暗黙のルール君

 世の中にはたくさんのルールがあるが、その中でも厄介なのが“暗黙のルール”というやつだ。例えばスーパーのチラシでよく見る

”卵一パック８８円　一家族様一パックかぎり！！“

と大々的に載ることがよくある。１円でも安いものをと財布の中身を日々チェックする奥様たちは、チラシを見て、家事の合間にスーパーへ。そこに暗黙のルール君が颯爽と現れる。一家族様一パックと大きく書かれた紙を見て手に取るが、中にはレジで会計後、再度たまごを手にする輩がたまに現れる。彼らは

”私、初めて卵いただきますけど何か？“

とすました顔をし、女優顔負けの演技で行為を行う。再度卵を取ったからと言って罪に問われることはないが、そんな猿芝居をしてでも欲しいものなのか？私は卵ごときでそんなことはしない。仮にもし卵ではなく、黒毛和牛が同じように８８円で売られたら、私も田中圭ばりにすっとぼけた顔をして手に取るだろう。まあ、そんな演技力あったら、とっくに人気俳優になり、シャンパン片手に優雅なひと時を過ごしているだろうが。　　　　　　　　　　　　　　
　無事にたまごを手に取ると、次にすることと言えば他にめぼしいものはないかと探すこと。そのさまはまるで獲物を狙うハイエナ。田舎の何の変哲もないスーパーの中が一変、猛獣であふれるサバンナへと姿を変えていく。狩りを終えた猛獣たちは、人間の姿に戻り何事もなかったかのようにすました顔をしてレジへと向かう。そんな人たちが大勢いるわけだから、レジは長い行列が出来る。私も一狩りしたところで並ぶが、そこにもまた、暗黙のルール君が顔を出す。

　コロナ過で、ソーシャルディスタンスを取らなければいけない手前、間隔を開けて並ぶが、何を勘違いしたのかそれを空いていると思い、これまた卵と同じように平然を装い割り込んでくるこざかいしい輩。私も何度もやられた経験がある。「横入りです！」と大声を上げたかったが、言えるほどの根性もなく、いつも泣き寝入り。声を上げる人を見かけると、目を光らせ、すごい！！と感心している。

　スーパーだけではなく、どこでも現れる暗黙のルール君、今日もまた目を光らせ私たちを監視しているのだろう。