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2024年5月の記事一覧

【短編】虚栄の宴

 金曜日の夜、居酒屋の一角は彼のライブの打ち上げで賑わっていた。自称ミュージシャンの彼だが、正直言ってその曲も演奏も凡庸そのものだ。本気度は全く伝わってこない。それでも内輪の客たちは忖度し、拍手を惜しまず、彼を盛り上げる。

「次は新曲です!」

 と彼が叫ぶ。観客は一応の歓声をあげるが、誰も心から感動しているわけではない。むしろ、彼の365日ペラペラの配信内容を知っているからこそ、その虚栄心が透

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【歌詞】瞬間的自由: acidman『Free Star』

 ACIDMANの「Free Star」の歌詞は、傑作である。
 それは、誰もが瞬間的に自由になれることを感じさせてくれる点にある。

 それは、次のフレーズに示される。

 「Free star たった一秒で  
  Free star 世界は変わる」

 ここでの「free」は「自由」を意味し、誰もがポジティブな未来を思い描くことができるというメッセージが込められている。それも、たった一秒で。

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【歌詞】恐怖の問いかけ: 椎名林檎『アイデンティティ』

 椎名林檎の「アイデンティティ」は、自己の存在意義、他者との関係に対する深い不安と疑念を描いた優れた作品である。

 この歌詞は、多くの問いかけを通じて人間の根源的な恐怖心を探っている。

「誰が真実なのですか」

 この問いかけは、他者の言動や意図に対する根本的な不信を示している。誰が本当に信頼できるのかが見えないことで、自分の判断や選択に対する恐怖が増す。人間関係における裏切りや欺瞞の可能性が

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【歌詞】つよがりの捉え方: YUI『TOKYO』

 YUIの「TOKYO」の歌詞は、傑作である。
 それは、つよがりの捉え方が見事であるからである。

「つよがりはいつだって夢に続いてる」

 つよがりとは一見ネガティブなイメージがある。自分を大きく見せたい、良く思われたい。
 しかし、この部分は、つよがりをする根底には夢があるのだというポジティブな事実に気づきを与えてくれる。

「正しいことばかり選べない
それくらいわかってる」

「答えを探す

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【歌詞】夢の不確実性と無意識: acidman『アレグロ』

 Acidmanの「アレグロ」の歌詞は、秀逸である。
 その理由は、不確実な夢の中で自分自身の無意識を観ることの重要性を示唆している点にある。

 「静かに流れるあなたの祈りは、最初からつまり気付いていたんだ」

 このフレーズは、内的な願望や希望は、自分自身の無意識にあるということを示している。
 また、夢の不確かさの中で、無意識を観ることが重要であるということが読み取れる。

 夢とは不確かな

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