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推しが入籍した

これは、とても複雑……!推しが入籍するとこんな気持ちになるんですね!と言いたいところだけど、これは羽生さん特有かもしれない。

※11月17日の羽生さんのご報告を受けて、最後の項目を追記しました。


8月4日午後11時11分、その時わたしは

それは突然やってきた。残業して疲れ切ってTLを遡ってたら突如表示されたポップアップ。まず「いつも応援してくださってる皆様へ」が見えて「あ、ついに」と思ったのと同時に、周囲に音が聞こえるくらい息を呑んだ。このタイトルの報告は引退・活休・結婚のいずれかで、最近の羽生さんの活躍からして引退活休はあり得ない。ならば選択肢は一つしかない。そう脳が0.1秒で判断して身体の反応が出たんだと思う。びっくりした、本当に驚いた。羽生さん、結婚、するんだ!?!?

よかったね、頑張ったね、おめでとう

25〜6歳で結婚したいと話したことはあったけど、正直に言ってこの国民的大スターぶりと時として暴徒のようなファンダムを見てると、結婚は当分できないんじゃないかと思っていた。実際、プライベートはかなり犠牲になっていただろうし。週刊誌にもストーカーにも追われるし、悪質なアンチはいまだにいるし……    全日本が終わると「羽生家の結弦に戻れる」と溢したり、バンケットで「久しぶりに男子大学生してる」と笑った後ろ姿とか、試合でもショーでも会場とホテル以外どこにも行かない生活を何年もしてたりとか、、、他にもいろいろ。スケートをしてなかったら手に入った「普通」と引き換えに手に入れた物の大きさと重さ。これらを私があれこれ語るよりも、本人の方がずっと向き合ってきたことだから言わないけど、こうして「普通」を手に入れたことを、心から、良かったね、頑張ったね、おめでとうと言いたい。最近の羽生さんからはプライベートを全て犠牲にしてでも「羽生結弦」を全うしようという雰囲気があったので、大きな選択ができたことにすごく安心した。

ご報告の文章が「入籍」以外はスケートに精進しますという内容なのも、とても彼らしいと思う。お相手にもファンにも気をくばったご報告で、ああ本当に、どこまでも人にやさしく自分に厳しい人だなと思う。

そしてこの入籍ご報告は、一つのモデルケースを示すことができたんじゃないかと思う。報告の文章の誠実さにしても、大スターでも結婚していいということにしても。人には人のタイミングとやり方があるけど、先陣を切るこの感じも羽生さんらしいなと思いました。

どろりとした気持ちを抱えながら

私は結婚願望も恋愛感情も全くなく、おまけに現在の日本の婚姻制度や家父長制が基となった家族至上主義に中指を立てている人生だ。結婚報道を聞くといつも「結局は異性愛規範に違和感を持たずに収まることができる“そっち側”の人なんだ」というがっかり感と、さみしいような気持ちになる。入籍ご報告のその日はこの感情がなかったが、一日経ってどろりと湧いてきた。違う世界の人になってしまったな…みたいな寂しさと、自分と同じだと勝手に思ってた愚かさに気づいて恥ずかしくなって、どうしようもない気持ちになる。それでもまだ、昨日に思ってたことと同じことを思っている。時間が経って考え方が変化したのではなくて、この二つは別のものなんだと思う。そして、どちらも持っていて、たぶんいいんだと思う。

そういえば、私は羽生さんの鋭さが好きだったんだけど、それは勝敗がつく競技会の緊張感でしか観られない物だった。プロに転向してからその鋭さが弱くなって、滑りも纏う雰囲気もやわらかくなったなと思ったのを覚えている。「試合の緊張感がある自分が好きだったファンもいるから」と、プロになってからもアイスショーで試合を再現してくれたり、プログラムの難易度をあげたりしてくれたのは、とても嬉しかった。それが自発的だったのも。その挑戦はこれからも続くと思う、そういう人だから。大きなショーには、これからも私は足を運ぶだろう。でも、プロローグやGIFTで観たやわらかさを、私が物足りなく感じてしまったのは、そういうことなんだと思う。羽生さんの努力不足じゃない。あれはたぶん、私が知らない世界のものだ。寂しいけど、こうして自分がしっかりわかっているのは、我ながら頼もしく感じる。

羽生さんには、世界一幸せになってほしいと思ってきた。いまも思っている。

推しの結婚って不思議だ。よかったねという気持ちと安心感と、寂しさとどうしようもない気持ちを行ったり来たりする。まだしばらく数日は行ったり来たりすると思う 笑。でもたぶん、よかったねという気持ちと安心感は、この先も変わらず持っていて、寂しさとどうしようもなさは、自分がさらに学んだり環境が変わったりすることで変わっていく。そんな気がする。

最後に、お相手のこととかプライベートの詮索とかマジでやめてほしい!私も笑っちゃうくらい「1」にこだわる羽生さんが、11時11分ではなく23時11分のご報告に譲ったのって、日中のワイドショーの特集や記者が動きやすい時間帯を避けたかったからなんじゃないかとちょっと思ってる。ひとの私生活なんて本気でどうでもいいんですよ。幸せならそれでいい。そこに土足で踏み入られるのは幸せじゃない。だからやめてほしい。

写真は、今日お祝いで食べたケーキと、お気に入りのアクキーです。左から、2012年の世界選手権で初の銅メダルだった時の羽生さん、2009年のショートプログラムのジュニア時代の羽生さん、ノービス時代の羽生さん。どれも好きな写真と衣装だったから、アクキーになった時は嬉しかったな〜。こんなに子供だった頃から、ずっと頑張ってきた。やっぱり、幸せになってほしい。幸せであってほしい。


【11/18 追記】

起こってはならないことが起こってしまった。本当に悲しい、皆に当たり前にあるべき幸福を彼らが享受できなかったことが。本当に憎く悔しい、あまりにも未熟な社会が。苦しい道も二人で歩むなら心強いだろうと思っていた。それが一人になってしまった時の孤独はいくらばかりか。皆が当たり前に享受している権利が自分にはない。その絶望は想像を絶する。もっと起こってはならないことが起きてしまうのではないかという不安にかられている。

羽生さんと羽生さんの愛する人たちが、どうか安全に穏やかに生活できますように。そう願いながらも祈るより確実なことがしたい。無神経で無関心な好奇心の根本の原因は、社会の未熟さと政治の至らなさだと思う。有名人だろうと買い物をし、仕事をし、人と交流し、元気な時はカフェで読書したり、怪我や病気で病院に行くし、疲れたら犬や猫の画像に癒されて、夜は布団で眠る一人の人間であり、他者がそれらを奪うことはできないという人権意識が圧倒的に足りていない。

著名人でも人権を奪われない社会を作る。だからどうかその日まで、羽生さんも羽生さんの愛する人たちが、どうか生き延びてほしい。