- 内部監査の「外部委託」をお勧めします -
内部監査は、上場前後の企業にとって、必要不可欠な業務です。
とはいえ、人材採用が困難で長期化する、何人採用したら良い?など、悩ましい問題があるのも事実です。
このようなとき、まずは「外部委託」をご検討いただきたいです。
なぜ外部委託? 外部委託に何を求める?
今回はそのお悩みにお答えします。
(約5分程度でお読みいただけます。)
内部監査を「外部委託」にする意味
内部監査を外部委託にする意味を説明する前に、まずは内部監査の業務内容から見ていきましょう。
内部監査の業務内容は、2つです。
会社の業務の状態を適切/的確に確認・評価する保証業務(アシュアランス業務とも言います)
会社の個々の業務について、確認・評価を行ったうえでの結果に関する説明。その結果を踏まえた改善や予防などについての助言や実施サポートを行う助言業務(コンサルティング業務とも言います)
この2つの業務ですが、挙げてみると簡単そうに見えますが、業務と人間関係のバランスが問われるものです。
例えば1に挙げましたアシュアランス業務で、評価することを一生懸命にやることで「業務の " 粗探し " 」になり、以降内部監査を実施するたびにイヤな顔をされることになりかねません。
また、2に挙げましたコンサルティング業務でも、助言を行うたびに " 現場を知らない人が・・・ " と敬遠されることがあるかもしれません。そのため、よく内部監査の人材を採用する際に、コミュニケーション能力や人当たりの良い方、という人物評価を重視することがありますね。これは間違いではありません。なぜなら、コミュニケーション能力、人当たりが良いことで、会社の業務が適切/的確に遂行されるのであればよいのですが、反対に、これのために本来指摘すべき問題点や、改善したらさらに会社に貢献するであろう業務について " 言いたくても言えない事情 " があるために結局言えずに改善もされない、ということが、会社・事業の停滞につながってしまうからです。
改めて申しあげますと、内部監査の本来の業務は、アシュアランスとコンサルティングです。この2点を遂行することが内部監査です。この遂行のためには、内部監査には次の要素が必要です。
指摘/改善点を見つけ出す洞察力。
会社全体を俯瞰したうえで、個々の業務の改善点や、予想しうるリスクに対する予防策を見つけ出す観察力。
見つけ出した指摘/改善点を、現場(被監査部門)に理解しやすいように説明する説明力。
業務の改善活動に対してサポートを行っていく、協力し合える協調力。
上記の4点は、内部監査の人材にとって最重要な要素であると考えています。そのうえで、コミュニケーション能力、人当たりが良い、という方が内部監査として採用できれば文句のつけようがないのですが、おそらくそのような方を間違いなく採用できるかどうかは、難しいところかと考えます。
そのため、私がお勧めするのは、まずは内部監査を外部委託することです。この内部監査を外部の力に頼ることは、とても合理的で効果的です。
内部監査の「外部委託」に何を求めるか?
内部監査を外部委託するのは・・・と、皆さんが懸念するかと思います。その理由は以下のような感じではないでしょうか。
あくまで「外部」なので、内部(社内)に寄り添ったアシュアランスやコンサルティングをしてくれないのではないか?
東証の審査等で認められないのではないか?
外部の方なので、使い勝手が悪いのではないか?
そのほか、数え上げたらキリがないかもしれません。
ただ、このことは言えます。
「まったく問題ありません」
上で上げました皆さんの " 懸念 " を、ひとつずつ解消していきましょう。
その1
【内部(社内)に寄り添ったアシュアランスやコンサルティングへの懸念】
私がこれまでご依頼をお引き受けしてきたなかで、この懸念をお聞きすることが多かったです。
ただし、私の受託後に光栄にも「あの懸念は、無駄だった」とおっしゃっていただけております。
その理由をお聞きすると、
外部の人間だからこそ、社内では気付きにくいリスク洗い出し・業務効率化のポイントを明確にフォーカスできる。
同業種・他業種を問わず、また他社独自に編み出した業務遂行ノウハウを享受できる。
言葉づかいや立ち居振る舞い等で、 " ハラスメント " を懸念する必要がない。
私のケースでは、上記のような感想をいただいておりますので、私自身、やりがいがあるなぁと常々感じております。
その2
【東証の審査等で認められない懸念】
この点は、このブログでも既出ですが、東証が発行する「新規上場ガイドブック」に次のような記述があります。
ご覧の通り、内部監査をアウトソースすることを前提としている記述ですので、外部委託することは、上場審査に影響を及ぼすものではないと理解できます。
また、人材募集をしてみるとお分かりになるかと存じますが、これに適した人材は、転職市場に多くはいないため、仮に募集したとしても、6か月〜1年経っても人員確保できないケースが多いです。
その3
【外部委託は「使い勝手が悪い」懸念】
これは、おそらく内部監査の業務/部門の、組織上の立ち位置によって懸念されるものかと推察します。内部監査は「公正・独立性を担保」する必要があるため、他部門との普段からのコミュニケーションが図りにくい・・・というお考えが先にたってしまうためではないでしょうか。逆に、内部監査業務担当者も、居心地の悪さを感じてしまっているかもしれません。
このような場合、外部の人間だからこそ、ものの言い方に気を付けたり、多忙な部門には相応の対応をしながら監査を行う、というような「心遣い」ができるというものです。
職場内では、もちろんですが社員の皆さんは上司・同僚・部下・他部門に仕事上「心遣い」をしていらっしゃると思いますが、やはり社内という点で、ふっとしたときに心遣いを欠いてしまうことがあるかと思います。これが外部の人間が相手であれば、程良い緊張感を持って対応されるのではないでしょうか。
また、使い勝手という点で、「芳しくない社内情報」を聞かれたくない、ということもあるかと思います。これについては、そもそも皆さんの会社の「内部監査規程」に「職務の遂行上知り得た事項を他に漏らさないこと」と定めているはずです。これは外部委託にも適用される(又は、業務委託の契約中に「当社の規程を遵守する」旨の条項を入れておく)ので、「芳しくない社内情報」が内部監査に伝わったからといって、社外はもとより、社内でも漏洩することはないです。(*この守秘義務条項は、当然に遵守するべきもので、私も当然に遵守しております。)
さらに、業務上の使い勝手(例:労務管理上の問題)についても、私のケースでは、前もってやるべきタスクの洗い出しと整理、スケジューリングを作成しますので、これに基づいたタスク・スケジュール管理がやりやすく、突発的な事象が発生しない限りは、ある意味で「使い勝手が良い」と言えるのではないでしょうか。
外部委託を含めた内部監査体制の構築の方法
外部委託を含めた内部監査体制の構築は、非常に優しいです。メンバー構成は次のとおりです。
内部監査担当者:内部監査を実際に行う担当者。*ここを外部委託にする。
内部監査責任者:内部監査担当者が行った監査の報告を受け、監査報告書を確認し、代表取締役に報告する。
なおこの内部監査をムリに「部門・部署化」する必要はありません。既出の、東証「新規上場ガイドライン」にも次のような記述があります。
要は、この内部監査責任者を『社長以外の』「内部監査の重要性を認識したうえで主体的に関与」できる社員である必要があります(Mustです!)。例えば管理部門担当の取締役やこれに準じる役員が挙げられます。そのうえで、監査報告のレポートライン先を社長ととするかたちです。
次に具体的な業務内容として、ポイントは「例えば、計画・監査内容の策定や改善方法の決定等といった主要な業務を申請会社が行うこと」です。ここでは監査計画の策定とコンサルティング内容等を申請会社(=IPO準備企業)が行うことになっています。ただ、実際に監査計画の策定、改善方法を決定するには、もちろん担当者と責任者で協議しますので、外部委託からそのノウハウを伝授してもらい、策定・決定することになるのではないでしょうか。むしろ、そのための外部委託なので、ぜひその有効的な活用をお勧めします。
内部監査の「外部委託」について、皆さんの理解が深まりましたでしょうか。
今回の説明で、安易に、手っ取り早く「外部委託」をお勧めしておりません。むしろ外部委託を活用することで、IPO準備企業にとってメリットがあり、そのメリットの度合いは、大小さまざまです。内部監査体制構築の折には、まずは「外部委託」を選択肢のひとつに置き、企業それぞれの切り口でメリットを検証・検討したうえで、外部委託を活用していただけたらと考えます。