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青春の一ページ


  空になったスナック菓子の袋や漫画本、乱れたタオルケット。そして窓から初夏の太陽の熱気が部屋に入り込んでくる。

「あち―、この暑さどうにかしてくれ!」

短髪の男子が床に教科書を置き、足を延ばしている。

「うるさい大樹!声がでかい。余計に暑くなる」

黒髪の女子は下敷きで仰ぎ、だるそうにしている。

「大樹もリエもうるさい。人がせっかく勉強を教えてるんだから、まじめにやれ」

眼鏡男子は二人に対し大声をあげる。

「分かってるって。けど、こんな暑いとやる気が・・・」
「そうなんだよねー、渉の家エアコンないんだもん」
「悪かったな!にしても暑いな、今日は特に」
そして三人は勉強を再開する。

数十分後、さらに部屋は熱気で温度が高くなっている。

「あー!もうだめだ。オレっちの頭じゃもう無理」
「私も限界、それに暑すぎー!」

大樹とリエは暑さと疲れでイライラしている。


「しょうがないな、ちょっと早いけど休憩にするか」

渉はワイシャツのボタンを一つ外しながら、教科書を閉じる。

「じゃあ、いつものとこ行きますか!」
「行こう、行こう」

リエと大樹は道具をささっと片付け始める。

「本当、こういう時はやる気出るよな、お前ら。このやる気が勉強に生かせればいいんだが・・・」

渉は二人を見て、深いため息をつく。

「ほら!何してるの?早く行くよ」
「ああ」
 

 氷屋と書かれた暖簾、隣には最近できたばかりの二階のテラスがある。三人は夏になると、よくここに来ては、かき氷を食べている。

 〈二階テラス席にて〉

「おまちどおさま。イチゴをご注文の方」
「はい、はい。オレ、オレっちです」
太陽のように真っ赤なイチゴ、大樹は目を輝かせている。


「次ブルーハワイをご注文の方」
「はーい、私です」
潮かぜが注ぐ海のような青いブルーハワイ、リエはスプーンを持ち、待っている。
 

「最後、抹茶どうぞ」
「ありがとうございます」
青々とした森林のような緑の抹茶、渉はワイシャツのボタンを一つ開ける。


「では皆さん、『いただきまーす』」

リエの掛け声とともに三人は一斉に食べ始める。

『冷たーい、てか痛っ!!』

大樹とリエは頭を抱えている。

「あんたいつもイチゴだよね?お可愛いですこと。ぷぷぷ」

リエは笑いをこらえられずにいる。

「うっせー!別にいいじゃんか。イチゴはな最強なんだぞ!これに勝るものなんてないね」

そう言いながら、大樹はかき氷をかき込む。

「おい、よせって!」

渉が声をかけた瞬間、

「痛てー」

頭を抑え込む大樹。

「ほんとバカだよねー。やっぱりかき氷いいね。特にこんなに日にはもってこいだね。痛っ」

そういうリエもこのありさま。

「お前らな」

渉は呆れながらも、二人を見てにやけている。

 

 食べている最中、渉が突然語り始めた。

「けど、こうやって三人で一緒にいられるのも、あと少しなんだよな。小さい頃から三人一緒にいるのが当たり前だって思ってたけど、俺らもう高三で春からみんな違う大学に行く。そう思うと、なんかちょっと寂しいな」

その言葉を聞き大樹は黙々と食べ、リエは溶けたかき氷をスプーンで突いている。   
                                     
「けどその前に」
『何?』
                              大樹とリエが声を揃える。

「まずは大学に受かることだな。それにそもそも卒業出来なきゃ話になんないからな。まあ、お前らがずっと一緒にいたいっていうなら留年するって手もあるけどな」

渉はいたずらに微笑んでいる。
 

『うっ』
                                大樹と理江は黙っている。

「ってことで、ほら勉強に戻るぞ」

そう言うと渉は階段を下りていく。

「よっしゃー、頑張るか!」
「私もやるぞー!」

二人も後に続く。





「てか、暑―い!」


理江はだるそうに言う。

「さっきかき氷食べたばかりだろ?」

と渉。

「だってー。あっ!そうだ、良い事思いついた。今からプ―ルに行かない?」

リエは急に元気になる。

「お、いいね!涼しそう」

大樹も乗り気だ。

「お前らな」

渉は呆れている。

「ほら、一緒にいられるのも今だけなんでしょ?」

そう言うと理江は渉の手首をつかみ引き寄せた。

「ほら行くぞ」
 
大樹もにやけながら、こちらを見ている。

「おい、ったく」

渉は二人を見つめている。



 三人は太陽が照り付けるアスファルトの上を、にやけながら走っていった。

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