【短編】人生アディショナルタイム
人生の終盤は、サッカーの試合終盤、アディショナルタイムに似ている。時計は止まらず、刻々と進む。それでも、いつ試合終了の笛が鳴るかは誰にもわからない。
彼は夕焼けに染まる空を見つめていた。胸の内にあるのは、残された時間への焦りだった。これまで、数え切れない選択を重ねて生きてきたが、彼の中には小さな違和感が、あった。
「このままでいいのだろうか?」
アディショナルタイムに入った試合での一つ一つのプレーには、特別な重みがある。ミスをすれば取り返しがつかないかもしれないが、逆に、一瞬の勇気が試合の結果をひっくり返すこともある。これまで積み重ねてきた時間は確かに尊いものだが、残された時間でどれほどの変化を生み出せるかだ。
彼は胸の奥で、ある決断を下す瞬間が近づいているのを感じた。リスクを恐れず、もう一度、大胆なプレーを選ぶかどうか。その一歩は恐怖と隣り合わせだ。だが、サッカーのピッチと同じく、勇気を持って采配を振るうことでのみ、試合を支配することができる。
彼はもう一度、窓の外に目を向けた。夕焼けは消えかけていた。