でぇれぇ、やっちもねぇ/岩井志麻子/角川ホラー文庫
傑作「ぼっけぇ、きょうてぇ」から11年。岩井志麻子先生のホラー小説が帰ってきた!^ ^
といいたい程には岩井先生の作品がスキなワタシ。
超期待して読み進めた。
「ぼっけぇ〜」よりさらに気持ち悪い表紙。短編が表題作含め四遍収録されている。(全て書き下ろし!✨)
「ぼっけぇ〜」とはまた違った怖さ、理不尽さ、思考を揺さぶられる面白さだった!!
表題作もスゲー面白かったけど、私は「カユ・アピアピ」も好きだ。
カユ・アピアピは、現地(シンガポール)の言葉で炎の木と呼ばれる。木が燃えているのではなくて、集まってくる蛍の点滅で燃えているように見える。(よっぽど樹液がおいしいのかな?🤔)
主人公は、岡山の名士の家に生まれた姉妹の妹、道世。成績優秀で家は裕福で、言うなれば何にでもなれたはずなのに、彼女は東京の女学校に行って、作家になりたい夢を抱く。
念願かなって東京の女学校の寮に入った年に関東大震災が起こる。やがて彼女は流行作家の男(後に夫)と共にシンガポールに移り住む。
病弱を理由にして働かず遊び暮らしていた母のようにはなるまい、と思って勉学に勤しんでいたのに、まさか母のような人生を送るようになるとは。道世はそんなふうに生きてきた人生を嘆く。
異国で熱病に罹った道世に、夫が岡山のお父さんからの手紙と言って読み上げたその内容は嘘か誠か…。
あらすじはこんな感じで、全編を通して、一番怖いのは人間という、言うなれば手垢がついたテーマではあるんだけど、物の怪が徘徊し、死んだ者の気配が濃厚にする岡山の風土で、結局はそれらを凌駕し最後に鬼となるのは人間そのものだと作品世界は訴えてくる。
表題作を含め全て会話分(それがまた怖いんだ!^ ^)で幕切れなのも面白い試みだと思った。
表題作のラストシーンには戦慄するが、同時に悪どいブラックユーモア盧ようでもある。そしてそれは全編に共通する。
面白い読書体験で、ホクホクである。