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#歌詞考察

【歌詞】色彩が織りなす幻想: acidman『赤橙』

 acidmanの「赤橙」は傑作である。

 「赤橙」というタイトルは、造語でありながら一見して意味が明瞭に伝わる美しさを持っている。「赤」と「橙」はどちらも暖色系で、太陽や夕焼け、燃え盛る炎といった生命やエネルギー、さらには変化や儚さを象徴する色だ。
 この二つの色を並べることで、感情の揺らぎや瞬間の美しさを描き出し、楽曲全体に一種の幻想的な世界観を与えている。

 歌詞の中で、「太陽と空の間

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【歌詞】いちごの比喩が紡ぐ夢と恋愛: 華原朋美『I'm Proud』

 華原朋美の「I’m Proud」の歌詞は傑作である。

 それは、「いちご」の比喩表現が非常に効果的であり、際立っているからである。

「届きそうで つかめない いちごの様に
甘く切ない事 夜中(よるじゅう)思い浮かべてた」

 この比喩は、甘さと切なさが同居する象徴として用いられている。また、これは夢と恋愛の2つの側面を想起させる。

 まず、夢におけるいちごは、一見手に入れられそうな夢や希望

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【歌詞】死まで感じながら生きる: acidman『季節の灯』

 Acidmanの「季節の灯」は、死と生について洞察を提供する優れた楽曲である。

「残された日の全て心を添えておこう」

 私たちが残りの時間、つまり生命の終焉までに残された時間を最大限に活用し、その一瞬一瞬に心を添えて生きるべきだというメッセージを伝えている。

「いつの日か私も君も終わってゆくから」

 という一節と共に繰り返され、人間の生命が有限であること、それゆえに私たちはこの一時的な存

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【歌詞】生きてる実感: Mr.Children『潜水』

 Mr.Childrenの「潜水」は、生きてる実感について描いた優れた楽曲である。

 「バラバラに散らばったパズルが
床でふて寝している」

 人生が計画通りに進まず、無秩序に感じることを象徴する。

「これはこれで結構芸術だ」

 無秩序さえも芸術として受け入れる姿勢を見せる。このような受容の態度は、人生の不確実性や予測不能な部分を肯定的に捉えることの重要性を示唆している。

「そうだ 明日プ

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【歌詞】瞬間的自由: acidman『Free Star』

 ACIDMANの「Free Star」の歌詞は、傑作である。
 それは、誰もが瞬間的に自由になれることを感じさせてくれる点にある。

 それは、次のフレーズに示される。

 「Free star たった一秒で  
  Free star 世界は変わる」

 ここでの「free」は「自由」を意味し、誰もがポジティブな未来を思い描くことができるというメッセージが込められている。それも、たった一秒で。

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【歌詞】0と1の中で続く葛藤: acidman『シンプルストーリー』/尾崎豊『僕が僕であるために』

 Acidmanの「シンプルストーリー」、尾崎豊「僕が僕であるために」の両曲は、共に夢における葛藤を鮮やかに描く傑作である。

 「シンプルストーリー」では、結果が出るか否かの不安感、すなわち「0と1」の間で揺れる感情の緊張感を見事に描いている。

 「透明度落ちる夜空に怯えていたから」

 不確実性と恐怖の感情を象徴している。
 「透明度落ちる夜空」は未知への恐怖を示し、その暗闇の中に直面する不

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【歌詞】夢の恐怖、決意、温もり: syrup16g『夢からさめてしまわぬように』

 syrup16gの「夢からさめてしまわぬように」は、傑作である。
 その理由は、夢の不確実性への恐怖、それでも夢を信じ続ける決意、他者との関わりを見事に描いている点にある。

「夢からさめてしまわないように
夢の先の事を考えて泣くのはもうやめておこう」

 夢という未来への希望を追い求めることは時に辛く、その夢が叶わない可能性を考えると、恐怖心から涙が出てくるほど苦しく感じることがある。
 しか

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【歌詞】純粋な飾らない魅力: 華原朋美『I'm Proud』

 華原朋美の「I’m Proud」は、傑作である。

 それは、夢を追い求める葛藤の中で、飾らない魅力が感じとれるからである。

「声にならなくても
想いが時には伝わらなくても
笑顔も泣き顔も全てみんな
かならずあなたに知ってもらうの」

 心の内に秘めた思いをどれだけ伝えようとしても、時にはそれがうまく伝わらないという葛藤。それは言葉にできない感情が内に積もっていく感覚である。人はしばしば、言葉

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【歌詞】夢の不確実性と葛藤: メレンゲ『願い事』

 メレンゲの「願い事」は、夢の不確実性と内面の葛藤を巧みに描く傑作である。

「嘘と嘘でたまにホントになる」

 真実を追い求めつつも、現実と幻想の間で揺れ動く心情が強く感じられる。
 また、これは真実が曖昧であり、その嘘が新たな「ホント」を生み出してしまうという皮肉に満ちた現実を示唆している。

「僕は手に入れたナイフで 何を残すんだろう」

 夢を選択して、手に入れた実力で、どんな成果を達成す

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【歌詞】脱資本主義の精神: Mr.Children『傘の下の君に告ぐ』

 Mr.Childrenの「傘の下の君に告ぐ」の歌詞は傑作である。
 それは脱資本主義の精神が鋭く描かれているからである。

「資本主義にのっとり
心をほっぽり
虚栄の我が日本です」

 資本主義社会における私たちの心理状態を象徴的に表現する。物質的な成功や経済成長への執着が、真に大切なものや心の充足を軽視させる傾向を指摘している。この批判は、一般社会が内面的な充実や人間性の側面を軽視していること

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【歌詞】何の事情も知らない人からの優しい言葉: BUMP OF CHICKEN『ベル』

 BUMP OF CHICKENの「ベル」の歌詞は、傑作である。
 何の事情も知らない人からの優しい言葉が、孤独感を一時的に和らげる力を見事に描いているからである。

「重い体を 最終列車に乗せて」
「疲れた心を 毛布で隠して」

 具体的に描かれた日常生活の一部を通じて、孤独や疲れを感じている主人公の感情が示されている。

「話したい事は 山程あるけど
なかなか言葉になっちゃくれないよ」

 そ

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【歌詞】夢を追う過程での自己受容: 宇多田ヒカル『Wait&See〜リスク〜』

 宇多田ヒカルの「Wait & See ~リスク~」は、優れている。
 夢の追求過程における自己受容の大切さを描いているからだ。

 全体を通して、夢を追いかける過程で遭遇する困難や不安について語っている。

 「つまずきながら」という表現は、成功に至るまでの試行錯誤や失敗を意味し、それが「口で言う程 楽じゃないはずでしょ」と続くことで、その道がいかに厳しいものであるかを示している。  

 しか

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【歌詞】自分は何者か?「人間証明書」: BUMP OF CHICKEN『乗車権』

 BUMP OF CHICKENの「乗車権」の歌詞は、傑作である。

 この楽曲は全体として、夢や願望を追い求める人々の葛藤と、不確かな未来に対する不安を描いている。その中でも「人間証明書」という造語が独特で優れている。

 「人間証明書」は、単なるIDカードやパスポートのような物理的な証明書を超えて、自己の存在や価値を証明するものとして象徴的に使われている。

 「人間証明書が無い」と気づく場面

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【歌詞】恐怖の問いかけ: 椎名林檎『アイデンティティ』

 椎名林檎の「アイデンティティ」は、自己の存在意義、他者との関係に対する深い不安と疑念を描いた優れた作品である。

 この歌詞は、多くの問いかけを通じて人間の根源的な恐怖心を探っている。

「誰が真実なのですか」

 この問いかけは、他者の言動や意図に対する根本的な不信を示している。誰が本当に信頼できるのかが見えないことで、自分の判断や選択に対する恐怖が増す。人間関係における裏切りや欺瞞の可能性が

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