お弁当と母娘
Netflixで、篠原涼子さん主演の「今日も嫌がらせ弁当」という映画を観た。本当は上映しているときに映画館へ観に行きたかった作品なのだけれど、タイミングを逃してしまったのだ。いやはや、便利な世の中になったものだ。
物語の舞台は、東京都八丈島。まだ行ったことはないのだけれど、豊かな自然の情景が穏やかな気持ちにさせてくれる。
優しいけれどすこし風変りなシングルマザーと、反抗期の高校生の娘が、キャラ弁を通じてコミュニケーションを重ねていく、そんな穏やかなお話。
劇中の中のキャラ弁のクオリティに驚いた。私には無縁だった。私の母もお弁当を作ってくれたが、無機質なタッパーにやきそばだけが詰め込まれていたり、アルミホイルに巻かれたおにぎりのにぎり方が甘く、食べているそばからぼろぼろ崩れてしまったり、蓋を開けてみたらお弁当の間に隙間がありすぎておかずが散乱していたり。また、幼少期の遠足のときなど、お弁当の中にフルーツが入っていないことがほかの子と違い、恥ずかしくみじめに感じてしまったこともある。正直なところ、お弁当に関しては良い思い出はほとんどない。
この物語では、学校ではクールなキャラの、口もまともにきかない反抗期の娘に母が「嫌がらせ」として毎日キャラ弁を作り仕返しをするのだが、私が娘の立場であったとしたら、なんと羨ましいことかと思う。それがたとえ多感な高校生時代であったとしても、私は心から喜べる自信がある。嫌がらせ、といいながらも、その手間ひまははんぱなものではない。カッターナイフを使ってのりで文字や人物の顔を細工するさまなど、本当に繊細で見事なものである。ネタを考え、下準備をし、実際に表現していく。それも毎日。愛情がなければできるわけがない。愛情があったとしても、難しい。
この映画は、特に意外な展開などない。予想どおり、こころ温まるラストが待っている。私は、娘の高校生最後の日のお弁当に、涙腺が崩壊してしまった。どれだけ腹がたっても、けっきょくのところ親は娘に愛情を感じずにはいられないのだ。そしてそれはきっと、娘が思っている以上に。
成長して自立すると、つい一人で大きくなったように思ってしまう。それでも、たまにはきちんと感謝の気持ちを思い出したい。不器用でも、どんなに朝早くても毎日お弁当とごはんを用意してくれ、いつでも私の選択する道を応援してくれた母への気持ちを。
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