【ドラマ】結婚の裏に潜む葛藤: 『昼顔』

「あなたは夫がもう自分を愛してないことを知ってるのだけど、生活を失いたくないから見ないフリをしてるだけ。」
(引用:ドラマ「昼顔」)

　この台詞は、秀逸である。
　それは、結婚生活における感情的な空虚さと経済的安定を失う恐怖が交錯が凝縮されているからである。
　妻が夫が自分を愛していないことを認識していながら、それを受け入れず、あえて目をそらしているのは、心理的な葛藤を示していると言える。愛と生活のバランスを保とうとする姿は、現代社会における結婚の現実、特に女性が直面する複雑な状況を象徴している。

　この台詞の背後には、表面上は平穏な家庭生活がある一方で、その裏には壊れつつある夫婦関係が存在するという二重構造がある。
　愛を失ったことを理解していながら、社会的な立場や経済的な安定を優先する選択は、彼女が自由を犠牲にしている一種の自己犠牲とも言える。　
　このような感情のジレンマは、個人の幸せや自由とは何か、社会的な役割や責任とのバランスはどのように取るべきかといったテーマを探求させるきっかけとなる。

　また、これは現実逃避の象徴でもある。見ないフリをしているという行動は、心理的防衛機制の一つであり、目の前の苦痛を避けて短期的な安定を維持しようとする心の働きを示している。　
　しかし、これは同時に、長期的にはより大きな崩壊を招く可能性を孕んでおり、真実に目を向ける勇気の必要性を問いかける。