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「僕、はまじ」(著:浜崎憲孝)を読んで

 本日のことですが「僕、はまじ」という本を読み終えました。
 こちらは、さくらももこ著「ちびまる子ちゃん」の登場人物のひとり『はまじ』のモデルとなったさくらももこ先生の同級生、浜崎憲孝さんの自伝です。

 20年ほど前に同タイトルで出版されていましたが、文庫本になり、偶然に出かけた先のコンビニで見つけてそのまま買いました。

はまじの人生は波乱万丈!

 ちびまる子ちゃんのはまじを思い浮かべながら読みましたが、マンガの中の姿とはだいぶ違うことがよく分かりました。
 ちびまる子ちゃんの中で描かれている小学3年生のはまじは、おふざけやものまねが好きなクラスのムードメーカーです。小学生の頃、クラスに1人。最低でも学年に1人はいるような男子児童です。はまじを見て「こんな奴いたなぁ」と思った人も多いと思います。

 しかし、現実のはまじは違いました。

マンガとは違う小学生の頃

 小学3年生の時は、担任の戸川先生が今では考えられないような厳しい教師で(昭和の頃の話ですが)、ビンタもしていました。戸川先生の厳しさから来る恐怖から逃れるために水泳の授業を何度も抜け出し、それが原因で不登校になったりしています。運動会では児童にウイスキーを飲ませる(!)という、当時でもアウトなことをやっています。今の時代にこんな教師がいたら、全国ニュースになってものすごいバッシングがくるでしょう。
 マンガでは知的で優しい戸川先生ですが、実際はとんでもないアウトローでした。
 4年生になって担任が変わってから、それまでは恐怖の象徴だった水泳の授業も受けられるようになり、不登校ではなくなりました。しかし両親の離婚と母親の再婚相手である義父と確執が生まれたりと、波乱に満ちた小学生時代は続きます。
 高学年になると楽器に興味を持つようになったりと、これまたマンガにはないリアルな年頃の子供であるはまじがいました。

中学生はさまざまな目覚め

 そして中学生になると、ブラスバンド部に入ってホルンを担当することになります。しかし楽譜が読めず、ホルンを楽譜通りに演奏できなくて、他の部員の旋律を乱してしまったりと、迷惑をかけてしまいます。
 しかし、そこで逃げ出そうとせず「上手になって迷惑をかけないようにしよう」と猛練習をして「なんとか大会を成功させたい!」と思うようになります。
 大会の結果は残念なものでしたが、はまじは

「迷惑をかけるのが迷惑をかけないように練習すればいいのだ。そして吹けるようになればいい。」

「僕、はまじ」p.142-p.143より

 とブラスバンド部を続けます。
 中学生にしてここまで考えて実践しているのは、素直にすごいと思います。大人でもこれを考えはすれど、実践するのは難しいのではないでしょうか?
 自らを反省する機会を、はまじが与えてくれました。

 他にもエロ本に夢中になったり、友達と海で泳いだりお泊りをしたりと、思春期らしい出来事を経験していきます。

高校を中退して仕事をして上京して

 卒業後は高校に進学しますが、そこからは大変なことになっていきました。
 なんと高校1年の10月中旬で退学してしまいます!

 あまりにも校風が厳しすぎて、それについていけなくなったためです。読んでいても「刑務所じゃないか?」「日生学園(浜田雅功の母校。かつて超絶スパルタ教育が行われていた)じゃないのか?」と思うほどでした。
 僕なら3日と持たないでしょう。自衛隊に入る方がずっとマシに思えます。

 高校を中退した後は、鉄工所に勤めたり義父の仕事を手伝ったりしていましたが「お笑い芸人になりたい!」という夢を持って一度、上京します。
 日々の生活をするために四畳半のアパートに暮らしながらアルバイトをして、お笑い芸人の西川のりおに弟子入りをして断られます。

 夢を見て上京したのに、夢をかなえることができなかった。
 なんだかドラマを見ているような展開でした。

通信制高校を卒業!

 それから「高校を中退したの?中卒に仕事は無いよ」とアルバイトを探している時に言われた言葉を思い出して「高校を卒業したい!」と思い、通信制高校に通うことになります。
 ラジオの高校講座をテープに録音して、月に2回ほどスクーリング授業を受けてレポートを出して単位を修得していきます。後に静岡に戻って、仕事をしながら通信制高校に通い続けますが、そこで仕事と勉強を両立させることの難しさにぶち当たります。
 結果として一度、通信制高校も辞めてしまいます。
 しかし、はまじはそこで終わりにしたりはせず、3年次に復学してその後見事に通信制高校を卒業しました。

 この辺りは、普通に普通科の高校に進学してそのまま大学に進学した僕とは大違いです。しかし、はまじの気持ちは分かるような気がしました。
 僕も大学卒業後に就職に失敗し、3年ほどフリーターをしながら就職活動をしていた時期があったためです。挫折したときの辛い気持ちは痛いほど分かります。なので読んでいて自然と「はまじ頑張れ…!」と応援していました。

はまじが教えてくれたこと

 この本ではまじは「人生はなんとかなる」「逃げだしたくなっても、目の前のことから逃げちゃいけない」ということを教えてくれたような気がします。

 人生は確かに色々と大変な事や辛いこともあります。それは僕も身に染みて分かっているつもりです。
 しかしながら、人間とは弱い生き物です。大変な事や辛いことからは逃げ出したくなるのが人情。人は楽な方へと流されやすいものです。

 だけど、それではいけない。

 人生はなんとかなる。いつだってやり直すことはできる。だから逃げ出したくなっても、目の前のことから逃げちゃいけない。
 はまじも紆余曲折あったけど、ちゃんと高校も卒業できた。
 だから大丈夫!!

 はまじは自分の人生を振り返りながら、そう思ってペンを走らせたのだろうと思いました。


(追伸)
 この本を読み終えてからふと「今のはまじこと浜崎憲孝さんは何をしているんだろう…?」と思って調べたところ、2023年に自宅アパートでお亡くなりになっていたことを知りました。
 まだ存命中だと思っていただけに、正直驚きを隠せませんでした。
 叶うことなら、一度会ってみたいなぁ…と思ったことがあるだけに、それが叶わなくなってしまったこと。まだ57歳という若さだったことが悔やまれてなりません。
 謹んでお悔やみ申し上げます。

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