ミュージカル配信体験記~約1ヶ月で18本!①
劇場の民である私も、いよいよ配信の世界に足を踏み入れた。
新型コロナウィルスのためになかなか劇場がオープンされず、されたとしてもソーシャルディスタンス維持のために客席数が半分以下になった状況で、配信という選択肢が出てきたのは興業主の視点からしても当然のことだったのだと思う。
ミュージカルに限らないが、ライブパフォーマンスは生で観てこそというのは当然のことであるが、一方でその映像ソフトを楽しむという文化も間違いなくあり、今回流行った「ライブ配信」というのはまた新しい一形態なのだと思う。(ちなみに今回の18本に含まれる韓国『モーツァルト!』は正確にはライブ配信ではなく録画配信だが、便宜上ライブ配信として扱う。)
このライブ配信がソフトと大きく違う点は、一回きりしか見られないということだ。もちろん、配信の中にはYouTubeなどのように期間内であれば何度も見られる配信もあるが、今回私が楽しんだ配信はすべてライブのみ、アーカイブ無しの配信であった。
誤解のないように言っておくが、舞台系の配信であってもライブ以外にアーカイブを提供し、リアルタイムで見逃しても後から見ることができる配信も存在する。しかし多くのライブ配信は、リアルタイムのみだ。これは、アーカイブ配信するためには権利上のハードルが高くなり、許可が下りなかったり、下りたとしても権利者への支払いが跳ね上がるという事情があるようだ。今回の配信は、オムニバス的なコンサート形式のものが多くあったが、その選曲に於いても配信すら許可されなかったものもあったと聞く。ましてやアーカイブとなると一層大変なことだと思われる。その点、オリジナル作品を配信する場合は自由にできるのだが、ミュージカルという文化は欧米が元祖であることもあり、なかなかそううまくいくものではない。
しかしライブ配信の視聴安定性はどうなのだろうと不安は残る。巻き戻しもできないのだから、まさに一発勝負、「ライブ」でしか楽しめないのだから。
これは大きくは、配信元のサーバーの安定性と、受け手である個人宅のネット回線の安定性の二つに大きく依存すると思われる。
ライブ配信を見た人の感想をTwitterなどで検索すると、配信が途中で止まったりカクカクしたりということは、比較的日常茶飯事であるようだ。
さて今回、そんな不安定な状況の中、すでに多くの配信が始まっていてもまったく触手を伸ばさなかった私がようやく重い腰を上げたのは、何と言っても新妻聖子さんの出演する『SHOW-ISMS~ドラロマバージョン』の配信が決まったからだ。これはもう、配信以前に何としても劇場で観たい作品であったが、コロナ明け(明けたわけではないが、劇場は再開したのでこう呼ぶこととする)のクリエ第一作だし、絶大なる集客力を誇る井上芳雄さんも出演するし、ソーシャルディスタンスの1席空けの販売だし、というわけで、とてもチケットが取れる気がしなかったため、配信を楽しみにすることにしたのだ。
結果的にはチケットも取れ、実際に観劇することもできたのだが、全部で6回しかないドラロマのうち4回が配信されることになっていたので、配信されない回を劇場で観劇し、配信はすべて全通することを心に決めた。
配信はイープラスのStreaming+というシステムを使って行われる。視聴環境の妥当性も不明なまま、一発勝負で(とはいえ4回観るのだが)本丸を観るのは気が進まなかったため、テストと言っては非常に失礼であるが、2日だけ早く幕を開ける『ジャージー・ボーイズ in コンサート』の配信を見ることにした。
余談であるが、このJBコンサートは本来7/18が初日であったが、直前に関係者からコロナ陽性の人が出たとのことで、急遽お客さんが入れなくなってしまった。無観客での配信は行うとのことで7/18の配信は変わらず行われたが、チケットを持っていた人は本当に悲しかったことと思う。待ちに待った帝劇の再開が、5日ほど遅れることになってしまった。
というわけで、withコロナ時代に私の配信初体験となったのは、7/18(土)ソワレのJBコンサートであった。
スマホやタブレットで観ることもできるが、やはり大画面で観たかったため、テレビに挿しているAmazon Fireスティックのブラウザからe+のサイトに行き、リモコンでチマチマとIDやパスを打ち込んでログインして、配信を見ることにした。必然的にWi-Fi接続となる。
不覚にもこのときのチャット参加人数をメモしていないのだが(配信と同時にリアルタイムでチャットできるサービスが提供されていた)、予想に反してというかなんというか、スムーズに配信を見ることができて、これなら配信も悪くない!、と思った私の配信初体験であった。
さて、本命のドラロマ初日、7/20(月)ソワレ。このときのチャット参加人数は1600人くらいであったろうか。このチャット参加人数というのがイコール配信を見ている人数のことなのかどうかはわからなかった。配信を見ている人はもっと多い気がするのだが、私のように腰が重いミュヲタも多い気がして、真実は不明だ。
配信のクオリティは、スタートは上々であった。しかしたまに止まる。ほんの数秒であれば、バッファを使ってそのまま配信が続くのであるが、一度だけ本格的に固まってしまった。しかも固まってしまったのかそれともバッファから回復できるのかの区別がつかず、しばらく時間を無駄にしてしまった。結果的に、迷った時間に加えて一度ブラウザバックしてログインし直して、みたいなことをやっていたら、数分間は観られなかった。
確かにWi-Fi回線で配信を見るということに無理があったのかもしれないが、ライブ配信ではないにしろAmazon PrimeビデオやNetflix、YouTubeやWOWOWオンデマンドではまったく止まることなどないことを考えると、こちらの視聴環境というよりは配信元のサーバーに問題があるのではという思いを強くした。(ちなみにほとんど見ることはないが、AbemaTVはチラホラ止まる。これもサーバーの問題と推測している。)
次の配信は7/23(木)ソワレだ。
7/22(水)マチネを観るために上京しており、東京に2泊した。そのため、7/23ソワレはホテル日比谷レムのお部屋で鑑賞することになった。この日はFireスティックを持参して、ホテルのテレビに繋いだ。
これは私の思い込みかもしれないが、ホテルのWi-Fi回線は一般的にそこまで大容量ではないことがある。そのため、自宅ですら止まることのあったライブ配信をホテルの回線で観ることに抵抗があったのだが、どうしてどうして、この日の配信は、まったく止まることもなく、極めて快適に視聴することができた。さすが観劇ヲタク御用達の日比谷レムである。
翌朝大急ぎで関西へ帰り、7/24(金)正午からのマチネを配信で観た。これもFireスティックを自宅のテレビに繋いで、だ。この日はときおり短く止まることはあったが、フリーズすることはなかった。4,000円も払っているのだから、もちろんもっと安定した環境で見せてほしいとは思うものの、技術の過渡期と思えば許容できる範囲であった。
千秋楽の7/25(土)。いつも直前にしか配信チケットを買わない私は、正午のおよそ1時間前くらいの11時にチケットを購入した。話は逸れるが、配信のもっとも良いことの一つはチケット争奪戦がないことだ。直前でもチケットが買えるし、買えないという心配もない。この点だけは本当にありがたいと思う。ただ、視聴者が多いためにサーバーが重くなっていることを考えると、今後は配信であっても視聴者人数を制限される可能性も残っており、予断を許さない。
ところがその数分後、この公演が中止になったというニュースが飛び込んできた。本当にびっくりした。なんでも、関係者の中に体調不良者が出たのが理由ということだった。(結果としてコロナではなかったということだ。)
劇場観劇にしろ配信にしろ、私を含めてこの日の公演を楽しみにしていた人にとってはショック極まりない出来事であった。
JBコンサートの初日4日間もそうであったが、何が起こるかわからない。このコロナ時代は、観られるときに観ておかなければ絶対に後悔する。後から観ようなどと思わないことだ、という思いを強くした。
千秋楽が中止だなんて、過去分のアーカイブ配信をしてくれたらいいのに、と思いつつも、上に書いたような事情でアーカイブ配信は難しいだろうというのはわかっており、諦めつつあったところへ、なんと、7/26(日)ソワレに配信限定の追加公演を行うことが発表されたのだ。これは東宝さんの英断だったと思う。
というわけで、7/26(日)ソワレのドラロマ特別版を配信で観た。これまでの配信はすべて1600人前後のチャット参加数だったのが、なんとこの日は3,000人超! 皆の期待の高さが伺えた。キャストさんもよく集まってくれたと思う。感謝しかない。
しかし。この日の配信クオリティは散々であった。こちらの環境は変更なく、どう考えても、3,000人超という数字に見られるように、視聴者が多すぎることによるサーバーの過負荷だと思われた。止まる止まる。完全にフリーズしたのは二度だけであるが、例によってブラウザバックからの再ログインで、たいそう手間取ってしまった。しかも二度とも、いちばん盛り上がっている曲の途中で止まったのだ。これは本当に勘弁してほしい。
実はこの後、あまりにこれはひどいと思った私は、e+に苦情のメールを送った。速やかに回答をいただいたが、ひとことで言えば「我々は、止まらず観ることができたことを確認している。あなたの視聴環境の問題だ」というテンプレのような返事であった。
しかし邪推するに、私以外にもおそらく多くのクレーム、コンプレインがe+には入ったことと思う。そのためかどうかわからないが、8月の帝劇コンサートの配信では、配信前の時間にくどいほど視聴環境や免責事項についてつらつらと画面に流れてくるようになった。
過ぎたことはどうしようもないが、配信を事業としてやっていくのであれば、顧客満足を軽視することなく殊勝に改善を継続してほしいと思う。
長くなったのでここまでを①として、記事に上げることとする。
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