観劇始め 劇団四季『The Bridge ~歌の架け橋~』 2021.01.22(金)マチネ
2021年の観劇始めは劇団四季の新劇場【春】のこけら落とし公演である『The Bridge ~歌の架け橋~』となった。
1月10日(日)に初日を迎えたこの公演、実は抽選で当選していたのでチケットを持っていた。しかしながら、新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が出されてしまったことと、初日公演がライブ配信されることが決まったことから、遠征を諦めて自宅で鑑賞することにしたのだ。
配信は、1/10(日)昼、1/11(月祝)昼、1/14(木)夜、1/15(金)昼の4回に亘って行われた。4回ともキャストは変わらずであったが、My初日となる1/22(金)を含む週は、キャストが当日まで決まらない日が続き、どうなるのかわからないまま当日を迎えた。
結果として、私が観劇した1/22(金)までがオープニングキャストのままであり、翌1/23(土)からはキャストがガラリと変わった。ひとまずはオープニングキャストで観ることができたことを喜びたい。
本公演は、1999年から始まった『ソング&ダンス』シリーズの流れを受け継いでいることは間違いない。しかし敢えてその名前を捨て新作ショーとして、しかも新劇場のこけら落とし公演に持ってきたその意気込みは、この公演が過去と未来の架け橋になることを祈ってのことであると思われ、劇団の心意気を感じる。
以下、感想に入るが、結構辛口である。そういうのが苦手な方はここから先はご遠慮いただければ幸いだ。
ショーの詳細については各方面にレポが上がっているので割愛するが、私個人としては、配信を見過ぎていたせいか、期待したほどの感動が得られなかった。もちろん、ライブならではの体感という素晴らしさはあるのだが、何故かしらそこまで集中することはできなかった。
当日に東京入りし、そのまま劇場に向かったのもマイナス要因だったかもしれない。しかも劇場内の暑いこと暑いこと。体調を整えるのに一苦労であった。
しかし何と言っても、このショーは谷原さん抜きには成り立たなかったと思う(と言いながら、翌日にはキャス変するのであるが…)。彼女が最高の歌唱力と目力で観客を魅了したことは疑いようもない。
私が観劇した日は、正直、多少お疲れかなと思わないでもなかったが、それでも素晴らしいパフォーマンスだったと思う。
特に李香蘭の楽曲とエビータのブエノスアイレスは必聴必見であった。全盛期の玲子さんを思わせる迫力と生き様で、ぜひ本役でも観てみたいと思った(エビータはすでに実現しているが)。
配信の際も、正直、彼女のブエノスアイレス一曲で元が取れたと感じることができた。
一方で、ちょっと残念だったのが劇団の顔である青山さんだ。もちろんベテランなりの魅力や技巧はあるのだが、全盛期を知る者としては、衰えたな~という感想をまず抱いてしまう。全盛期に観たことがなくとも、ライオンキングのCDで青山さんのラフィキに魅了された人は多いと思う。残念ながら、少なくとも歌唱力という点に於いては、往年の迫力を感じることはできなかった。(が、それが必ずしも「悪い」ことかどうかはわからない。)
清水さんのファントムについても触れておきたい。
過去のソング&ダンスシリーズで、本役として出演したことがないにもかかわらず怪人の歌を歌ったことがあるのは、芝清道さん(その後怪人役で出演)くらいではなかったろうか。(この記事をアップした後、瀧山さんと飯田洋輔さんも歌われていたとのご指摘をいただいた。感謝申し上げる。)
そんななか、突然Music of the Nightを歌うことになった清水さん。プレッシャーは相当のものだったと思うが、辛うじて歌い切れていたと思う。ネットでは結構絶賛する意見もあるようだったが(それは今シーズンの新ファントムである岩城怪人も同じであるが)、私が聴く限り、まだまだ上達の余地はあると思った。怪人はAngel of Musicなのだ。そこら辺の多少歌が上手いおにいさんと同じレベルではダメなのだ。もっともっと研鑽して、一声聴くだけでクラっと倒れてしまいそうな歌唱を期待したい。
さて、四季のソング&ダンスシリーズは、ダンサーさんたちにとってすごくやりがいのある楽しい作品だと思う。まぁ四季の場合は近年では『パリのアメリカ人』、古くは『クレイジー・フォー・ユー』や『コンタクト』『アンデルセン』、そして何と言っても『キャッツ』など、外部の舞台に比べたらダンサーさんが活躍する場は極めて多いのであるが、それでも、俳優が自分の素を出しながら存分に踊ることができる、貴重な作品だと思う。
ただ、、、ただ、今回は、、、そこまでダンスが完成されていたかというと微妙だし、そもそも振り付けも微妙だった、、、気がする(個人の感想です)。
踊りが揃っていないのはよいのだ。そもそも、全員が揃えて踊るということは、ある意味いちばん下手な人に合わせて踊るということだ。そうではなく、全員が全力で踊れば揃わないのが当たり前。それでもそのそれぞれの最高のダンスを堪能できる。それがソンダンの「ダンス」だったはずだ。
しかし今回「揃っていない」のは、そういう問題ではなかった気がする。少なくとも私が観たいダンスではないシーンが多かった。これがダンサーの問題なのか振り付けの問題なのかは正直わからない。だが、残念ながら消化不良となってしまった。
何だか文句ばっかり書いているようであるが、もうひとつ納得が行かなかったのはあのへんちくりんな衣装だ。私はこれまで、衣装にはあまり興味がなく、歌とダンスさえしっかりしていればよいと思っていた(と思っていた)のであるが、そんなことはなかった。
もちろん、何らかの意図があったのだとは思う。しかしその意図も、観客に伝わらなければただのピエロだ。もちろんあの衣装の意図を汲み取ることができた観客もいるとは思うが、あの衣装でこのショーを楽しめ、というのは私には少々きつかった、、、
さて、それらの欠点(?)はあったにせよ、それでも、このショーは偉大であった。
オープニングにオンディーヌを持ってきたことなど、浅利先生の劇団創立の思いを明確に示してくれていてそれだけで感涙ものであったし、夢醒めやユタ、昭和三部作など、四季の誇るオリジナルミュージカルは浅利演出事務所だけのものじゃないぞ、劇団四季も上演する意気込みだぞ、というのがしっかりと伝わってきた。
おそらく配信上の権利または費用の問題から、ウェバー卿やディズニーの楽曲を多用することはできなかったのだと邪推するが、そんな中で精一杯のショーを作り上げてくれたと思う。
上演時間がカーテンコール込みで1時間40分というのもよかった。巷では、上演時間が短いと損をした気分になるらしい顧客層がいるのは漏れ聞いているが、そんなところに忖度せず、休憩なしのノンストップでショーを魅せてくれたことに感謝したい。
ひょっとしたら、新型コロナウィルス対策には休憩がないのが好ましいという判断が入っているのかとも思う。もしそうだとしたら、その英断を褒め称えたい。
そして忘れてはならないことだが、やはり劇団四季の劇場は素晴らしい。特に2階席の観やすさ、近さは他の劇場を大きく突き放していると思う。その点、今回のThe Bridgeのようなダンス系の作品を観たいときには特に2階がオススメだ。
さて、春劇場の次の作品はいよいよ真打ち『アナと雪の女王』だ。
ただ、どうなんだろう。本来は昨年9月にすでにオープンしているはずだった作品が開幕できなかったのは、日本国内のコロナ状況によるのみならず、海外スタッフが来日できないことが要因だったのではなかろうか。このような状況になってしまってはリモートで稽古をつけてもらうしかないとは思うが、本当にアナ雪が幕を開けることができるのか、今から不安でもあるが、それを上回る期待がある。
劇団四季の作品は、ロングランが多いため、公演期間が1~2ヶ月に決まっている外部の舞台に比べて、収益性が高い一方、集客性では劣る場合が多い。特に今回のコロナ状況下では、観客が観る舞台を絞ってくるため、「いつでも観られる」(=ロングランしている)作品には足を運ばず、短期公演の作品に集中しがちになる。
このショーも、私が観た日の2階席の入りは2割くらいだったと思う(このショーはロングランというわけでもないのだが)。キャッツやアラジンなど、通常であれば少なくとも週末は完売するような公演も、空席が続いていると聞く(まぁそもそも、緊急事態宣言中は、50%を超えた時点でチケット販売を中止しているとのことなので、どうしようもないのであるが)。この、ロングランが悪い方に作用してしまった現況を、アナ雪が変えることができるのか、見守っていきたい。