(そもそもマンキューソ氏がARICを襲撃してきた発端は彼の偏見に基づいた思い込みにありました。というのも、マンキューソ氏は12月14日のARICの研究会「世界で台頭するポピュリズム/排外主義と日本」の目的がトランプ批判にあると勘違いして妨害しに来たのです。実際には研究会の目的は、トランプ当選後の日本の排外主義を批判するところにあったのです。氏は現在まで未だにそのミスに気付いていません。)
私たちがサイトを消したという、即席のウソを用いてまで、自分を慕う3人の学生に私とARICのネガティブキャンペーンを行う様子に、私たちは唖然としました(その後、マンキューソ氏に加勢する学生の中から、私がこの時マンキューソ氏を暴行したなどというデマを流す人物が現れるなんて思いも寄りませんでしたが、これについては回を改めて書きます)。
マンキューソ氏によるハラスメントはこれだけにとどまりません。私がマンキューソ氏に対し、研究会のときに私にパスポートの保持や出自を執拗に訪ねてきた訳を問うたところ、Do you have a passport?などと、マンキューソ氏はなんとまたしてもパスポートの有無や出自を執拗に追及してきたのです。この常套句は移民排斥を訴える白人至上主義者が、トランプ大統領当選前後の米国でヒスパニック系はじめ外国ルーツを持つ人種/民族的マイノリティを差別するヘイトスピーチとして用いられていたものです。これも12月14日ARIC襲撃事件時と全く同じでした。
ただし今回は違ったのは、マンキューソ准教授はこのヘイトスピーチを正当化する屁理屈を持ち出してきたことです。いわく、トランプの批判をする前にお前は日本政府が在日コリアンを差別しているのだからそれを批判すべきだ、というのです。だから出自を問題にしたのだ、と。
空いた口が塞がりません。一般に、教員の立場から、学生である私の主張を、私の在日コリアンという出自に還元しようとすることじたいがハラスメントになることは言うまでもありません。ここで私が在日コリアンであることを持ち出すことは不必要であるばかりか差別です。結局、マンキューソ氏の発言は、トランプを批判する「資格」が私に無いのだと言っているわけです(しかし、この時のマンキューソ氏の屁理屈が、一橋大学のハラスメント委員会によって悪用され、マンキューソ氏のハラスメントを認定しない口実に使われたのです。これについても回を改めて書くでしょう。)
結局、マンキューソ氏は、自身が12月14日にARIC研究会会場に突如やってきて名乗りもせずひたすら英語で怒鳴りまくったという私たちの主張に一切反論できないことで襲撃した事実を事実上認めながらも、我々の抗議に対して真摯に向き合うどころか、二次的なハラスメントを、しかも他の学生の目の前で繰り返してきたのです。
ただ、私たちの謝罪すべきとの再三の要請に対し、何を思ったのか、彼は口頭で「I am sorry」とだけ口にし「謝罪」したのです。それは両手を上げておどけたジェスチャーがついた、あからさまに私たちを侮辱するようなやりかたでの「謝罪」でしたが。はからずもマンキューソ氏は12月14日ARIC研究会襲撃事件の責任を認めたことにはなりました。が、その誠意のかけらもない、というよりも、どこまでも人を愚弄する彼の態度に、私たちは一橋大学准教授としてのマンキューソ氏に対し完全に失望し、大きく傷ついたことはいうまでもありません。
この12月20日事件、12月14日ARIC研究会襲撃事件によって、私とARICが受けた被害は甚大なものでした(これについては下記要請書にかきましたので一部割愛します)。私自身に限って被害について書きますと、妨害事件によって多大な恐怖と憤りにより、その後の学業や研究・課外活動に甚大な被害が生じました。とりわけ氏の妨害事件は、私の修士論文の執筆を直接に妨げました。妨害事件による恐怖は事件後も消えることなく、幾度もフラッシュバックし、その度ごとに作業が中断を余儀なくされました。12 月20 日の抗議時にマンキューソ氏が非を認めるどころか逆に私たちを攻撃したことは輪をかけて私を苦しめ、それらは私を頭痛や食欲不振や不眠で悩ますことになりました。修士論文は期限内に提出したものの、マンキューソ氏による妨害事件がなければ、それ以前に集め整理を終えていた幾つかの資料を論証のため追加的に用い、より多くの推敲を重ね、論文の完成度を高めることができたことは否めません。
マンキューソ准教授の人格を示すツイートの一例――修士論文提出をハラスメントによって妨害されたという私の訴えに対するマンキューソ氏の返事
これだけ卑怯な教員のハラスメントに悩まされて、院生の修士論文が提出直前で妨害されるということは、ごく控えめに言っても、研究者生命を終わらせるに等しい重大な人権侵害です。しかしマンキューソ氏の認識は全く違うのです。下記の私のツイートに対するマンキューソ氏の返事をご覧ください。
一橋大学准教授ジョン・F・マンキューソ氏による活動妨害https://t.co/N6lPFJbA5A しかし、思い出すだけでも、吐き気がする。腹が立つ。
— 梁英聖@『日本型ヘイトスピーチとは何か』(影書房) (@rysyrys) June 29, 2018
2016年12月は修士論文提出1ヶ月前。
あんだけ脅迫されて、学校行くのがやっとですよ、どう考えても。
修士論文根性で仕上げて学位とりましたが、危なかった。
これに対する一橋大学ジョン・マンキューソ准教授の返事はこうです。
More lies! You tweeted that you successfully finished your thesis with no problems. BUT you deleted those tweets. Why? Because they conflict with your new narrative. You are a liar and I will disclose everything. You and your organization are finished! Be honesty to be saved!
— John Mancuso (@japan_john) June 29, 2018
また嘘かよ! お前は無事に論文が終わったとツイートしてただろ。でもお前はそのツイートを削除した。なぜだ? お前の新たな物語〔ナラティブ〕と矛盾するからだ。お前は嘘つきだ。俺は全部暴露してやるよ。お前と、お前の組織〔ARIC〕はこれで終わりだ!正直になれば救われるよ!
このツイートだけでもマンキューソ准教授は一橋大学を即刻クビにされてしかるべきではないでしょうか?(念のために言っておきますと、マンキューソ氏が言っているような、修士論文関連のツイートを私が削除した事実は一切ありません。何を根拠に私がマンキューソ准教授を誹謗するためにデマを流布し、しかも私のツイートを削除したと言っているのか、マンキューソ准教授は即刻説明すべきです)。
このツイートは、幾重にも興味深くはあります。まず、誰しも一見してわかるとおり、仮に2万%マンキューソ准教授の言い分が全て残らず正しかったとしてもこのツイートはアウトでして、ハラスメントです。なぜなら修士論文を妨害されたと訴えている一橋大学の学生に対して、同じ大学の教員が「ウソだ」と訴えた本人に全否定する形で攻撃を加えているからであり、しかもそれが直接の発言や手紙やメールでさえなくツイッターという何億人も閲覧できる全世界に公開する形で行われている以上言い逃れはまず無理です…。氏はそのことに気づいていない、全く自覚がありません。この一事でもって、教員としての資格はゼロどころかマイナスであることは明白です。
第二に、マンキューソ氏が私にツイートを消したと言い張っているのは、既に述べた2016年12月20日事件でのデマ(ありもしないARICのサイトを私たちが消した!)と全く同形です。自分の思い込みが間違っていたら、即座に「ARICがネットで証拠を消したに違いない」という独断というか、陰謀論に走るのは、白人至上主義者やネトウヨによくありがちな条件反射です。(レイシズムと極右の研究をしている研究者としては大変興味深いツイートではありますが、一学生からすれば本当に憤りを通り越して恐怖を覚えます。サイコホラーのようです)
さて、このような二次的な被害に遭ったことで、私たちは一橋大学のハラスメント委員会にマンキューソ氏によるハラスメントについて申し立てを行い、また一橋大学学長あてに同じような被害が生み出されることを防止するため対処するよう2017年の2月に大学側に要請しました。こちらに要請書を公開しています。
その後。一橋大学のハラスメント委員会の機能不全。マンキューソ氏によるハラスメント委員会を悪用した私へのハラスメント。
しかし、これについて2017年6月にハラスメント委員会から結論が出されたのですが、調査の結果、ハラスメントがあったことはこれ以上調査できないとされてしまいました。研究会にいた私を除いた6人の目撃証言があったものの、ハラスメント委員会は証人に話を聞くことさえなかったのですが、これについては回を改めて書くことにしましょう。驚くべきことに、マンキューソ氏がF●ckという語を用いて誹謗してきたことは認められたにもかかわらず、ハラスメントはないと結論づけられてしまったのです(ですから一橋大学は、なんと教員が学生をF●ckと罵倒しても全く問題にならない国立大学になっているのです。この一事をとっても欧米では大問題になるぐらいの案件ですが、グローバル化を推進する一橋大学はいつまで問題を放置し続けるのでしょうか)。
2017年6月に一橋大学がマンキューソ氏のハラスメントを処罰しなかったことは、マンキューソ氏を勢いづかせたのです。マンキューソ氏はARIC研究会襲撃事件の責任を一切問われないと知らされた2017年6月のわずか2か月後の8月18日に、なんと私とARICの学生メンバーの一人に暴行されたという虚偽に基づいた申立てを、一橋大学のハラスメント委員会に対して行ったのです。虚偽なので当然こちらはハラスメントなどないと2018年6月に判断が下されましたが、しかしこのマンキューソ氏による虚偽を使った一橋大学ハラスメント委員会を利用したアカデミック・ハラスメントは、私とARICに甚大なダメージを与えることになりました。その理由の一つは、このマンキューソ氏による私とARICへの攻撃は、学生にデマを流し、その学生に授業や一橋大学の寮やサークル、そしてSNSでデマを一斉に拡散させるという最も卑怯な手口を使ったからです。この問題についても回を改めて書くことにしましょう。
長くなりましたので、これで終わりにします。マンキューソ氏のハラスメントについてはしかし書くべきハラスメントはいくらでもあり、まだまだ氷山の一角なのです…。
※詳しく知りたい方は、マンキューソ准教授が私とARICを最初に攻撃してきた2016年12月の研究会妨害事件直後に作成したこちらの資料をお読みください。
(こちらで要請書のPDFを公開しています。)
差別・ハラスメントのない大学教育・研究環境の整備に関する要請書〔2017年2月初提出〕
一橋大学学長 蓼沼宏一 殿
一橋大学教育研究開発センター 御中
一橋大学大学院言語社会研究科 御中
2017 年 1 月 31 日作成
一橋大学大学院言語社会研究科修士課程 2 年在学
梁英聖
連絡先(略)
記
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
私は一橋大学(以下、本学)大学院言語社会研究科修士課程 2 年に在学しております、梁英聖(りゃん・よんそん)と申します。本学言語社会研究科の鵜飼哲教授(主ゼミの指導教員)と、イ・ヨンスク教授(副ゼミの指導教員)のご指導のもと、社会学研究の手法を用い、在日コリアンへのレイシズム(人種/民族差別)を研究しております。
さて、私は研究と課外活動を兼ねて、反レイシズム情報センター(ARIC)(注i)という学生・院生・若手研究者の NGO を主催し、その代表を務めております。去る 2016 年 12 月 14 日(木)の午後 6 時から 8 時まで、本学言語社会学研究科の 4 階共同研究室 2 にて、ARIC が主催する学生向けの公開研究会「ARIC 緊急企画「世界で台頭するポピュリズム/排外主義と日本」」を実施しました。本研究会は、ヘイトスピーチを繰り返すことで猛批判を浴びていたドナルド・トランプ氏が米国次期大統領に当選し、世界レベルで極右台頭と差別煽動効果が懸念されていたことを受けて急遽企画されたものです。当日は本学学生を含め計 11 名が参加していました(研究会終了時)。
この会の開会直前である午後 5 時 50 分頃に、本学大学教育研究開発センターの准教授であるジョン・F・マンキューソ氏が突如会場に乱入し、イベントの妨害行為に及ぶという事件が起こりました。教室に入るなり彼は怒鳴り声で「You are racist!」「You are ridiculous!」「Fuck!」等といった聞くに堪えない暴言と差別発言を連呼しています。彼は私たちの再三の退去要請にも従おうとせず、逆に英語で丁寧に退去を要請していた A 君に対し「Don’t touch me!」等と顔を真っ赤にして怒鳴り、A 君を酷く傷つけ委縮させました。私たちが何とか彼を退室させたのちも、彼は廊下で数分間に渡り私と A 君に暴言と差別発言を繰り返しました。彼は在日コリアンである私に対してその時、「Do you have a passport? Do you have an ID? Do you have a 外人 card?」等と、大声で、執拗に問いただし、公の場で私の出自を問題にし続けました。
本妨害事件に関するマンキューソ氏の問題は指摘すれば数えきれませんが、決定的な問題は、彼が自ら「I work for Donald Trump.」とトランプ氏を支持する政治活動家であることを公言した上で、「We travel around the world, and we contact people who are speaking negatively against Donald Trump.」と叫び、私たちの研究会に明確に反対しそれを政治的目的で妨害しにやってきたことを明示した点です。上の言に明らかなとおり、彼は自らの妨害行為が組織的ネットワークで、しかも世界中のトランプ支持者によるネットワークで連携をはかった政治的妨害であることを私たち学生に強く印象付けたのです。私はもちろん、その場に居合わせた学生全員が非常に強い恐怖と悲しみに襲われました。さらに深刻なことに、妨害に及んだマンキューソ氏はその日、主催者たる私たちが何度問い質しても、名も名乗らず、連絡先も教えることなく、身分も一切明かさなかったのです。
私たちはただ、正体不明の、体格の大きな白人男性が、日本語を一切使わずに、英語だけでまくし立てて ARIC の活動を妨害しに来たという事実以外の、何の情報も持たなかったため、彼の妨害行為はそれだけ一層恐怖を掻き立てるものとなりました。私たちは彼が自ら公言した通り、世界中のトランプ主義者の間で何らかの連絡を取り、世界中で(彼らの言う)「反トランプネガティブキャンペーン」を攻撃する政治活動にやってきたものと考えました。妨害者が日本語を解さず英語でしか話さなかったこともあり、本当に米国かどこか外国から送り込まれたのではないかとさえ考えたのです。妨害に来た理由も不明でした。唯一理由らしいこととして彼は、ARIC のサイトでトランプの発言を間違って引用していると言ったのですが、私たちの求めに対しても該当する個所を示すこともできず、その個所を後日でも教えてほしいとの私たちの要請もなぜか拒絶し、連絡先さえ教えなかったのです。
妨害した犯人がマンキューソ氏、つまり本学教員だと判明したのは、事件後一週間が経とうとする昨年 12 月 20 日(火)に、私と A 君が直接マンキューソ氏に会いにゆき、妨害事件の犯人が彼である事実を確認したときでした。妨害事件を知った本学教員が私たちにマンキューソ氏が登場するジャパンタイムズの記事(注ii)を紹介してくれました。そこに掲載されていた彼の顔写真と妨害事件の犯人が同じであるようにみえ、私たちは愕然とし更なる憤りと悲しみに襲われました。そこで直接事実を確認および(確認を終えた上での)抗議をするために、12 月 20 日(火)にマンキューソ氏を授業終了後に訪ねたのです。彼の姿から妨害事件の犯人と同一人物であることを確認した上で、彼が妨害行為に至った経緯と、当の妨害時に彼が放った主張の根拠とを尋ねました。
マンキューソ氏は悪びれもせず当日に妨害にやってきたのは自分だと認めました。その上で、こちらの抗議には誠実に耳を傾けず、むしろ、「Fuck」や「Bullshit」、「Shut up」などの「Swear Word」等という言葉を用いて私たちを威圧し、罵倒してきたのでした。なぜ妨害したのかという私たちの問いに彼は、相変わらず ARIC のウェブサイト上に記載されたというトランプ氏の引用の「誤り」云々を持ち出しました。私たちがどこなのかを教えてほしいと言うと、このときは PC で ARIC のサイトにアクセスし、1 分ほど何やら探すふりをしていましたが、何も示すことができませんでした。むしろ「私たちがサイトを消したのだ」なる事実無根のデマを持ち出し、その場に居合わせた学生数名の前で、私たちを誹謗中傷しさえしたのです。学生数名の前で、私たちを自制心のない極左学生だ等と誹謗中傷したことも、私たちに深い傷を与えました。私たちの妨害行為について謝罪すべきとの要請に、彼は口頭で「I am sorry」とだけ口にし「謝罪」してみせましたが、それは大変軽薄なものであり、その後手を上げておどけたジェスチャーさえ見せての「謝罪」でした。はからずも彼は妨害行為の責任を認めたことにはなりましたが、その誠意のかけらもない、人を愚弄する彼の態度に、私たちはかえって失望し、傷ついたことはいうまでもありません。以上が事件の顛末となります。
私と私たちが受けた被害は甚大なものでした。研究会の正常な進行の妨害という観点からだけでも、以下の被害を挙げることができます。第一に開始直前にその場で待機していた参加者全員にマンキューソ氏の暴言と差別発言を目の当たりにさせることになり、反レイシズム団体としての主催者 ARIC の信用を著しく損ないました。第二に、開始直前に妨害され研究会のために学生が予習・準備を行っていたことが妨害されました。第三に、妨害のため研究会の開始時刻が 15 分以上遅れました。第四に、マンキューソ氏を会場・教室から追い出した後も、さらなる妨害行為が行われることを防ぐために、急遽主催者から追加 2 名を警備人員として割いたため、その 2 名が予定通り研究会に参加できず貴重な学習・研究機会が奪われました。
そして言うまでもありませんが、私とその場にいた学生・参加者全員が、妨害事件によって受けた著しい恐怖であり苦痛を受けています。別添資料にある通り、被害を受けた学生のなかには恐怖のあまり、学習・研究や課外活動の継続じたい躊躇する学生さえいます。その被害は当日のみならずその後も持続しています。私自身、妨害事件によって多大な恐怖と憤りにより、その後の学業や研究・課外活動に甚大な被害が生じました。とりわけ氏の妨害事件は、私の修士論文の執筆を直接に妨げました。妨害事件による恐怖は事件後も消えることなく、幾度もフラッシュバックし、その度ごとに作業が中断を余儀なくされました。12 月20 日の抗議時にマンキューソ氏が非を認めるどころか逆に私と A 君を攻撃したことは輪をかけて私を苦しめ、それらは私を頭痛や食欲不振や不眠で悩ますことになりました。修士論文は期限内に提出したものの、マンキューソ氏による妨害事件がなければ、それ以前に集め整理を終えていた幾つかの資料を論証のため追加的に用い、より多くの推敲を重ね、論文の完成度を高めることができたことは否めません。妨害事件は私個人の研究業績にも取り返しのつかないマイナスを与えました。加害者が本学教員であったことが本学そのものへの信頼をも著しく傷つけていることも書き添えておきます。
マンキューソ氏による妨害事件による被害について述べればきりがありませんが、以上の被害から本事件が私はじめ本学学生や他大学の学生の人権を侵害した、深刻極まりない差別・ハラスメント行為であることは明白です。しかも加害者がトランプ主義者を公言し、そのために研究会と ARIC の活動を妨害しに来たことを明言している以上、許しがたい政治的暴力であることも明らかです。本妨害行為の最大の問題は加害者が本学教員である点です。控えめにいって本学教員が本学学生の課外活動を差別と暴言と暴力を用いて妨害した時点で、教員としてはその資質を欠いているというほかありません。
本妨害事件によって、また事件の未解決によって、私は本学内で差別・ハラスメントを受ける心配なく、安心してマイノリティが学習・研究に携わることのできるという、最低限の学問の自由を保障する環境を享受することができなくなりました。
本妨害事件を許すことは、私個人の侵害された人権を回復することができなくなるだけではありません。本学は、混迷をふかめる世界のなかで、人権と多様性を尊重し、グローバルな課題を解決するための能力を身に着けた「グローバル人材」の育成を掲げているはずです。そのような意義ある本学にとって、本事件の放置は「グローバル人材」育成や研究教育に必要な環境を損なうものであるばかりか、本学のアイデンティティを否定するものであると考えます。
つきましては、私と私たちの人権救済と差別・ハラスメントの無い教育・研究環境の速やかな整備を求めるため、以下の通り要請いたします。
詳細な被害については添付資料をご参照ください。
【要請事項】
1.可及的速やかに本妨害事件に関する被害実態を調査し、差別・ハラスメント行為はじめ人権侵害行為をはたらいたジョン・F・マンキューソ准教授に対して厳正な処分を下すこと。
2.本妨害事件によって著しく損なわれた、差別・ハラスメント行為の無い大学教育研究環境を可及的速やかに整備するために、本大学内における明示的な反レイシズム規定を制定すること。
なお本要請書について詳細に説明を行うための面談を希望します。
誠に勝手ながら本要請書に関する回答期限を 2 月 10 日(金)までとさせていただきたく存じます。私梁英聖までご連絡くださるようお願いいたします。
以上
追記
またマンキューソ氏は、フェイスブックの個人ページのプロフィール画像に、旧日本軍の軍旗でありアジア侵略の象徴であった旭日旗を掲げ、また英会話テキストにおいて複数個所にわたってのセクシズムに満ちた記述をしております。これらは本件に直接関係あるものではありませんが、私は、ファシズムを煽動する効果を持つ旭日旗掲揚とセクシズム的記述を英会話テキスト(注iii)に載せて憚らない人物が、本学で教員として勤務し、学生の教育を行っていることに恐怖を感じずにいません。本学教員としてもはや適格性を欠くだけでなく、私にとってはそのような教員が勤務しているということじたいが非常に苦痛であり、直接の脅威です。ゆえに別添資料にはそれら証拠も添付しております。
i )ARIC は、頻発するヘイトスピーチはじめ日本のレイシズムに対抗すために、①調査②相談③教育を通じて、EU や米国で成立している反レイシズム規範を形成を目指す、若手研究者・学生・院生による NGO です。詳しくは ARIC のサイト http://antiracisminfo.com/ をご参照ください。
ii )当該記事は 2016 年 11 月 6 日付の SIMON SCOTT による “On the trail of team Trump in Tokyo: Reporter stalks that elusive breed of American in Japan: the Trump supporter” (http://www.japantimes.co.jp/community/2016/11/06/voices/trail-teamtrump-tokyo/#.WFFrs7KLTtR)をご参照ください。
iii )ジョン・F・マンキューソ(2009)『恋脳を鍛える英会話 You choose!』エンターブレイン。一例を挙げれば、「正直に言いましょう。男性は女性を見つめるものです。これは遺伝学的に正しいことなのです!」等と明記されています(21)。言うまでもなくこの記述はジェンダーを本質的なものとみる、しかも「遺伝学」なる「科学」を用いてこれを正当化するセクシズムです。上の一文の続きは「もし、見つめられて不愉快だったり、やめてくれと言うつもりなら、男性の立場から言わせてもらうと、それは大きな間違いです。女性は膨大な能力を賦与されていますが、多くの女性はそれに気づいておらず、彼女らはいとも簡単にその能力を無駄にしているのです。女性らしさを武器にするべきなのです」(21)。これは、女性が男性の視線を不快に思い、これを拒否することの否定になっています。のみならず「女性らしさ」を「武器にするべき」だというのです。フェミニズムの全否定といって差し支えないのではないでしょうか。