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電車で痴漢に遭った時の話

昨日YouTubeを見ていた時、
おすすめに出てきた動画を何の気無しに再生してすごく不思議な気分になった。

見ていたのはごく普通の教育系の動画だったのに。

驚きや恐怖や嫌悪感や知的好奇心みたいな、
いろんな感情が混ざったような不思議な気分。

全然そんな感覚に陥るような内容ではないよね…と思っていた。

なんでだろう…と、
ほんの少しの間思いを巡らせてみた。

すると程なくしてフラッシュバックのように一つの記憶を思い出した。


「京王線で痴漢してきたアイツだ……」


その体験を通して感じた、あの複雑な感覚を知ってもらいたいのでちょっと書いてみる。 


◆登場人物

 ◇自分
 20代半ばの男性 平均的な体型

 ◇痴漢
 およそ20代半ばの男性 かなり大柄
 身長は自分より少し大きいくらい
 体重はおそらく100キロオーバー
 デザインヒゲが生えていた

そうなんです。加害者♂被害者♀のパターンではなく、
どちらも♂、で、おそらく加害者はゲイのパターン。

…でも!

エロ目的で開いた人もちょっと最後まで読んでほしい…!

どれだけ卑劣で怖いことなのか、改めて気づいて欲しい…!


それはいつも通りの会社からの帰宅途中のこと。
少しだけ残業した日だったので帰宅ラッシュもそこそこ落ち着いた頃の帰宅だった。

自宅最寄駅に向かう京王線に乗り込んだときには
シートはポツポツ空いていて、何人か立っている人がいるくらいの混み具合。

自分はドアの脇、シートの一番端のパネルに背中をもたれるようにして立つ事にした。乗降ドアは自分の左側にくる位置関係。

程なくして、下を向いてスマホをいじっていた自分の視界右半分に
かなり大柄な男が現れて右手で吊革を掴んだ。
荷物は何も持っていなかった。

その時点では特に何も思わなかった。

京王線始発駅の新宿で乗り込んだので発車まで数分間待った後、
電車はゆっくりと出発した。

京王線は始発の新宿を出発すると隣駅の笹塚まで
長い地下区間をゆっくり蛇行しながら進んでいく。

最初のポイントを通過し少し揺れた時、
大男の左手のひら左から小指までくらいの幅が自分の右太ももに触れた。

揺れの勢いで触れちゃうなんて、まあよくある事だけど、違和感を覚えた。

普段そういうことがある時、電車が揺れた後
一旦触れた手はすぐ離れる。

でもその痴漢の手は自分の太ももにうっすらくっついたまま。

自分はスマホから目線をあげ痴漢の顔を見てみると、
僕の視線には一切気づいていない風を装って
異様に真っ直ぐ乗降ドアの窓を見ていた。

地下区間を走行中の真っ暗な電車の窓を。

ここで初めて、これは痴漢なんじゃないか?と思い始める。

その後細かい揺れが起こるたびにどんどん痴漢が自分に触れている面積が増えていく
最初は手のひら左側から小指までくらいの幅だったのが薬指まで、中指までとじわじわ侵食してくる。

この頃にはもうこいつは痴漢だと、疑念が確信に変わっていた。

その時のポジションを整理すると、
自分がドアの脇にある立つスペースに居て、
背中はシート端のパネル部分
左側には壁
右前方は大男が立ち塞がっている

逃げ道がない

現実的に逃げ道が無くはないが、
感覚的には
「やばい。コーナーに追い詰められている。逃げ道がない。」
という恐怖。

しかも相手は自分の倍くらい体重がありそうな大男


一方ですごく冷静に状況を見ている自分もいた。

「へぇ、これが痴漢の導入の手口なんだ」
とか

「大男だけどマッチョではなくてでぶって感じだから仮に戦わなきゃいけなくなっても負けないんじゃないか」
とか

そんな恐怖の感情と冷静な分析があったから
今でもかなり克明に記憶に残っているんだと思う。

そして

痴漢の手のひらの半分以上が自分の太ももに触れた頃、
どうにか身をよじって痴漢の手を完全に太ももから離すことができた。

でも痴漢は諦めずまた太ももに手を当ててくる
もう揺れのタイミングとかは関係なく一気に手のひらの8割くらいの範囲で触れてきた。

この頃には複雑に入り混じっていた感情も恐怖と嫌悪感が多くを占めるようになってきていた。

「もうやばいヤツの小指が局部に触れそう」

と思った時

電車は地下区間を抜け笹塚の夜の街並みや環七を窓に映し始めた。
ここまで来るともうあと十数秒で笹塚駅に到着する。

アナウンスが降車ドアは右手側だと案内した瞬間、

痴漢の前を横切るように、
周りに立っていた人を少しおしのけるような形で(それについては申し訳ない)
自分が立っていた逆側の降車ドア側に移動した。

まさに間一髪のタイミングだった。

自宅最寄駅では無かったが、避難のために一旦笹塚駅で降車をする事に成功。

一瞬振り返ると、降車側とは逆のドアに向かってに立ち尽くしたままの痴漢の背中が見えた。

今調べてみると、新宿ー笹塚間は所要時間が5分となっているが、
この日に限ってはその5分が20分くらいに感じた。


実際に体験してみて思うことは、
痴漢の議論になった時
声を出しましょう、とか、周りに助けを求めましょう

みたいなことが言われるけど

すごく難しいことなんだっていうことが分かった。

だっていきなりガッと触られたら
「やめろ」
って言えるかもしれないけど、

痴漢導入のじわじわ触れてくる部分で「やめろ」って言ったら自分が変なヤツみたいになるんじゃないかって思うし、

少しずつ感情を揺さぶられた上でパニック状態になってから始まってしまったらもう逃げたり抵抗するのが怖くなっているから。

事実、自分の体験の中でも、今冷静に振り返ると逃げ道は実質あるじゃんと思うような状況にもかかわらず
「逃げ道がない」っていう感覚にまでは陥ってた。

改めて、この経験を通して痴漢って卑劣な犯罪なんだなと思う。

最初に書いたYouTuberはおそらく僕に痴漢してきた本人なんじゃないかと思うくらい、体型とかヒゲとか顔の作りが似てるのだが、

発信者として堂々と人前に出て色々教えたり尊敬されたりしているのをみて、
もし仮にこの人があの痴漢だったなら心から許せないと思う。非常に大きな嫌悪感を抱く。

数年前の記憶、しかも未遂だったにもかかわらずこれ程克明に思い出してしまうほど心に大きなものを残す出来事なんだから。

痴漢は、なくなってほしいと切に思う反面、
僕が体験したような高度な心理的技術を駆使された時に
被害者一人で立ち向かうのは非常に難しい、本当に卑劣な犯罪なんだなと痛感した体験だった。

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