【米国株】CDNサービスと企業 ( GAFAM / $NET / $FSLY / $AKAM) をまとめてみた
はじめに
米国株系の記事は初めて書きます @ruwatana です。
本業はエンジニアをしており、エンジニア目線・投資目線の双方から解説ができると良いと考えています。よろしくお願いします。
最近、一部の界隈で盛り上がっていたCDN系サービスを行っている米国市場の企業(特にCloudflare $NET や Fastly $FSLY が多い)に対するTweetがよくTLに流れていました。
普段業務でもCDNを使うことのあるエンジニアの自分が、CDNやエッジコンピューティングとは何なのか、どういったところに優位性や将来性があるのかを普段CDNサービスを使わない方にもわかりやすくまとめてみたいと思います。
⚠️ファンダメンタル分析などの銘柄としての観点での分析は自分は素人なので、その辺についてはご容赦ください🙇♂️
(間違ったことを言っていたらぜひご指摘ください)
CDNとは?
まず、CDNとは何かという話ですが、CDNとはContent Delivery Networkの略で、文字や画像、動画といったメディアなどの各種コンテンツをWebを利用しているクライアント(ユーザー)に素早く届けるための仕組みを提供するものを指します。
字面だけではわかった気にしかなれないと思うので具体的に説明してみたいと思います😅
Webの通信の仕組み
基本的には、Webの通信は利用者(クライアント)と提供者(サーバー)によって成り立っています。
この場合、例えばクライアントが日本からのアクセスで、サーバーが北米にあった場合、物理的距離によって通信に時間がかかってしまいます。
さらに、サーバーの管理者は重いコンテンツもサクサクと表示できるように努めるべきですし、多くのクライアントからの同時アクセスを捌かないといけないため、サーバーを増設したりスペックを増強したりしないといけません。
さらにさらに、ユーザーから直接サーバーへのアクセスが来ることを考慮しないといけないので、不正アクセスやセキュリティの穴を狙った攻撃に対して対策をしないといけません。
そうです。コンテンツ提供者は色々なことを考えないといけないのです。
そこでCDN
ここでCDNが大きな大きな役目を果たしてくれます。
下記の図はリバースプロキシと呼ばれているCDNのメジャーな接続方式です。
CDNには大きく以下のような特徴があります。
・世界各地に構築されたCDNサーバーが全世界の通信を高速化/分散化
・キャッシュによる自サーバ(オリジン)へのアクセス軽減
・CDNを介するコンテンツの各種最適化
・画像や動画をクライアントが必要な品質にリサイズ・最適化
・不正アクセスやセキュリティ攻撃に対する対策
・ロギングによるアナリティクスやアラートの提供
CDNを導入するだけでこれだけのメリットを享受できます。つまり、CDNすごいということですね!
CDNを使えないケースもある
CDNを利用できない場合もあります。
例を挙げるとログインしてユーザーごとに表示が毎回変わるコンテンツといった感じでしょうか。
そういったコンテンツを提供する場合にCDNでキャッシュされてしまうと、どのユーザにも同じものが表示されてしまって個人情報流出みたいなことにもなるので、利用者は注意が必要となります。
例えば、メルカリなどでもこの手の設定ミスによる個人情報流出がありました。
CDNについてもっと詳しく知りたいと思っていただいた方は、下記のページなどが非常に詳しく解説してくれているのでご覧いただくとよいかと思います。
エッジコンピューティングは?
CDNという言葉とともに、エッジコンピューティングという言葉も界隈では先行しているように思えます。こちらはCDNよりも概念が難しいので、簡単にですが解説しておきます。
エッジコンピューティングとは、サーバーを分散して配置し、そこで処理を行うことによって負荷や通信量を分散する仕組みのことです。
したがって、CDNのアプローチもエッジコンピューティングの一部と考えてしまっても良いかもしれません。詳しい方から見ると少し語弊があるのは承知の上ですが、エッジコンピューティングはCDNの上位互換的な位置付けかと思います。つまり、CDNを提供している企業・サービスにとっては、上位互換的なエッジコンピューティングの市場でいかに覇権を取ることができるかといったところが非常に重要になってくると思います。
エンジニア視点での有益な情報を発信されているPodmanさん (@podsay) もこちらのTweetでおっしゃられています。
先程CDNを使えないケースのことを述べましたが、そういったオリジンサーバーへのアクセスを必要とする処理に対しても、エッジコンピューティングでは分散的に処理しようというアプローチとなります。
将来性はあるものの、より実用化されるにはもう少し先かなという印象です。
(というのも、既にクラウドコンピューティングのプラットフォームが十分に普及した状態で、さらなる負荷分散対策をする必要のあるサービスがそんなにたくさんあるのかというのは少々疑問だからです。つまり大企業のような大型の顧客がわんさか乗り出すタイミングがその時になるもののまだ時間がかかるのかなと思います)
エッジコンピューティングについてさらに詳しく知りたい方は、こちらなどが良いと思います。
CDNを提供している企業について
CDNやエッジコンピューティングが何かわかったところで、この手のサービスを提供している米国市場の企業を解説していきます。
基本的にはクラウドサービスを提供しているGAFAMのような巨大企業が手を伸ばしていたり、CDNをメインに提供している中小企業があるといったように、大きく二分することができます。 (中国大手のアリババなんかもクラウドのシェアはどんどん伸ばしてきているようです)
GAFAMのCDN事業について
GAFAM系3社であるAmazon ($AMZN), Microsoft ($MSFT), Google ($GOOGL) に関しては、この比較的ニッチなCDNという市場が企業全体の業績に大きく影響することはすくないと思いますので、解説は割愛します🙇♂️
GAFAMのまとめについては、そよさん (@tokugawa_fund) の下記ツイートに詳しくまとめられていますのでご参考いただければと思います。
GAFAM系クラウドサービスのシェア的には、まだまだAWS (Amazon Web Services) が天下(次点でAzure、GCPと続く)というわけではありますが、国内のエンジニア界隈では既にAWS一強というわけでもなく、徐々にGoogle (GCP / Firebase) にシフトしつつあるのかなという肌感です。
Azureはあまり聞かないですねw(Web系企業ではあまり用いないWindows系のクラウドインフラとして強いのかもしれません🤔)
Googleが手がけるGCP (Google Cloud Platform) と特にモバイルに特化したFirebaseに関しては、AWSよりもかなり直感的にクラウドサービスを利用できるといった自分の先入観ありきですがかなり良い印象があります😅
こういう時は大体Google Trendsを使ってトレンドを客観的に追うのですが、下記を見るとちょっと検索ワード的にこれで正しいかは別として、今後トレンドが逆転する未来なんかもあり得ると思えますし、そうなってくるとシェアや業績への影響も近い将来出てくるのかなと思っています。
Cloudflare ($NET)
少し、横道に逸れてしまいましたが、ここからCDN事業メインの企業のお話に移ります。
まずは、Cloudflare ($NET) ですね。
Cloudflareは、CDNサービスを提供しているSaaS系の企業です。
利用プランが、無料・Pro・BusinessそしてEnterpriseといったように分類されていて、上記で述べたようなCDNの特徴やメリットをプランによって使えたり使えなかったりするという課金モデルを取っています。Enterpriseに関しては、得意先との間で金額や性能などをチューニングをしているという感じですね。
株価的にも、2019年のIPOからじわじわと上げて行っていますね。今年に入ってからは少し停滞気味なのかもしれません。
Cloudflareの最大の強みは、フリーミアムモデル(無料プラン)を採用している点です。
スタートアップなどの中小企業を含めた全ての利用者は気軽に利用検討を開始することができ、実際に利用して物足りない/もっと機能を享受したいとなった場合に課金プランへ移行するということが可能となっています。しかも移行後もシームレスに設定まわりは使い回すことができるので設定やシステム移行の作業コストがかかりにくいというメリットがあります。
こうしたモデルはZoomなどの他のSaaSや、ソシャゲとも一緒ですねw
無料で客を囲い込んでリーチを伸ばし、必要な人には課金プランにてリッチな機能を提供するといった点を活かして、CDNのシェアを獲得し続けているというところが大きな特徴かなと思います。
Fastly ($FSLY)
みんな大好きFastly ($FSLY)ですね。
最近米国株投資を始めた自分にとっては、なんでそんなに騒がれているのかあまりよくわかってないのですが(笑)、とにかく株クラスターでは人気の銘柄のようです。
FastlyもCloudflare同様、CDNサービスをメインに行なっている企業となります。
Fastlyの場合は、従量課金制による課金プランとなっています。
トライアル利用としては、$50までのトラフィックにおいては無償で利用すること自体はできるようです。
株価はというと、2019年のIPO以来、2020年から2021年にかけてどんどん上げて行っています。これが皆さんが興味を持たれた大きな理由なのかなと考えておりますw
しかし、最近の決算にてガイダンスが下回り大きく下落したのは記憶に新しいかもしれません😇(そしてこのタイミングで謎に買いを入れてしまったのがアカウントがこちらですw)
Fastlyは名前からもですが、高速性を特に重視しているという面で他者との差別化を図っています。
短時間動画のストリーミング配信サービスのTikTokがFastlyのCDNを利用していることが有名です。TikTokは次から次へとシームレスに動画が読み込まれてすぐに再生されますよね。その裏側はFastlyのCDNを利用して実現しているのです。今後、5Gが普及していくとTikTokのような高トラフィックの新規サービスが次々と生まれる可能性もあるため、こういった戦略による将来性は少なからずあると考えています。
また、こちらのツイートも興味深いです。
CDNではありませんがエッジコンピューティングによるサーバーレスファンクション系のCompute@Edgeにおけるコールドスリープタイムが他社の同様のサービスとは単位すら違うといった高速性を実現しているようです(すごいですね👀)
Akamai ($AKAM)
最後はAkamaiです。
Akamaiも同様のCDNをメインとしている企業となります。
Akamaiに関しては、かなり古くからある老舗の企業となっていて、しばらくはCDN事業としてのサービス提供を行っておりましたが、昨今のクラウドコンピューティングやエッジコンピューティングの流れもあり、CDN +α というところにも段々と手を伸ばしていってはいるようです。
今まで蓄積してきたノウハウを武器にしているという感じですね。
AkamaiのビジネスモデルはFastlyに近いですが、基準となるようなPricingの公表はなく、基本的にはSignUpしたのちにクライアントによって価格帯系などを別個で決めているようです。(30日間のトライアル利用は可能)
株価的には緩やかに上昇を続けているということで、グロース株というよりはバリュー株といった立ち位置かもしれませんね。
CDNサービスのシェアについて
ここまで、ざっとCDN事業を行なっている企業を紹介してきましたが、結局のところシェアはどうなの?というところかと思います。
こちらもPodmanさんに教えていただいたのですが、W3Techsというサーベイ会社によるレポートでは、圧倒的にCloudflareのシェアが高いということがわかります。しかも、飽和せずにどんどん他からシェアを奪いつつ成長させているということがわかります。この辺にCloudflareのフリーミアムモデルを生かした将来性をひしひしと感じることができますね!
また、AmazonのCloudFrontやFastlyは停滞しており、Akamaiのシェアは年々落ちて行っていることもわかります。GCPやAzureのCDNのシェアも気になりますが、こちらでは見れないようでした🥲
ちなみに、こんな時にもGoogle Trendsは役に立ちます。シェアにも相関がありそうですね👀
Cloudflare vs Fastly
グローステック株という両者における比較は、おそらく皆さんも気になると思います。
こちらは、2020年7月の記事ですが、Seeking Alphaの記事非常によくまとまっているのでこちらを噛み砕いて説明したいと思います。
・CloudflareとFastlyは現在市場で最もホットなクラウド株だけど、アプローチはやや異なる
・Cloudflareは260万人の顧客を持ち、提供するダッシュボードのUIにより学習の敷居も低く、中小企業含めた全ての顧客にアプローチしている
・Fastlyは主に大企業のIT部門を顧客としており、エッジコンピューティングの分野において世界最高を目指している
・事実、エッジコンピューティングの分野においては、Fastlyを追ってCloudflareがWorkersというサービスをローンチした過去がある
・エッジコンピューティング系クラウド企業はコロナの影響を受けているように見え、バリュエーションは大きく高騰しているので注意が必要
・Cloudflareは過去2年間でFastlyよりも早く成長している(FastlyがYoY37%なのに対し、CloudflareはYoY48%)
・これは、Cloudflareの大衆的なアプローチによる勝因が大きい
・Fastlyの今後3年間の成長率は30.9%なのに対し、Cloudflareは32.2%と上回ることが予測されている
・粗利益率で見てもFastlyは57.6%に対し、Cloudflareは77%と勝利
・この要因は、Cloudflareのデータセンターネットワークが強固で成熟していることが大きく、グローバルなプレゼンスはFastlyより遥かに大きい
・逆にグローバルネットワークにおいては、FastlyがCloudflareを追っている状況で粗利益率に差が出てきている
・Fastlyの売り上げ継続率はCloudflareを大きく上回っているが、これは顧客のほとんどが大企業で解約率が低いのが由来していそうだが、市場が飽和すると鈍化しそう
なるほど興味深いですね。差別化は図られているけど、結構市場価値的には、Cloudflareが優勢という感じでしょうか。
さらに、投資についての言及です。
・Fastlyを86ドルで購入し10年間保有した場合のリターンは年平均で6.36%
・Cloudflareを35ドルで購入し10年間保有した場合のリターンは年平均で11.44%
・SeekingAlpha社のハードルレートは9.8%なのでFastlyは現在の株価では買う価値がない
・Cloudflareも僅かに上回っているだけなのでそこまで買い推奨でもない
・エッジコンピューティングの分野は5Gの出現によって今後数十年で大幅に成長するだろう
・この市場に投資するという意味では、すぐCloudflareを購入して保有するというのがよいだろう
いやいや、もうCloudflareは80ドルだよというツッコミは無しでお願いします😅
という意味では、どちらも見込めるリターンは現在だと同じくらいかもしれないので、どっちにも張っておくみたいな戦略が良いのかもしれませんね。
自分はまだ $NET には入れていないので、どこかのタイミングで入りたいと考えています。
とはいえ、この市場においてはGAFAMに淘汰される or 吸収・提携などの様々なリスクがあるので投資は自己責任でお願いします。
また、エヌさん (@enu_beat) のTwitterでの解説もとてもわかりやすいので、紹介しておきます。
まとめ
長くなってしまいましたが、以下まとめです。
自分はCloudflare、Fastlyの双方を打倒GAFAMで応援しています!
・CDNはContent Delivery Networkで様々なコンテンツを高速に配信する仕組みを提供している
・エッジコンピューティングは分散的に処理することで負荷を分散する仕組み
・エッジコンピューティングはCDNの上位互換的立ち位置になりそう
・CDN事業はGAFAM / Cloudflare / Fastly / Akamai が中心となっており、新鋭のCloudflareやFastlyに注目が集まっている
・Cloudflareはフリーミアムモデル(無料)を生かしてシェアを広げており、すでに8割ほどのシェアを獲得している
・Fastlyは高速性を生かして優位性を図っており、TikTokなど新しい高トラフィックのサービスとの親和性が高く5Gの普及による将来性はある
さいごに
いかがでしたでしょうか。
今後は、こういったエンジニア視点での企業や業界の分析をTwitterやnoteにて配信していければと考えています。
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