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過去レポ ホリプロ『サンセット大通り』 2015.07.04(土)マチネ&ソワレ

再演時の『サンセット大通り』は本当に楽しみで、初日からマチソワすることにしたのを思い出す。その日の過去レポ。

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今日から2週間余、ウェバー卿の『サンセット大通り』が上演されるので、エリザベートはほぼお休みする。

欲を言えばラブネバみたいに本場のセット持ってきてほしかったし、ジョーは田代くんに(もっと言えば石井さんや芝さんに。若くないけど。爆)演ってほしかったけど、それでもただただ、この作品がふたたび観られることに感謝したい。

というわけで、今日は両キャスト初日のマチソワに行ってきた。

初演のときはあまり気付かなかったのだが、歌ではない、BGMとしての音楽の存在感がすごく大きい。場面転換や、セリフのないシーンでも、荘厳な音楽が鳴り響き、それこそまるで無声映画のワンシーンを見ているかのような錯覚に陥る。しかもウェバー卿の十八番であるリフレイン。これには本当にやられてしまう。この重厚な音楽を楽しむだけでも(もちろん生オケ)この舞台を見る価値あり、という感じだ。

キャスト的には安蘭平方の圧勝。
平方くんはGWのMMSで「サンセット大通り」を歌ってくれたはよいが余りの下手さ加減に頭を抱えてしまったのが思い出される。ところがところが、本公演のジョーはとってもよかったのだ。いや、もちろん歌が「弱い」のは弱いんだけど、すごく丁寧に演じているのがとても好感が持てたし、ジョーの持つ弱さと生真面目さ、そして不真面目さをよく表現できていたと思った。最近、(育三郎といい)よい意味で期待を裏切ってくれる演技を見せてもらえる機会が多くて、素直にうれしい。

安蘭さんは初演以来二度目なので、貫禄の安定。歌はそこそこ上手い(でも超絶上手いわけではない)ので安心できるんだけど、慣れているからなのか、まるで一幕がコメディみたいだった…。もうちょっとシリアスに演じてほしいところ。

対する濱田柿澤ペア。四季出身なので本来は発声的には有利なはずなんだけど、四季時代に抑えつけられていたタガが外れたのか、もう何を言っているかわからないシーンが多すぎ(私は何度も見てるからわかるけど、初見では厳しい)。こんなん見たら浅利先生泣くな〜、というか、出してもらえないであろう。特にカッキー。丁寧に演じているシーンもあり、特にラストのベティを追い出したあとの落ち込み具合はすごく胸を打つ良い演技だったと思うんだけど、全体的にガナっているシーンが多く、感情に任せて演技することが心地よくて仕方ないんだろうな〜、という印象を持った。でもそれは実は最低なことなので、早く誰か指摘してあげてほしい。

濱田さんはそこまでひどいことはまったくないんだけど、それでもちょっと感情に流され過ぎで、もうちょっと台本の表現者としての自分をしっかり持ってほしいと思った。歌も期待したほどではなく(観る前は、安蘭さんを圧倒する歌唱力を期待していたんだけど)、ちょっと拍子抜けだった。もうちょっとがんばってほしい。

まぁそれでも安蘭さんを苦手な人や見飽きた人には、濱田さんという選択肢があるのは素晴らしいことだと思う。若過ぎ感は否めないものの、あれはあれでアリかな〜、と。でもどう見ても50歳(役としての設定)には見えないよ!

脱線するが、このノーマ・デズモンドという役は、ミュージカル女優の憧れの最高峰の役だ(敢えて断言)。ホリプロが上演権を取ったことで(90年代には四季が上演権を持ってたけど、志村さんが病床に臥せったため、実現せず)ホリプロ役者に限定されてしまったことがホントもったいない。
でも、そんな中でキャスティングされたお二人には、これからもこの役を大事に演じていって、世界に通用する日本版サンセット大通りを作り上げてほしいと切に願う。

まぁしかしアンサンブルの歌唱レベルはひどかった。ダンサーを中心に集めてるからだと思うのだが、ウェバー卿のミュージカルにあの歌唱レベルの役者さんを配してはダメだろう。ホント人材不足を痛感した。
面白いはずのシーン(ジョーのおめかし等)が白けちゃったのも、ひとえに歌唱力の欠如が大きいと思う。

一方で、プリンシパルシングルキャストは充実。鈴木綜馬さんのマックスは言うことなしの最高傑作だし、夢咲ねねさんも期待以上。戸井さんも脇を固めて安心。あ、アーティ役の水田さんって人がイケてないのはご愛嬌?

というわけで、必見の見どころと残念なところが交錯する本作品だが、ロイド=ウェバーファン的には見逃せない。多少は脳内補完力・想像力で本来表現されるはずのものを予想しなければならない部分はあるが、やはり生オケでウェバー卿のミュージカルが堪能できるこの機会、逃すべからず!、だ。

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