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"転売ヤー"の現状と課題、NFTの可能性について

はじめに

自分の中で書きたいことが固まったときに書くことにしているnote。3年ぶりぐらいに更新する。正直この3年ほどのインプットは大学生時代に比べて 減っていた。仕事のスキルアップだとか、時間の使い方だとか、東京(特に代々木上原)に馴染むだとか、やることが多すぎたのだと思う。だからこそアウトプットするものが無かったし、書いても仕方のないことしか思いついていなかった。

それでも、ここ数年続けていたのは、転売市場(特にスニーカー市場)にしっかりと浸かって、その中身を逐一観察するということだった。お金という欲望が集合したようなコミュニティの中で、この市場はどう破壊されるのが妥当かについてぼんやりと着実に考えていた。(それはあまりに正常で、あまりに資本主義的な秩序の上に成り立ち過ぎているからである。)

その軸とはパラレルに、NFTの話題がタイムラインにあふれるようになり、ここ最近では楽天・アリババなど超大手有名企業がその市場に参入するニュースまである。今まで投資の対象としてしか観ていなかった仮想通貨・仮想資産の世界が一転、所有とか消費とか、そういう話に潜り込んできた感じがあってワクワクした。

このnoteでは、その2つの実はあまりに親しい関係性について可能性を見出したい僕自身の脳内アウトプットをする。正しいかどうかは分からないが、確実にその可能性はここにある。

転売ヤーの現状について

転売ヤーという単語自体、認知が進み今ではニュースでも普通に使われる用語である。価値の高い「もの」(プレミアム・ラグジュアリーなもの)を様々な技を駆使してなんとか購入する。そしてそれが欲しい人に、定価よりも高く売る。そこで"抜けた"お金こそが利益になる、いたって単純な商売である。

転売ヤーの物品購入ルートには2種類ある(正確にはもっとある)。FCFS(First come first serve)と呼ばれる先着式と、抽選式である。この2つをちょっとだけ具体的に解説する。

FCFSの話からコロナの影響もあり、オンライン化が進んだ世界でもある現在、店頭に朝早くから並んで買うみたいなことは余りなく、基本的にはオンラインでいかに早く「購入ボタン」を押せるかの対決である。単純に早さを競う部門だからこそ、その方法はインフレしている。発売時間になる前に、アカウント発行をしておく、クレジットカードの番号をコピーしておく、みたいなことは正直もうなんの役にも立たない。基本的にはbotと呼ばれる、自動購入を支援してくれるソフトウェアを使って戦うのである。購入が早いbotや、対応しているショップの数が多いbotなど様々な優位性を持つbotが乱立し、市場で一番高いものだと7000$ほどする(botbroker というbotを販売するサイトでその現状が見られる)。良いbotを獲得するためのbotさえ存在している。

そのbotに、1000タスクほどを準備、それぞれに串を刺してrunすることで、やっとこさ5足スニーカーが買える、みたいな世界である。だからこそ、FCFSを採用しているサイトはサイトの負荷を減らすため、ランダムタイムでの販売やクイズを付けるといった対策をしているショップが多い。が、そんなものは24/7でbotを回して、クイズは誰かが答えをtweetするからそれをコピペ、で解決可能である。

それに対して、絶対的な対策として考えられがちなのが抽選方式である。購入者はショップ側が選べるため、その販売先の正当性(何が"正当"なのかは後で述べる)は高くなる。しかし、ここにもbotが存在する。アカウント量産bot、住所jig(住所の番地などを入れ替えたり、文字を全角半角で混ぜたりなど)bot、大量応募botなど、その対策は万全と言って良い状態になっている。ここでも、Twitterのフォロワーのみ応募可能とか、アプリダウンロード者のみ応募可能とか、対策がされているが、Twitterで特定のショップをフォローしているアカウントは1000個200$ぐらいで買えるし、アプリダウンロードはスマートフォンのシミュレーションで対策が可能だ。

これを読んでいる人でSNKRSに毎週チャレンジしている人がいると思う。買えることが伝説となっているあのアプリケーションは、botの格好の獲物として捉えられている。The Shit Bot(うんちのキャラクターが更に煽ってくる)・Dragon AIOといった代表格のbotに1人で1000〜100,000アカウントをインストールし、一気に応募しているという現状だ。さらにNike側は住所を全くチェックしないため、全く同一住所でない限りは別人とみなしている(「東京都渋谷区AA 1−2−3」と「東京都渋谷区AA 1−2−3あ」は別人とみなされるが同じ家に届く)。だからこそ住所をアカウント分用意するなんて、エクセルがあれば10秒でできるのである。これではスマホ1つで戦っている一般人が勝てる訳がない。

もっと書きたいことは多いが、上記だけで十分にショップの万全な対策は不可能な状態であることは伝わったはずだ。もし、新たな手を打っても、転売ヤーコミュニティ内ですぐに対策が生まれ皆がそのコピーをする。結局はいたちごっこであり、根本的な対策は現状生まれていないと考えて良いだろう。

こんな環境の中成り立っている(?)プレミアム(ラグジュアリー)な物品のマーケットはどこに問題を抱えているのか。それを打開する策はあるのかについて考えたい。

転売の正当性と課題

最初に述べておくと、私自身この転売市場はすべてが間違っているとは到底思わない。このビジネスを大きくしたのが伊藤忠であり、江戸から続く商売としての正しいあり方だからである。発売される商品の需要が高いからこそ、その商品が手に入りづらくなり、結果として購買方法のアップデートが加熱し、一般人の参入が難しいほどに達する。資本主義の鑑のような結果だし、事実僕たちはこの仕組みにすがって生きているのが現状だ。

では、転売の何が問題なのか。それは僕が思うに、「文化がスケールすることを阻害する」ところにあると思う。本来的に、「需要が高い」という場合は、あくまで「その商品が(その商品の持つ価値や機能や審美性を享受するために)欲しい人」の間での需要が高いという意味であった。しかし、今の転売ヤー市場においては、その商品の需要が高いように見えていて、それは虚像である可能性を秘めていることが問題である。つまりは、「その商品が {その商品が(その商品の持つ価値や機能や審美性を享受するために)欲しい人に対して高値で売れることが分かっているから} 欲しい人」の間で需要が高まっているのである。

このことが意味するのは、需要の高まりによって生まれるはずの「流行」やその先にある「文化」を作る人に対して、その商品が流通しづらくなるということだ。その商品を作った人は、あくまでそれが欲しい人に届いて、使っった感想や飾った写真といったUGCを期待するものだし、それこそが文化を作る。転売をする人はその土壌を枯らしているのである。(だからこそ伊藤忠がコンバースの輸入に制限をかけているという事実はもっと追及されるべきなのだ!)

転売の問題点が問題として成り立つ理由

もっとも、これらは法律の範囲内で行われている行為であるため、何らかの罰則を下すことはできない(もちろんtaxを払っているという前提のもと)。この事実は、転売が可能な環境を援護する重要なパーツの1つであろう。

そしてもう1つは、マーケットが開かれすぎている点にある。メルカリやラクマといったオンラインフリーマーケットは、今まで存在しておらず、転売といってもその売り手を見つけることが難しいためある程度の参入障壁があった。しかし、今やその障壁は崩れ、スマホさえあれば誰だって転売ヤーになれるマーケットが広がっている。紛れもないこの事実は、自由平等な資本主義のこの社会において、これもまた自然な流れである。

NFTマーケットについて

btw、昨今、NFTが盛況である。以下の記事にあるように、こんな岩のjpgが1.5億円で売れるほどの加熱具合だ。

毎日のように、どこかのプロジェクトが100〜100,000ものNFTをドロップし、それをmintしたと思ったら売る。それだけで数百万円が儲かる意味のわからない市場がそこにはある。以下、最近流行りのNFTである。(NFTの流行の話は、ググればいくらでも出てくるので、端折る)

↑これは1SOL(=$130=¥14,300)でリリースされて、現在フロア価格20SOL、平均60SOLほどで取引されている。

↑これは文字情報のみのNFT。Lootと呼ばれる手法を使ったNFTの新しい形(なぜ新しいかは調べてほしい)であるが、このNFTを6秒動画のVine元CEOが無料で発行し、現在は300万円ほどの価値を付けている。(これを無料で何枚も発行した人は一瞬で億り人である)

結局NFTも、今は言葉こそ色々あるが結局は転売の対象として取り扱われている。事実、NFTBOTと呼ばれるbotを開発する人が増えており(まだパブリッシュされているものは見つからないが)結局はその購入方法を争う形になっている。先述したAuroryのエアドロップの際、自作のbotを使って84体mintした高校生が一夜にして億り人になったことが、仮想通貨界隈で話題になった。高校生でFIRE(早期リタイア)できる時代である。


NFTバブルの不自然さ

-以下、特にエビデンスもない僕の意見だ。-

このNFTバブルは僕にとって、1つ非常に不自然なポイントがある(多分僕以外の多くの人も同様に感じているはずだが)。それは、現状のNFTにあまりにも所有感(その商品を持っていて、かつその商品の価値や機能や審美性などを享受できること)がないことである。皆はiPhoneの中にある画像に所有感を抱くだろうか?いつ撮ったかもわからないスクリーンショットと旅行で彼女と撮った大事な1枚が、同じフォルダに入っているんだからそんな所有なんて感覚はない。現在多く取引されているNFTはまさしくただのjpgであるし、持っている感覚がない。しかし「アート」として流通するそれらNFTの所有権を巡って大きなお金が動いている。

ここで、先ほどの転売の問題点の話に戻ってみる。本来的に、商品が転売される際の需要の高まりは、「その商品が(その商品の持つ価値や機能を享受するために)欲しい人」の間で起きるのが自然だ、という話をした。さらに、転売は「その商品が {その商品が(その商品の持つ価値や機能を享受するために)欲しい人に対して高値で売れることが分かっているから} 欲しい人」の間に起こる問題であるとも述べた。しかし、今回のこのNFTマーケットにおいて、「その商品が(その商品の持つ価値や機能を享受するために)欲しい人」が本当に存在しているのか?という疑問がある。これはあくまで仮説レベルの話ではあるが、その人は存在しておらず、あまりに空虚な"需要”だけがそこにあって、それに色を塗っただけのjpgなのでは、と考える。

もちろんplay-to-earnの領域において、そのNFTが利用可能な価値を持っていて、その所有権を争うという一面もあるが、それは現状一部である。また、NFTに自身の絵を載せてアートとして展開している人が多いことも理解している。しかし、今のトレードはすべて需要と供給がミスマッチしているように見えるのだ。

そんな理由から、僕はNFTに「所有感」を与えるべきではと思っている。仕組み自体は革新的であり、そこに大きな資金が流れていることもまたポジティブな材料のはずだ。だからこそ、NFTに可能性を見出し、文化を生むマーケットに根本的な解決をもたらすきっかけとしたいと思うのである。

NFTが持つ可能性

NFTに「所有感」を与えるためには、NFTと現物の商品が同時に発行され、一緒に取引されることが一番手っ取り早い。そうした際、NFTには大きく2つの可能性があると思っている。それは「鍵としてのNFT(walletを定義可能)」「二次流通時の手数料獲得」である。

鍵としてのNFT(walletを定義可能)とはどういうことか。それはNFTは所有者が誰であるかを常にトレースでき、且つそのNFTが入るwalletは制作側で定義可能な点だ。ある特定のNFTを持っている人が誰か、を正確に追えるというのは今までの商品にはなかった強みである。例えば、超高値で取引されるJordan 1 Retro High Off-White Chicagoが、

誰の手に渡ったのかは、つまるところ誰も知らない。SNKRSであたったラッキーな人もいれば、virgil本人からギフトされた人もいるであろう。しかし、これらジョーダンにすべてNFTが付与されていれば、その所有者は一目瞭然である。

さらに、NFTはそのNFTを管理するwalletを指定できる。つまりは、そのNFTを管理するwalletのみが使えるマーケットを作ることが可能ということである。これも今までになかった機能である。Nikeの靴はNikeのマーケット(そもそも無いが)でしか売れない、ことはなくて、吉祥寺のフリーマーケットですら取引可能な状態だ。(walletをいくつも所有可能な状態にしておくと、今までと何ら変わらないため、そのwalletを作るところには何かしらの本人確認が介入する必要がある)

これら「鍵としてのNFT(walletを定義可能)」は、すべての商品の所有と流通に鍵をかけられるという、新たな仕組みを持っているのだ。

二次流通の資金流入とはなにか。これは言葉の意味のままで、NFTはその二次流通時に、NFT制作者に対していくらかの二次流通feeを課すことができる。例えば、Nikeの靴をメルカリで売るにはNikeに¥10,000のfeeを払う必要がある、みたいなことを定義可能なのである。二次流通時、制作者にfeeが払われないのは、転売ヤーの話題では顕在化していなかった課題だが、中古市場が成り立つ限り、常にある課題である。それを解決できるNFTの機能は明らかに文化を守る1つの仕組みになる。

NFTによって文化を守るためには

上記、2つの可能性を見てきたが、1つ大きな課題を残している。それは、NFTと実物の商品との結びつきをどう作るかである。ここにチャンスがあり、この仕組みの開発こそが次にすべきことではと思う。

ジョーダンの底にNFTのアドレスを記載するだけでは結びついたとは言えない。スニーカーヘッズは、あくまでスニーカーが好きなのだからこそそのアドレスが何であれ、スニーカーそのものだけを取引するであろう。NFTだけが宙ぶらりんの状態である。

この結びつき、に関してはまだまだ思考途中・情報収集途中ではあるが、以下ある計画がある。

計画

この結びつきを生む1つの方法は、「破壊」や「陳腐化」にあると思う。例えば、ジョーダンに結び付けられた時限爆弾があり、1週間で爆発してしまうタイマーがセットされている。その時間を延長できるのは、そのジョーダンと同時に発行されたNFTを持つwalletがインストールされたiPhoneだけだとしよう。時限爆弾にはNFCが仕込まれており、iPhoneでタッチすればタイマーが延長される仕組みだ。

この場合、NFT単体でもジョーダン単体でも価値は成さず、両方を所有して始めてそのジョーダンを「所有」することとなる。かなりネガティブな結びつきではあるが、結びついたことには変わりはない。

こうした問いをたてていくことが、今後その結びつきについて考える(もしくは考える雰囲気が生まれる)ことに繋がると思うので、これを表現したアートを制作し、openseaで売りたいと考えている。NFT購入者にはジョーダンを輸送する。

販売した際にはここでも告知したい。

おわりに

以上が最近僕自身が考えていること、そして何となく計画していることである。転売とNFTとの可能性は限りなくゲームチェンジャーになりえるレベルに達していると思う。NFTバブルは様々な教訓を生む1つの現象であり、その中の1つにこの計画はある。


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