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『響け!ユーフォニアム3』13話 感想 超えていけ リコーダ!

正直、何を書いても野暮だと思う。そう思えるほどに素晴らしい最終話でした。
書くべきことがあるとしたら一つだけで、

京都アニメーションの皆様、そして本作に関わられた全ての方々、
本当にありがとうございました。




これで終わってもいいのですが、そうは言っても書かないと収まらないものもあるので書かねばならない。蛇足。

全てが詰まっていた13話

全国大会周辺の出来事がダイジェスト形式で詰め込まれた13話。
情報の密度が濃過ぎて、とてもじゃないが全部は書き切れない。30分とは思えかった。

『響け!ユーフォニアム』、そしてダブルリードの継承。
大吉山での『愛を見つけた場所』。
北宇治吹奏楽部全91人の顔と名前が映し出される演出には、部員ひとりひとりにそれぞれの物語があると言うこだわりが最後に感じられた。
小笠原元部長の登場もサプライズだった。今回の会話を見ていても晴香と久美子は絶対相性いいと思うんだよな。同じような苦労人だし。
そして今までの想い出が詰まった演奏パート。『一年の詩』にのせて3年間の記憶が蘇る。ソリに向かう麗奈の決意の眼差し。力が入る真由。それを聞く久美子の複雑な表情。クライマックスでの部員それぞれの表情は、正にこれまでの集大成といった力の入った表情だった。
演奏が終わった途端に涙を浮かべる葉月には、この舞台にかけてきた情熱と、やり切った達成感があった。
そして結果発表の瞬間、喜びに湧く一同。中でも印象深かったのは、一年越しの後輩の栄誉に涙を流す優子と、関西大会の無表情が嘘のような真由の嬉し泣き、そして信じられないとでも言うかのように惚けた様子の麗奈がこぼした「嬉しくって死にそう」の言葉だった。
その後の様子は記録写真のような形でエンドロールと一緒に流れてきた。
ステージの裏で亡き妻を想って涙を流した滝昇だが、生徒の前で流した涙はきっと彼らを想ってのことだろう。久美子を抱きしめる美智恵先生からは「よくやったぞ、黄前〜!!」と声が聞こえてきた。こちらもすっかり雪解けした様子の真由と奏。久美子・麗奈・真由での3ショット(真由がセンター)、カルテット+秀一での記念写真、秀一を久美子の方へ押しやる葉月がいいやつすぎる。
そして時は過ぎ、久美子が先生として北宇治高校の新入生を迎える(黒沢ともよさんの演じ分けがすごい)。イタリアンホワイトのヘアピンは今は久美子のもとにある。この辺りの描写はもう少し欲しかったのですが、円盤特典とかになるんでしょうか。(Extra Episode #5「君へのアモローソ」はそんな気がする)
そして色々考察を眺めていると、どうやらこの黄前先生の場面はちょうど2024年の春、つまり今年の4月の出来事であるらしい。1話で演奏されていたディスコキッドの時系列は、ちょうど私たちの生きる今この瞬間と繋がっていた。それを踏まえて今一度ラストシーンを見返してみると、一段と物語が現実と繋がって、身に迫って感じられた。

久美子と真由の和解

原作小説とアニメの1番の違いは、オーディションの結果というよりも、それによって久美子と真由の相互理解が深まるところにあった。オーディションの結果によって世界線が変わったというよりは、久美子が真由の存在を受け入れたことで展開が変わっている。小説ではふたりがわかりあうことはなかった。アニメでは再オーデション前にお互いの過去を打ち明け、大切にすることを共有した。そしてオーディション後にも久美子がいち早く彼女の存在意義を肯定した。それがなければ、久美子と真由が打ち解けることはなかったし、真由が本当の意味で北宇治の一員になることもなかっただろう。
心から金賞を祈る姿も、涙を流して喜ぶ様も、すっかり北宇治高校吹奏楽部の一員だった。
彼女はまるで何か大きな枷から解き放たれたようだった。

「物語はハッピーエンドがいいよ」

黄前久美子の物語

“一年の詩”の演奏シーンでは、久美子が過ごした3年間の思い出が次々と流れていく。
中でも麗奈と真由のソリでは、印象深い場面ばかり浮かんでくる。
演奏から外され、上手くなりたいと泣いて走った。
吹奏楽部を離れようとする先輩を引き止めようと必死に言葉を紡いだ。
自分からオーディションを降りようとする後輩へ正しさを伝えた。

1期13話で麗奈のソロを聴く香織先輩の表情は、いたって穏やかだった。
それに対して、麗奈と真由のソリを聞きながら回想する久美子の表情は少し寂しそうで、同時に誇らしくもあるような、複雑な表情をしていた。正に、次の台詞がぴったり当てはまる。

「いろんなことがあったこの3年間、(中略)それがどんな結果をもたらそうと、もう何も悔いはない」

ところで、今回の3期はシリーズの様々な演出や展開と重なっている部分が多くある。終盤の展開は、『誓いのフィナーレ』のクライマックスで久美子から奏に語られる言葉へのアンサーだ。

久美子  私ね上手くなりたいんだ、ユーフォニアム。
奏    上手くなってどうするんですか?
久美子  そんなの考えたことない。
奏    そんなの?毎日毎日居残りして、それで上手くなっても何もないかもしれないんですよ。誰も喜んでくれなくていいことも一個もなくて。
久美子  そんなの当たり前だよ。一生懸命頑張って努力して努力して努力して、でも結局ダメだったなんて誰にでもあることだよ。そんなことばっかりだよ。
いつだって頭をよぎるよ。やってもダメかもって。叶わないかもって。
こんなに練習して結果が出なかったらどうしようって。うまくいかなくて、後悔したらどうしようって。でも私は頑張れば何かがあるって信じてる。それは絶対無駄じゃない。そしてうちの部は全国を目指してる。もしも奏ちゃんが私や夏紀先輩より上手なら北宇治は奏ちゃんを選ぶべきなんだ

『響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』より


超えていけ リコーダ!

調べるまでは“ReCoda”という音楽記号があるんだと思っていたら、そんなものはどうやらないらしい。音楽記号の“Coda”は楽曲において独立して作られた終結部分を指す。馴染みのある言葉で言うと、落ちサビ、大サビのようなものだろうか。通常Codaの部分を繰り返すことはないらしいが、それに繰り返しの“Re”がつけられている。
『響け!ユーフォニアム』という物語の中では、前回の再オーディション、今回の全国大会は、正に大サビというに相応しい舞台だ。それでも、久美子や麗奈の人生は続いていく。繰り返しのない人生の中で、“超えていけ リコーダ!”と言うメッセージが響く。

そして紡がれる 新たな物語
“特別になりたい” “上手くなりたい”
痛いくらい ーーーわかるよ。

ReCoda/TRUE

これは落ちサビの歌詞の一部である。これまでの久美子の目線ではなく、“黄前先生”の目線から生徒に向けて語られている言葉だろう。
それぞれの人生は続き、新しい物語も次々生まれていく。

響いて!今日というフレーズ
生きることに夢中になれた日々が
今を生きている私へと 繋がっている
365日の軌跡で受け継がれる想い
次のあなたへと向けた
終わらない夢を 鳴り止まぬ歌を
重なる喜びを

次の私へと向けた
終わらない夢を 鳴り止まぬ歌を

ReCoda/TRUE

そして、次の曲が始まるのですーー。






蛇足の蛇足

12話の感想記事の最後にこんなことを書いた

“戯言

全国の演奏後にパフェ食べに行く久美子、麗奈、真由トリオはいませんか(いない)
久美子、奏、真由で「響け!ユーフォニアム」を演奏する未来はありませんか(ない)”

どちらもこうなるだろう、というよりは、こうなったらいいな、という願望のようなものだった。

パフェには行かなかったものの(そりゃそうだ)、久美子、麗奈、真由のスリーショットがあった。(しかも真由が真ん中で!)
「響け!ユーフォニアム」の方は正に久美子から真由と奏へ伝えられるその場面が描かれていた。

感無量とはこの事か!!!
(戯言終わり)

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