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観劇納め 劇団四季『アンマスクド』2021.12.11(土)マチソワ&25(土)ソワレ&29(水)マチネ&30(木)マチソワ

2021年の観劇納めは、『劇団四季のアンドリュー・ロイド=ウェバー コンサート アンマスクド』となった。

何やかんやで12月に6回、観ることができた。劇場によってもお席によっても、そしてキャストのコンディションによっても舞台というのは毎回変わってくる上に、観客の状態ひとつでも感じ方は変わってくるものであるが、ここでは6回の観劇を総括しつつ感想を述べていきたい。例によって辛口含みなので、そういうのが苦手な方はここでそっと閉じていただきたい。

さて、何といってもロイド=ウェバーのコンサートというだけで心が躍る。
聞いたところでは遥か昔に四季では一度ウェバー卿の楽曲だけを使ったコンサートをやったことがあるはずだ。また、1999年からのソング&ダンス~ミュージカルの花束~でも、二幕はロイド=ウェバーパートとして、ウェバー卿の楽曲だけで構成されていたのは記憶に新しい。
また、来日公演でも、私が知る限り1996年と2018年にウェバー卿の楽曲のコンサートがあった(これは私も両方観に行った)。
しかし今回は、ちゃんとウェバー作品として仕上がった、新しい形のコンサートだ。名称も『アンマスクド』として、本国でも公演されている。今回は日本向けの特別演出となってはいるが、ウェバー卿の作品リストとして名を遺す作品になることは間違いない。

日本版のキャストは、プログラムに10人しか載っておらず、この10人で全国12都市の公演を乗り切るのだという気概が見えた。開幕前から四季最強の布陣として評価の高かった面々だ。

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さて、公演の中身だ。
何と言っても面白いのは、ウェバー卿本人の映像がふんだんに使用されており、作品ごとに彼のブリティッシュジョークの効いたコメントを聞くことができることだ。最初に観たときは、卿の肉声を流して字幕にしてくれたらよいのに、と思ったが、どうしてどうして、吹替には吹替の良さがある。なかなかに癖になる青羽さんの吹替であった。

オープニングのJCS序曲は、映像に出てきたウェバー卿がまるでジーザスであるかのような演出で、シュールであった。ウェバー卿こそが神の子ということであろうか?
この記事の画像にも使っている音符はJCS序曲のもので、演奏と共に音符に光が当てられていく演出で、洒落ていた。

四季のソンダンには欠かせないと言ってもよい「スーパースター」を歌うのは白瀬さんだ。役としてのユダであったかと言えばそうではないが、ここはコンサートなので不問に付す。素晴らしい声量で、あの悪名高きブリリアでも何の問題もなく名曲を聴かせてくれた。
白瀬さんと言えば『春のめざめ』に出ていたときの記憶くらいしかなかったのだが、このアンマスクドを支えてくれる大事な歌い手さんであった。

ヨセフはコロナで日本人による日本初演が流れてしまったこともあり(小劇団は除く。2022年に気を取り直して再・初演だ)、来日公演こそ二度ほどあったものの、日本語初演を先取りした形になった。
世評は高い笠松さんがヨセフを演じたが、まぁ正直言って、歌唱力はこの10人の中では一枚落ちる。あの笑顔とダンスとそこそこの歌のおかげで絶賛されることが多く、いつもモヤモヤするのだが、正直、ウェバー卿の歌を聴かせる舞台のキャストとしては、力不足は否めないと思った。
が、ヨセフという作品の持つ経緯を考えれば、それはそれでありなのだ。そこも含めてあのウェバー卿の背景説明があったとすれば、すごい。

この作品で、個人的にいちばん驚かされたのは平田愛咲さんだ。
元々好きな役者さんで、2011年のエポニーヌを観たときからずっと注目していた。いずれは昆夏美さんと並んで、新妻さん笹本さんのあとを継ぐ東宝女優になると思っていたら、何故かしら東宝で冷や飯を食わされ、突如として四季に入団した人だ。四季では主役級の役を次々と射止めたが、個人的な思い入れもあり、上手い下手を超越していつも応援していた。
ところが今回のアンマスクドでは、本当にすごかった。この人はこんなに歌える人だったんだというのを今さらながらに思い知った。
そのひとつが、JCSのマリアが歌う「私はイエスがわからない」だ。この歌をここまで楽々と、しかも芝居をしながら歌う役者さんを久しぶりに見た。最高であった。

ゲッセマネは、四季が発売している35ステップスというCDにも収録されているが、あのCDでの山口祐一郎さんの気の抜けた歌い方は何なんだろう。せっかくの音源なのに本当にもったいない。ちなみに日本人の歌うゲッセマネで音源が残っていていちばん素晴らしいと思うのは、今井清隆さんのものだ。英語の発音には目をつぶるとして、『GLORIOUS VOICE』というCDに収録されているので、チャンスがあればぜひ聴いてほしい。
そして今回の山下さん。愛妻や女性の友人からの評判は大絶賛であった。それはどうやら、歌が素晴らしいということではなく、ジーザスとしての生き様が素晴らしいということであった。わたし的には、やはりあのロングトーンがシャウトで誤魔化されてしまったことに興醒めした。舞台版とは異なってラストを歌い上げるバージョンであるために必ずしも伸ばさなくてもよいという考えはわかるが、やはりジーザス役にはもっと超絶した歌唱力を求めたいところだ。
どうでもよいが、このゲッセマネのラストも、怪人のMOTNの最後も、日本語だとイの音を伸ばさなければならないのがホント不憫だな、と思う。原詞だとアの音を伸ばすことになるためやはり歌いやすいのは明白だ。その点では日本人の歌い手さんは、歌いづらい中でよく伸ばし切って歌っているのは素晴らしいことと思う。

エビータのパートはまるでひとつの作品を観ているようで、とてもよかった。特に共にいてアルゼンチーナは本編が再現されたかのようであった。一方でブエノスアイレスは、正直、2021年始の『Bridge』のときの方が遥かによかったと思う。アレンジの問題かもしれないが、私の印象としては谷原さんの調子が年始ほど最高ではなかったということだと感じた。特に12/29公演の共にいてアルゼンチーナでは2回も声を落とすことがあり、お疲れを感じさせた(だが12/30はマチソワとも素晴らしかった)。

Unexpected Songを歌った真瀬さんは、ネットで評判を見る限り絶賛されていたが、わたし的にはイマイチだったと思う。いや、最後のクリスティーヌだけはよかった。本当によかった。しかしそれ以外の歌は、裏声への切り替えが早くて苦しそうで、これを上手いと言ってよいのかどうか憚られた。
クリスティーヌがあそこまで完成されていたのに、他の曲は苦手なのだろうか。ひょっとしてクリスは録音なのか、とも思った。そもそもPOTOとAIAOYを続けて歌わせるのは酷でしょうよ、、、。

私がすべてのミュージカル作品の中でいちばん好きなのが『アスペクツ・オブ・ラブ』だ。その中からLove Changes Everythingが歌われたが、これまたちょっとガクッと来る歌であった。
ただ、舞台上ではアレックスが歌うところに3人(最終的には5人)の女優さんが表れて、だれがどの役かを想像するだけで幸せになれた。順当に行けば、平田さんのジェニー、谷原さんのジュリエッタ、江畑さんのローズということになろうが、芝居巧者の3人であるからして他の役も余裕でこなせそうである。想像するだけで楽しい。

Love Never Diesの表題曲を歌ったのは吉田さんだ。地声が強く、とても聴きごたえがあった。一曲だけなのがもったいないほどであった。

キャッツのパートに関しては特にコメントはないが、キャッツ好きな人であれば楽しめたろうと思う。

さて、二幕。
スターライト・エクスプレスは残念ながら、たった一度だけあった来日公演を観ていない。川崎麻世さんも日本から出演されたもので、ジャパン・バージョンのCD(これは持っている)も出ているものだ。
しかしながら、1999年のソング&ダンスで使われていたこともあり、楽曲自体はお馴染みだ。豆知識としては、光GENJIのデビューシングルのB面はスタライト・エクスプレスのナンバー「ROLLING STOCK」だ。当時の日本公演のイメージソングとして使われた。

バッド・シンデレラを歌う平田さんはこれまた最高であったが、数ヶ所、歌詞が聞き取りづらいところがあったのは残念であった。

次のパートは『サンセット大通り』だ。私の大好きなミュージカル作品のひとつだが、正直に言うと、日本で主演をやった安蘭さんも濱田さんもわたし的にはまだ満足できていない。元々は四季が上演権を持っており、志村さんのご逝去で結局上演できずに終わったこの作品、せめて保坂さんにやってほしかったというのが正直な思いだ。
まぁしかし今さら言っても仕方ない。江畑さんがどこまで私の理想に近づいてくれるか楽しみに拝見したが、正直、調子が良い日が少なかったと思う。唯一最高の出来だと思えたのは、12/29マチネのみであった。
が、それでも、江畑さんのノーマを聴くことができたのは本当にうれしかった。
そういえばAs if…も、1999年のソング&ダンスで使われた楽曲だ。このときは志村さんへの追悼の意味を持って歌われたため、あの力強い曲を敢えてスローにアレンジし、歌詞も変更して歌われたのは懐かしい思い出だ。

サンセット大通りの表題曲を歌ったのは飯田達郎さんだ。
コンサートなのであれでよいのかもしれないが、ちょっとジョーではなかった。ニヤニヤしすぎていた。あれが役作りではなく、コンサートならではのお遊びであることを願う。
これまたちなみに、日本人の歌う「サンセット大通り」でいちばん好きな音源は間違いなく石井一孝さんのものだ。初演よりも前に発売されたCDに収録されていたため歌詞は石井さん独自の翻訳だが、歌詞も歌も本当に素晴らしい。機会があればぜひご一聴願いたい。

次は『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』のパートだ。
ウェバー卿のコメントでは「When Children Rule the World」と「Whistle Down the Wind」が紹介されるとのことだったが、When Children…はBGMとして流れたのみで、実際に歌われたのはWhistle Down…とThe Volts of Heavenだ。
この作品は2020年に東宝が上演したが、このコンサートでのWhistle Down…の訳詞は浅利先生が1998年の長野五輪の開会式で使用したときのものであった。それがまたよかった。そういえばウェバー卿が、浅利先生に頼み込まれて長野五輪の開会式で使うことになったと言っていたが、どう考えても当時の最新作を世界に宣伝してほしかったウェバー卿の方から浅利先生にお願いしたんでしょ、としか思えなかった(笑)。
そしてThe Volts of Heavenはこれまた四季のソング&ダンスシリーズの定番曲だ。特にキム・スンラさんがメインボーカルを務めていたオーヴァー・ザ・センチュリーのときにその地位を確固たるものにしたと思う。今回の歌唱はまぁお祭りだと思えばそれはそれでよいのであるが、叶うならばスンラさんが歌っていたような魂の叫びをもう一度聞きたいものだ。

ラブネバのTill I Hear You Singを挟み、いよいよ『オペラ座の怪人』パートだ。飯田洋輔さんは本役を演っていることもあり、難なくこの大役をこなしていた。歌唱力としてはケチが付けられない素晴らしいものであった。クリスの真瀬さんも上述の通り素晴らしかった。
あとは飯田さんがどこまで芝居を極めるか。市村さん怪人ファンの人にはまだ不満があったようだ。芝居系怪人が好きな人には佐野さんしかまだ選択肢がない。飯田さんの歌唱力に怪人としての生き様が加われば最強と思う。今後に期待したい(上から偉そうにすみません)。

いろいろと偉そうに辛口で書いたが、結局のところ好みの問題だ。良いか悪いかを決めるのは他人ではなく、観た人本人だ。だからその人が素晴らしいと思えば、それがすべてなのだ。
私はこう感じた、という備忘メモのような感想に過ぎないが、2021年を締めくくる素晴らしい観劇体験の記録として、ここに残しておく。

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