バクダン!?
美味 千成(錦糸町)
東京の下町、墨田区・錦糸町。
生まれも育ちもこの街で、今も仕事場が錦糸町にあるのでどうしても登場するお店はここら一帯が多くなる。
二年前、総武線のガード下に出来た「美味 千成」は今ではもっとも顔を出すお店の一つとなった。
店内は明るく広いので、一人呑みしながら文庫本を読むのには居心地がいい。
もちろん肴が美味しいのは言うまでもない。
ちなみに「錦糸町」という地名はありません。駅名だけ。
江東区にあると、よく間違われます。
その辺りの詳しい話はこちらのエッセイでどうぞ。
この日は居酒屋メニューの王道ともいえるもつ煮込みと、つい食べたくなってしまう昔ながらのハムカツを注文。
もちろん、いつものハイボールも。
煮込みも昔ながらといった感じの濃いめの味付け。肴としてはこれくらいの方がお酒も進むのでしょう。
大根や人参、ゴボウといった野菜もたっぷり、肝心のモツも大きめで食べ応えがあります。
千成ハイボールはグラスの通り、ニッカウヰスキーを使っています。
こちらは、メニュー名が「昔ながらのハムカツ」
ハムは厚すぎず薄すぎず、サクッとした食感。
揚げたての熱々にソースをかけて、辛子をつけて頂きます。
男子の好きなやつ。ウマウマ~
そして、以前から気になっていたバクダンも注文。
バクダンというと、おでんの種でウズラの卵が入った練り物を思い浮かべるのだけれど、どうも違うらしい。
待っていたところへ現れたのは……。
手前のスプーンが入ったお椀がバクダン。
ひきわり納豆をベースに、マグロ・タイ・イカそして沢庵が入っています。
「スプーンでよく混ぜて、海苔に包んで食べてください」
お姉さんに教わった通り、醤油を一回しかけてよーく混ぜる。
バラバラだった具材がだんだんとねばねばに包まれて一体化していく。
十分に混ぜたところでスプーンですくい、手に取った海苔の上に落として食べる。
納豆と魚介類の相性はいいし、沢庵のコリコリした食感もいい。
海苔の香りと相まって――美味い。
この記事を書くために調べてみたら、バクダンは居酒屋ではおなじみのメニューだそうで。語源は「火薬の調合のように数種の具材をよく混ぜるから」など諸説あるそうです。
山芋やオクラを使ったり、それぞれこだわりのレシピがあるようですが、ここ千成のこだわりは具材を同じ大きさに細かく切ってあることかと。
混ぜやすく、色々な食感が楽しめると思いました。
この日は文庫本を取り出したものの、店のテレビを見入ってしまい読書はほとんどなし。
ということで表紙絵の解説をしておこう。
前回、ゆるキャラの剣崎マイカ(第二話「ゆるキャラはなぜ殺される」)を紹介したが、他に描かれているのも登場人物ばかり。
・第一話「倉持和哉の二つのアリバイ」・・・緑のポロシャツが倉持和哉
・第三話「博士とロボットの不在証明」・・・右端の特徴的な髪形が博士
・第四話「とある密室の始まりと終わり」・・・手に板を持って「黒地に赤い牡丹が描かれたアロハシャツ」(本文より引用)を着ているのが、助手の戸村流平くん。
彼のムスっとした視線の先で嬉しそうに犬をあやしているのが鵜飼探偵。
そして柴犬・ホタテだ。
よーく見ると、読み終えた者だけが分かる小ネタが散りばめられている。
それを探すのも本を楽しむ方法の一つでは。
――美味しいものと文庫本⑬――
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