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【サウンドノベル】街 シナリオ花火

大山のぶ代さんの訃報が流れ昭和の終わりを感じてる今日このごろです。
直近でも踊る大捜査線THE MOVIEなどが再放送されていて
昔を懐かし事が多いのですが……。
今日はそんな昔のゲーム作品について語りたくなったのでその話題を。

親と子はわかりあえるのか?

男と女、親と子、人間関係を描いた作品は多数あるだろうが
自分の脳裏に焼き付いている作品がある。
それがサウンドノベル「街」に登場する隠しシナリオの「花火」である。

もはや続編は出ないか……。

気がつけば25年も経ってしまった本作。
元は街プロジェクトとして100人以上を動かして継続的に
作品を発信していく予定だったようだが初回で大コケしてしまい
実質的な続編である428が出るまでに10年の月日を要している。

発売当初は今や有名となった俳優……を通り越してしまっており
逆に今の人はもう知らない人ばかりになってしまっているのも悲しい。

当時まだ無名だった窪塚洋介やら北陽の人だったり。
当時でも有名どころだとダンカンなどがでているのだが
今の若い子には誰?って感じになってしまっているだろうと思うと
寂しさがあるものだ。

商業的には大赤字だったらしい。
サウンドノベルシリーズと言えば有名作に「かまいたちの夜」があるのだが
本作はサウンドノベルシリーズ3作目として「実写」の作品という
大冒険にでた作品である。
当然前評判は荒れていたのだが、結果的に品質という意味では
これが非常に評価されている作品である一方でセールス的には
あまりに実写が嫌われてしまったのか大失敗に終わってしまったのである。

隠しシナリオ 花火について

ここらで知る人ぞ知る隠しシナリオ花火について語りたい。
あまり細かいこと全部言ってるといいたことが多すぎる作品なので
キリが無くなってしまう。

この作品は複数の主人公のストーリーを見る形式のADVなのだが
その中で特定の手順を踏むと現れる隠しシナリオがあり
その一つが「花火」である。

花火の主人公は元外国傭兵部隊所属という異色の経歴を持つ
主人公の一人、高峰隆士の父親である高峰厚士である。

本編側の主人公である高峰隆士は自分の生き方に常に疑問をいだいている
典型的不器用なタイプであり、自分の生き方がわからないが故に
軍隊を脱走という形で渋谷に戻ってきたところからストーリーが始まる。
しかし気がつけば実家に戻ってきてしまい、たまたま会ってしまった姉に
勧められるがままに家の中に招き入れられてしまう。
しかしそこには軋轢のあるまま別れてしまった父親がおり
父親はそんな息子に対して「クズが」と吐き捨ててくる。

見るからに堅物そうな人物である

その他たて続けに言われる罵詈雑言に高峰隆士はキレてしまい
父親をボコボコにして結局家を飛び出してしまい
更に自分が一体何をしたいのかすらわからないと苦悩するのである。

と、高峰隆士目線からみると典型的な堅物、頑固親父である厚士なのだが
全てのシナリオを見ると突如として現れるプレイアブルキャラが
この父親なのである。

今更このゲームを新たにプレイする人もいないだろうということで
ネタバレ込で話をすると、この父親は息子以上に
不器用な人間であったという話である。

物語の冒頭は息子の夢を見続けるという予兆から始まる。
青年になってからは袂を分つ事になってしまったわけだが
この父親は小さい息子を執拗に見る夢から溺愛していたことが
伝わるのである。

しきりに隆クン、隆クンといっていることからも明白である。
高峰隆士のシナリオを見た後にこれを知るだけで
居た堪れない気持ちになる。

そして息子のシナリオ同様、大人になった息子と対峙することとなる。
いきなり息子の夢を繰り返し見るようになっていた所に
畳み掛けるように息子が現れるという展開に
実は厚士は隣の部屋でどうしようとたじろいていたのである。

しかしいざ部屋から現れると様々な感情が現れる。
父親の威厳を保つためか顔はこわばり
幼い頃と変わってしまった鋭い顔つきになった息子に困惑する。
そして口を開けば暴言が飛び出してしまった。

そんなこんなで言葉の暴力の応酬を繰り広げると
息子はもうこんな家には戻らないという。
厚士は心の声で『行くな!隆クン!』といっているのに

あまりに不器用すぎる……

暴言を畳み掛けるように言ってしまった結果。
息子は怒りに駆られ厚士は息子にボコボコにされてしまい
そのまま二度と返ってくることはないのである。

しかし街というゲームの話は各キャラの「5日間」を描くゲームである。
厚士の物語はそのまま語り続けられる。
時間は飛ぶものの厚士は病院で妻に看病されていた。

そんな妻に厚士は貴方が可愛そうで仕方がないと言われる。

正直このシーンは涙なしでは語れないというか見れなかった。
街をプレイした当時、いくつぐらいだったろうか。
20代前半ではあったと思う。
このシーンがシナリオ花火のすべてを語ってると言っても過言ではない。

男にとって人生とは自分にとって最高の瞬間を繰り返そうとすること。
自分はそうだと思ってる。だから昔は良かったなぁって居酒屋で
駄弁ってるおっさんとかが発生してたりするわけで。
今がその瞬間だって人は輝いてるって感じですね。

厚士にとってはそれがこの小さい息子とのやり取りだったわけです。
しかももう二度と戻ってくることがないと分かった直後のこれです。
後のシナリオは語るほどもないのですが
厚士は息子との思い出のために誕生日に日本中で花火を上げることに。

作中では何故か物語の終了時に花火が上がるので
その謎が解決するという流れにもなっているのですが
不幸なことにこの花火が原因で高峰隆士はこの世を去ることになります。
しかし厚士はこの日本中で上げた花火をきっと隆クンはみてくれてると
残りの家族とともに見上げてるのがとても感動的だけれども
同時に哀愁が漂うシナリオに仕上がっており
街の好きな人の中でもこのシナリオが好きという人はとても多い印象です。

現実はどうか

正直私自身も親と良好な関係というやつではない。
私自身は高峰隆士みたいなタイプではないが
自分の生き方には未だに葛藤している。
一方で父親はより冷たい高峰厚士のようなタイプの人だった。
何かあっても決して折れることなく徹底的に叩いてくる。
大事になれば直ぐに「誰のお陰で飯を食えてると思ってるんだ」
などと言う今風で言うなら毒親と言う奴だろうか。

今は色々あって全く音信不通状態になっている。
いざとなれば連絡が取れないわけではないが取るつもりもない。

ただこの作品があるせいで最後の人踏ん切りがつかずにいる。
父親と一緒に行った昆虫採集などの記憶は今も忘れない。
色々書きたいことも合ったが書いてて苦しくなったのでここで辞める。

まぁそのぐらいこの作品は私の気持ちに残っているということである。

どこかで自分の父親も、こういう思いを持ってくれているのではないか
ということに脳みそを焼かれているのである。

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