村上春樹「街とその不確かな壁」、猫町倶楽部のオンライン読書会用メモ
猫町倶楽部のオンライン読書会に初めて出席しました。オンでもオフでも、本について誰かと音声で語り合うのは初めてで、もっと意見を戦わせ(?)たかったのでなかなかもどかしい部分もありましたが貴重な経験でした。
春樹については、メモにも書きますが、謎を解き明かしたり白黒つける必要はあまりない気がします。というか私はよく難しいことは分かりませんので、650ページを読む間(3日くらいかかりました)、小説の中で「生きる」ことができて良かったです。宮部みゆき「三島屋変調百物語シリーズ」ではないですが、読んで読み捨てでいいと思ってます。そこだけは強調したいです。
では、読書会で発言できるようにメモしておいたものをここへ残しておきます。
=====
・村上春樹はたぶん、月並みだけど「ノルウェイの森」から入って、「何だこれ、なんか気持ち悪い」と思ったが、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」で胸を鷲掴みにされ、全部読んで今に至る。好きなのはダントツで世界の終わりと、羊。嫌いなのはノルウェイ。
●春樹で嫌いなところ
どれも良く言われるが
・不要なセックス表現。エロは嫌いじゃないが、不要なまでに執拗かつ、楽しんでる感じがしないし、上の空でやってることが多いので、女性の立場としては失礼だと思う。
・若干、女性蔑視的。「東京奇譚集」で特に感じたが、執拗に「醜い」とか書くところ。
・音楽のうんちく。要らない。
●「街とその不確かな壁」で好きなところ
・登場人物と一緒に暮らせる。家の中。間取りまで目に浮かぶ。騎士団長のアトリエ。ねじまき鳥の井戸の底。
・何が起きなくてもいい、登場人物と一緒にいたい。電車で読んでて、降りる駅になっても現実に戻れず「なんでこんなところにいるの?」と思ったことが何度もある
・なので、小難しいことは基本的にどうでもいい。
・「世界の終わりと…」が世の中で1番好きな本。特に、壁の中の街が好きだった。影はどうなったのか、切なくて仕方なく、数十年再読できなかった。今回、壁の中の世界でまた生きられて本当に幸せだった。
・自分の本体、本質とは? とかがたぶんテーマなのだろうが、難しいことは私にはあまり大切ではない。結論を言えば、壁の中が本体。外が影だと思う。でもそれはどうでもいいこと。イエローサブマリンの少年も、「入れ替わることもある」と言っている。
●嫌いなところ
・1章の女の子との恋愛場面。興味ない。恋愛小説自体興味ないからかも。
・書き方が若干、おじさんくさい。無理して、若い頃のキラキラ感を書こうとしている気がした。
●印象に残ったもの
・「世界の終わりと…」との違い
夢読みが読むものが、一角獣の頭骨だったのが、卵みたいなものに。頭骨=過去、卵=未来 と読むのは穿ち過ぎか。
・サブマリンの少年。壁の外の世界と「心がつながっていない」。壁の中の世界しか行き場がなかったように思えてつらくてならない。本体を守るため、壁の中へ行くしかなかった。最近、こういう子は多い。周囲と違うだけで、居場所がなくなる。違っていても、世界に1人だけの大切な存在。壁の外へ出てくることはあるのか。幸せになって欲しいと心から思う。
●残った謎
・女の右側 「決して目にしてはならぬ世界の光景」
・「この世界にはまた、簡単に説明してはならないこともある」。好きな本に「人生の神秘を解き明かそうとして、いまという現実をむだにしてはいけない。神秘が隠されているのには、理由がある」という一節があるので何となく納得。
・主人公とサブマリンの少年がもともと一つ?
・長い葱