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2023年7月の記事一覧

【歌詞】死まで感じながら生きる: acidman『季節の灯』

 Acidmanの「季節の灯」は、死と生について洞察を提供する優れた楽曲である。

「残された日の全て心を添えておこう」

 私たちが残りの時間、つまり生命の終焉までに残された時間を最大限に活用し、その一瞬一瞬に心を添えて生きるべきだというメッセージを伝えている。

「いつの日か私も君も終わってゆくから」

 という一節と共に繰り返され、人間の生命が有限であること、それゆえに私たちはこの一時的な存

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【歌詞】0と1の中で続く葛藤: acidman『シンプルストーリー』/尾崎豊『僕が僕であるために』

 Acidmanの「シンプルストーリー」、尾崎豊「僕が僕であるために」の両曲は、共に夢における葛藤を鮮やかに描く傑作である。

 「シンプルストーリー」では、結果が出るか否かの不安感、すなわち「0と1」の間で揺れる感情の緊張感を見事に描いている。

 「透明度落ちる夜空に怯えていたから」

 不確実性と恐怖の感情を象徴している。
 「透明度落ちる夜空」は未知への恐怖を示し、その暗闇の中に直面する不

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【歌詞】夢の恐怖、決意、温もり: syrup16g『夢からさめてしまわぬように』

 syrup16gの「夢からさめてしまわぬように」は、傑作である。
 その理由は、夢の不確実性への恐怖、それでも夢を信じ続ける決意、他者との関わりを見事に描いている点にある。

「夢からさめてしまわないように
夢の先の事を考えて泣くのはもうやめておこう」

 夢という未来への希望を追い求めることは時に辛く、その夢が叶わない可能性を考えると、恐怖心から涙が出てくるほど苦しく感じることがある。
 しか

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【歌詞】夢の不確実性と葛藤: メレンゲ『願い事』

 メレンゲの「願い事」は、夢の不確実性と内面の葛藤を巧みに描く傑作である。

「嘘と嘘でたまにホントになる」

 真実を追い求めつつも、現実と幻想の間で揺れ動く心情が強く感じられる。
 また、これは真実が曖昧であり、その嘘が新たな「ホント」を生み出してしまうという皮肉に満ちた現実を示唆している。

「僕は手に入れたナイフで 何を残すんだろう」

 夢を選択して、手に入れた実力で、どんな成果を達成す

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【歌詞】脱資本主義の精神: Mr.Children『傘の下の君に告ぐ』

 Mr.Childrenの「傘の下の君に告ぐ」の歌詞は傑作である。
 それは脱資本主義の精神が鋭く描かれているからである。

「資本主義にのっとり
心をほっぽり
虚栄の我が日本です」

 資本主義社会における私たちの心理状態を象徴的に表現する。物質的な成功や経済成長への執着が、真に大切なものや心の充足を軽視させる傾向を指摘している。この批判は、一般社会が内面的な充実や人間性の側面を軽視していること

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【歌詞】何の事情も知らない人からの優しい言葉: BUMP OF CHICKEN『ベル』

 BUMP OF CHICKENの「ベル」の歌詞は、傑作である。
 何の事情も知らない人からの優しい言葉が、孤独感を一時的に和らげる力を見事に描いているからである。

「重い体を 最終列車に乗せて」
「疲れた心を 毛布で隠して」

 具体的に描かれた日常生活の一部を通じて、孤独や疲れを感じている主人公の感情が示されている。

「話したい事は 山程あるけど
なかなか言葉になっちゃくれないよ」

 そ

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【歌詞】自分は何者か?「人間証明書」: BUMP OF CHICKEN『乗車権』

 BUMP OF CHICKENの「乗車権」の歌詞は、傑作である。

 この楽曲は全体として、夢や願望を追い求める人々の葛藤と、不確かな未来に対する不安を描いている。その中でも「人間証明書」という造語が独特で優れている。

 「人間証明書」は、単なるIDカードやパスポートのような物理的な証明書を超えて、自己の存在や価値を証明するものとして象徴的に使われている。

 「人間証明書が無い」と気づく場面

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【歌詞】夢追い人の大らかさ: YUI『blue wind』

 YUIの「blue wind」の歌詞は、傑作である。
 夢追い人の大らかさを、見事に描いているからである。

「発明家は偉い人だと教えられた
努力する モノを生み出す」

 音楽家を目指して生きていく自分自身を「発明家」に喩えている。

「でもそれに群がってゆく人たちこそ
かしこくて長生きだ」

 そんな自分自身の対比として、夢もなく流れに沿って生きていくだけの人。
 その人達の方が、ズル賢く世

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【歌詞】自分らしさへの挑戦: YUI『How Crazy』

 YUIの「How Crazy」は傑作である。
 その理由は、自分らしさと同調圧力の間の葛藤を鮮やかに描く点にある。

「尊敬できない大人のアドバイス
アタシはあなたみたいにはなりたくないと思った」

 社会の一般的な期待と規範に対する彼女の反抗を示す。他人や社会が彼女に対して押し付けてくる役割ではなく、自分自身の価値観に従って生きることを望んでいる。

「わかったようにアタシのこと話すのはやめて

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【歌詞】反抗から肯定へ: 尾崎豊『卒業』/ YUI『My Generation』に見る自由

 尾崎豊の「卒業」とYUIの「My Generation」は、青春期の自由をテーマに扱っているが、両曲の自由の解釈には大きな違いが見られる。

 尾崎は社会への反抗を、YUIは自己肯定を描いている。

 尾崎の「卒業」を見てみよう。

「夜の校舎 窓ガラス壊してまわった」

 彼の抱く未来への不確実性や社会への反抗心が感じられる。「この支配からの 卒業」をキーフレーズに、彼は青春という時期を、自己

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【歌詞】鐘 : acidman『バックグラウンド』/ BUMP OF CHICKEN『メロディーフラッグ』に見る迷いと無意識

 人生という旅路は、しばしば私たちを迷わせる。どの道を選ぶべきか、どの声を聞くべきかを決定することは困難であり、選択の結果が未来にどのような影響を及ぼすかは予測不可能だ。   

 Acidmanの「バックグラウンド」と、BUMP OF CHICKENの「メロディーフラッグ」の二つの曲は、傑作である。

 この両曲は詩的な表現を通じて、この人生の迷いと、その中に存在する「無意識」のメッセージを見事

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