【短編】愛想笑い代行サービス
人々との交流が苦手で、特に愛想笑いを作るのが何よりも困難な彼。周囲からは常に突き放されるような視線が送られ、自身の存在が遠ざけられていくことを感じていた。
ある日、彼は画期的なサービスに出会った。「愛想笑い代行サービス」。これは、人々との交流の中で笑顔を見せるべき場面で、代行者が彼の代わりに愛想笑いをするというサービスだ。代行者は遠隔操作で顔の筋肉を動かすチップを制御し、笑顔を形成する。
サービスを利用し始めた彼の生活は順風満帆となった。周囲から信頼され、代行サービスのおかげで生活が格段に楽になった。会社の打ち合わせや友人との飲み会でも、完璧なタイミングでの愛想笑いが彼を信頼できる人間として映し出した。会話の最中でも、笑いのタイミングを適切に合わせてくれるサービスは彼を支えてくれた。自身がコミュニケーションに長けているとさえ錯覚するほどだった。自信に満ち、彼は毎日を幸せに感じていた。
しかし、ある日突如として、何の前触れもなく、「愛想笑い代行サービス」は終了した。彼が依存していたその支えが一瞬で消え去ったのだ。周りの人々は、彼が突然笑顔を作らなくなったことに戸惑いを覚えた。周囲は次第に彼を避け始め、以前のような温かな人間関係は影を潜めた。一度は笑顔で満たされていた会議や飲み会も、彼の無愛想な顔が漂う場と化していた。
周囲からは再び嫌われ、避けられ、彼は再び孤独な日々を送ることになった。