勘違い
またあの子たち来てる。
「今日も来たんだね、おはよう元気してた?」
ウミネコ二匹は私の顔をみて首をかしげている。毎日のように来るこの子達。そばによっても逃げない。人間になれているのかな?
「そろそろ仕事に戻らないと」
「じゃあまたね」
私はここの神社の巫女を数年前からしている。小さい頃からおばあちゃんに連れられてよく神社に来ていた。そこで働いている巫女さんに憧れを持ち、ようやく巫女になることが出来た。巫女の仕事は大変だけど、人と触れ合うことが出来るし、笑顔で帰られる人を見ると私まで笑顔になる。
そんなある日一人の観光客がやってきた。彼は、ブルーの瞳、短髪に無精ひげ、体格が良くリュックを背負っていた。
「Excuse me?」
「はいっ!」
どうしよう、私英語分かんない。今日に限って出来る人休みだし。
「あのー」
「ソーリー、ここにお守りがあるって聞いたんだけど」
「えっ、あっ日本語、日本語話せるんですね、よかったー。お守りですね、どんなお守りを探していますか?」
そう言うと彼は私に古びたお守りをみせた。それは安産祈願と書かれたここのお守りだった。
「これ、前にジュリアンと来た時に、ここのミコサンに教えてもらった。彼女が今二人目を妊娠しています。そして何かできないかって。そしたらここのことを思い出して。彼女も日本大好きだから、いいプレゼントになると思ってね」
彼は優しいまなざしでお守りを見つめていた。
その彼をみて私は胸がどきどきした。
「こちらになります。」
「サンクス」
といい彼は去っていく。
「あの、もう帰るんですか?」
「そうだね、帰って、違うところを見て回ろうかと思って」
「じゃなくて、今日国に帰るんですか?」
「来たばかりだから、二週間くらいはここにいるよ」
「じゃあ、私とどこか行きませんか?」
思わず言ってしまった。相手は奥さんと子供がいるのに。
「す、すみません、変なこと言っちゃった。気にしないでください。私、どうしたんだろ、奥さんや子供がいる人にこんなこと」
恥ずかしくて顔が赤くなる。
「What?何を言ってる?僕はシングルだよ。」
「えっだってジュリアンさんと来たって、しかも今二人目妊娠してるって」
「ああ、違う違う、ワイフではない友達だよ。ちゃんと旦那さんいるよ」
その言葉を聞いて、ますます顔が赤くなった。
「そうだったんだ、恥ずかしい」
「だから、ぼくはシングル。だから僕とデートしよう。僕の名前はガブリエル。君の名前は?」
「ナナ」
「ナナ。素敵な名前だね。よろしくねナナ」
そう言いながら優しい眼差しで私を見つめていた。