【Q&A】デッサンについてのお話
こんにちは、るぅ1mm(るぅわんみりめーとる)です。4月になりましたね!昨日外に出たらたんぽぽが咲いててうれしくなりました。あの黄色は見ると元気になりますね。
ちょっと時間が空いてしまいましたが、トークイベントの際にいただいたご質問に答えさせていただこうと思います!
今回、ご質問というよりは、ご質問の中で気になった部分を解説させていただこうと思います。
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ご質問
ご質問ありがとうございます。絵を好きだと言っていただけて嬉しいです。
もう少し長い文章で大事なことをたくさん書いてくださっていたのですが、
デッサンのお話がしたかったので一部抜粋させていただきました。
今回はデッサンと漫画についてお話させてください。
■「デッサンが狂っている」とは?
実は、昨日デッサンのことについてTwitterで話していたときにこのご質問を思い出したので、引用させていただきnoteにまとめようと思った所存です。
まずよく言われる「デッサンが狂っている」という言葉、これは
無い言葉です。
「全然好き!」とかそういう言葉だと思ってください。
ニュアンスは伝わりますが、「狂っている(おかしい)」と強い否定的な言葉をかけているのにもかかわらず漠然とした言葉で否定するのはどうかと思います。
出された料理に「なんかフツー。」とか言ってる感じですよ。やでしょ!こんなこと言われたら。
なので、ご質問の中の「俗に言うデッサン的な正しさ」という言葉も少し違ってきます。
ご質問者様も「俗に言う」という言葉を付け足しているあたり、「デッサン」という言葉がそういう風に使われている、というのがわかっていらっしゃるのでしょう。
くやしいですッ!違うッ……違うッたら!
では、みんなどのような意味で「デッサンが狂う」という言葉を使っているのでしょうか。
・形が崩れている。
・パースが取れていない。
・目の錯覚などがうまく使えておらずちぐはぐに見える。
・光や影のバランスや比率が現実的ではない。
おそらくこのあたりでしょう。一言でまとめると「写実的ではない、現実ではありえない」という意味だと思います。
では、「写実的な絵=現実で見たものそのままである」ということに関して考えてきましょう。
■デッサンは現実をそのまま描くものなのか
答えを先に言うと
違います!
えっ!違うの?と思ったでしょうか。
だってそもそも画用紙と鉛筆しか使わないんだよ!?
「そのまま表現する」なんて無理じゃん!!!!!!!!!!!!
デッサンって嘘をつきまくります。しかも3次元のものを2次元にするんだからもう何もかも違うよ。
画用紙は真っ白です。でも現実世界のもので真っ白な空間ってほとんどないですよね。
色も空間もないところに、白と黒のバランスだけで目の前の物を表現する、それがデッサンなのです。
嘘をつかないと描けません。このアボカドも大きくして見たらわかると思いますが、ツブツブのとことか全然描いていません。
だから「写実的である、現実的である」ということを「正しい」とするのならば
デッサンというものはそもそも間違っている
ということになってしまいます。
だから「デッサンが正しい」「デッサンが狂ってる(間違っている)」という言葉が無いのです。
(おまけ)じゃあなんでデッサンをやるの?
もっと詳しく知りたい方はこれを読んでみましょう!デッサンは楽しいですよ。
■「デッサン」と「漫画」
ご質問内容に戻りましょう。
じつは、ここは違うのです。むしろ私は
『デッサンで勉強したことを使って表現したいものを描いている』のです。
先ほど書いた通り、デッサンとは「白黒の世界だけで描きたいものを表現する」練習のことです。
それは応用をすることで「自分が描きたいと思ったものを2次元の平面の中で表現する力」になるし
「自分が伝えたいことを他の人に視覚的に伝える力」
になるのです。
デッサンの考えがしみつくと、平面的な部分に関わらず、漫画の物語の構成にも役立ちます。
「こうしたほうが分かりやすいだろうな」「ここは省いたほうが読みやすいだろうな」など、
「人に伝える力」が鍛えられます。
これは私がデザイン科としてデッサンを学んだからかも知れません。私はデッサンで学んだことをこうやって使っています。
つまり私は、表現したいもののために、デッサンの知識を使っています。
デッサンを無視なんてとんでもありません。デッサンが下地にあるのです。
■「デッサン」を漫画でどう使っているか
実際にどんなふうに使っているか、例をあげてみます。
例えばこのシーン、
まず「王子ちゃんが何かを隠していることによる不穏な空気」
そして「それを打ち壊す、王子ちゃんの喜び」
が私の表現したいことです。
(こうして「自分が何を表現したいか」を確認しながら描けることもデッサンを学ぶことの強みです。)
そして、そのために
前半の不穏な部分は
・コマを狭くする
・暗い背景を使う
・主人公との温度差をはっきりする
・王子ちゃんの表情をあまり見せないようにする
後半の喜びの部分は
・感情的に見せるためにコマを大きく使う
・暗い→明るいに移行するためのわかりやすいグラデーション
・白と黒のコントラストをあげてはっきりした画面にする
・"先ほどまでぺらぺら話していた主人公が黙るほどである"という対比をつけることで喜びを表現
こういうことをしています。
絵や演出、コマの大きさなど、小さな場所にたくさんデッサンの考え方がつまっているのです。
■「生き生きした絵」
よく言っていただけます。とてもうれしいです。
これはおそらく「演出」のことを指しているのではないか、と思います。
デッサンで「嘘をつく」と言いましたが、嘘にほんとを混ぜるのが演出です。
デッサンで上手な嘘のつき方を学ぶと、逆にどこを崩せば嘘らしくなるのか、ホントらしくなるのか、過剰になるのか、それがわかるようになります。
演出は漫画にもイラストにもとても役に立ちます。というかほぼ演出で描いているようなものでしょう。
魅力的な絵を描くには演出がとても大事になってきます。それを意識的にできるようになるデッサンはとても便利なものではないでしょうか。
■まとめ
「自然さ」が好きです。でも「描く」という行為にはどうしても「加える」「引く」という動きが発生します。取捨選択をして自分で再構築するものに「自然さ」という言葉をあてがうのは少し違うかもしれませんが、私の絵を見たときに、温度や匂い、湿度、息遣い、風や空気を伝えることができたらいいなと思っています。
それを目で見るだけで、ページを捲るだけで伝えられる、ということが私の求める「自然さ」です。
そのためにデッサンで学んだこと、もちろんそれ以外で考えていることや感じていることをたくさん漫画につめこんでいます。
私の漫画の根源は「感情」や「救い」、「人間関係」だと思っていますが、それをより生き生きと、生々しく伝えていけたらいいなと思います。
それでは、ご質問ありがとうございました!気になったらぜひ漫画も読んでください。
2024.04.01 るぅ1mm