BL小説「彼を食べたい俺と俺に食べられてもいい彼の不道徳で安らかで不埒で笑える日々」試し読み
「俺はきみを食べたいんだ。きみの人肉を」
そう告げて真顔のままでいても、テーブルの向かいに座る十才の彼は無表情で無反応。
はじめて会ったときから変わらず、底なし沼のような黒々とした目。
俺と苗字が同じ彼は、智輝。
白樺家の次男の息子であり、俺の兄の子。
白樺一族とは元華族でありつつ、明治時代を生きぬいた先代が製薬会社を大成させたという、由緒ある桁違いの資産家のお家だ。
代々の当主が商売上手で、時代の流れに合わせてビジネスの形態を変え、今では薬だけでなく、化粧品などの女性むけケア商品で大儲け。
経済界の三本指にはいる大企業、国民なら知らぬもののない華麗なる一族。
それが白樺家のイメージとあり、もちろん現当主の子供として生まれた俺は、さらなる栄光と発展を一族にもたらすため幼いころから英才教育を。
子供は三人、長男と次男と俺。
長男と俺は一族に従順で忠実でありつづけ、まわりの期待に応え得る成果を見せてきたが、問題は次男。
幼いころから反抗的且つ暴力的で「この性根の腐った資本主義糞野郎どもがあああ!」と高価な壺を床に叩きつけるなどして一族を糾弾しつづけた。
お高くとまった一族を皮肉るように、いつも、おおげさに下品なふるまいをし、パーティーに乱入して裸踊りをするなど、顔に泥を塗りまくり。
鼻持ちならないセレブを憎悪していた理由は分からないが、なぜか俺だけには優しく「このままじゃあ、おまえの心があいつらに殺される・・・」と心配を。
「弱者を踏みにじり高笑いする外道」呼ばわりする一族に俺は疑問もなくつき従っていたというのに。
今でも分からない。
長男も似たようなのに、どうして俺にだけ情をかけたのか。
一族に反旗を翻す仲間がほしかったのだろうか。
なんて考えもしたとはいえ、あいにく俺は家族にも一族にも不服や鬱屈はなく、まるで反骨精神も芽生えなく「元華族にして日本屈指の大企業一家の一員である重荷に耐えられない!」と嘆くこともなくて。
たしかに元華族という矜持と揺るぎなき財力権力を持ちあわせた白樺家とあり、後継者については、かなり神経質。
ただ、大人たちが望むようないい子ちゃんでいれば、必要以上に口だししたり、過干渉してこない。
幼いながらに「楯突いて揉めるほうが時間と労力の無駄だ」と悟って、一族にとって理想のしおらしい末っ子を演じていたところもある。
触れた唇は固く引き結ばれ、涼しい顔をしているようで案外、緊張しているのか。
(きちんと性教育もしたし)知識はあったとして体は制御できないようで、かるく舐めれば、やっと口を開いたから舌を侵入。
自負するわけではないが、俺にはテクニックがあると思う。
白樺家のためとの名目で交際してきた女性に対し、自分の快楽は二の次にひたすら奉仕して「こんな、いっぱいイったのお、初めてえ・・・」とご満悦にさせてきたから。
その経験を生かそうとしたのが、どうしたことやら。
舌をからませたとたん、頭が沸騰して、前後不覚のようになり、熱に浮かされるまま口内を荒らしてしまい。
やはり食欲と混同しているのか、美味な食物を飲みこむのがもったいないとばかりに、遮二無二に舐めまわし吸って噛んでやまず。
唾液も甘いように錯覚し、絞りだそうと舌を巻きつけ、がっつくように喉を鳴らしつづける。
口づけだけで童貞顔負けに舞いあがって、控えめに腕を叩かれるまで智輝を窒息させかけているのに気づかず。
はっとして密閉状態を解くも、いつになく血色のいいその顔を見たら、視界が揺れるほど動悸が激しくなり、さっきより口づけを抑えながら、焦るようにブレザーを脱がせて素肌に手を。
不感症のように見える智輝だから、性交でも無反応を通すかと思ったが、口づけの合間に耳につく「ん、ふう、んん・・・」と掠れた喘ぎ声。
かすかな鳴き声を聞きながら、舌をむしゃぶるのに陶然として、手を下のほうに滑らせる。
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