見出し画像

「あの夏の笑顔」

(これは小説です)


「はるかー、行くわよー」
お母さんが呼んでいる。
そう、今日はずっと楽しみにしていた、プールに行く日だ。
「お母さん、はるかプールが終わったらアイス食べたい!」
少しの沈黙の後、お母さんは「じゃあはるかが頑張ったらね。」と言った。
「うん!」

「はあ〜楽しかったけど、はるか疲れちゃった。」
「あら?じゃあもうアイスはいらない?」
「ううん!アイス食べたい!」
「そう、じゃあはるかは頑張ったから、アイス買ってくるね。」
はるかはにっこり笑った。
その笑顔を見たお母さんは、涙目になっていたが、すぐ後ろに振り向いて、「じゃあここで待っててね、、、頑張って。」と後ろを向きながらはるかに言った。
そして、一番向こうの角の道を曲がっていった。
それが、お母さんを見た最後の時だった。

「お母さん遅いなあ。」
はるかがそう思うときは、もう4時だった。
「お母さんが行った道に行こうかな?うーん、、、でも絶対戻ってくるよね!」
そう思ったはるかはお母さんを待った。
はるかが後ろを見ると、親子連れの人たちが「よく頑張ったね!」、「えらいえらい!」と言って歩いている。
その言葉を聞くと、はるかは涙が出てきた。
その言葉はいつもお母さんがはるかに言ってくれた言葉だった。
「お母さん。」
ぽつりと言葉が出た。
「はるか。」
そんな言葉が聞こえて、はるかは後ろを振り向いた。
「お母さん!」
はるかは涙をぼろぼろ流しながら、お母さんの方へ走っていった。


その翌日、その女の子は交通事故で死んでしまった。
しかし、警察によるとその時の表情は笑顔だったそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?