ワニくんの100日目を、ミステリー書き手の目線で紐解いてみた
この記事は、きくちゆうき氏の「100日後に死ぬワニ」への私見を述べたものです。著作権を考慮し、当該画像は使用いたしません。
原作は下記リンク先でご確認ください。
ワニくんの話は耳にしていたものの、追っかけていたわけではありません。
100日目となる3月20日にTVやTwitterで目にして、なるほどぉ等と思っていました。
そんな「乗り遅れた」私のミステリー心に火をつけたのは、息子の一言です。
塾へ行く直前まで「まだ更新されなーい」とPCの前に座り、帰ってくるなり「ワニくんが、ワニくんが」と急いでPCを立ち上げた彼から、「これってどうゆうことだと思う?」と意見を求められました。
Twitterでも色々な意見が飛び交っているけれど、彼としてはネズミくんのことを心配しているようです。
あらためて100日目の話を見てみると、暗示されている描写ですが作者の意図も感じられ、にわかの私でも心に響くものがありました。
そこで、趣味でミステリーを書く私なりに紐解いてみよう! と思った次第です。
結論としては、以下の三点を導いています。
・ワニくんは亡くなっている。
・ネズミくんが事故を起こしたわけではない。
・今回のお話は少なくとも一年以上の時を経た話。
では、推理の仮定を順に追っていきましょう。
★
まずは、話を振り返ってみます。
【1ページ目】
花見会場でワニくんを待つ仲間たち。
ネズミくんが電話をしても応答がありません。
そこでネズミくんはバイクでワニくんを迎えに行きます。
【2ページ目】
バイクにまたがったまま、信号待ちで桜の写真を撮るネズミくん。
スマホの画面には、桜の写真と「よくね?」の一言が。
【3ページ目】
道路を渡っているひよこさんを、早く渡るように後ろから急かすワニくんの姿。
次の場面でひよこさんが振り返ると、歩道にはワニくんのものと思われるスマホが落ちています。
そこには写真の下にワニくんからの返信が二行、表示されていました。
【4ページ目】
満開に咲き誇る桜の遠景。
遠くに見える交差点には、かすかにひよこさんの姿も見えます。
ミステリーを読むときも書く時も、『違和感』を大切にしています。
その時は理由までわからなくても、ふと感じた違和感は謎解きの基本と言えるでしょう。
コ○ン君も「あれっ、たしか……」というような違和感を毎回のように口にしています。
この100日目のお話も、違和感を覚えました。
それは2ページ目のスマホと、3ページ目のスマホ。
明らかにおかしいですよね?
みなさんは気づきましたか?
2ページ目ではネズミくんがひとこと、発信しています。
3ページ目ではワニくんがふたこと、発信しています。
どちらの画面にも『相手からの発信表示がない』というのは不自然、ありえないはずです。
では、一体どういうことなのか?
もう一度、詳しくスマホ画面を見てみましょう。
【2ページ目】
・グループLINE『あそぼう』の登録メンバー数は3
・写真、コメントの既読数は1
【3ページ目】
・グループLINE『あそぼう』の登録メンバー数は3
・コメントの既読数は2
既読数の違い、相手からの発信表示がない、この二つのことから言えることはただ一つ。
『スマホに映っている桜の写真は、同じではない』つまり、異なる年に撮影されたものと判断できます。
これは推理小説などで使うミスリードの手法です。
スマホ画面の時刻表示が2ページで11:10、3ページでは11:11だったこと、1~4ページが並べられていたことで、読者は時系列も1→2→3→4と無意識に思っています。
しかし、実際には3→4→1→2の順、しかも2ページはワニくんが亡くなった一年後(それ以降かも)の話となっています。
詳しく説明すると以下の推理となります。
まず、3ページ。
この時、ワニくんはネズミくんから送られてきた写真にコメントを残しました。既読数2であることから、グループLINEのメンバー全員が確認したと分かります。
その後、ひよこさん追い立てていた時に不幸にも事故にあってしまったのでしょう。
ひよこさんが歩道側(茶色い部分)にいるのに対し、ワニくんの体が車道側(グレーの部分)にいたことからも、そう推察できます。
そして4ページ。
交差点の歩道にひよこさんがいることから、事故の直後の遠景と言えます。
ひょっとしたら、これからワニくんを迎えに行こうとしていたネズミくんの視点かもしれません。
戻って1ページ。
ワニくんをみんなが待っているということは、当然まだ事故のことは知らないはず。
でも、ネズミくんが連絡しても応答がないということは、すでに……。
最後の2ページ。
ワニくんを偲んで、今年も花見をやろうということになったのではないでしょうか。
その途中でネズミくんが思い出し、事故のあった場所で桜を撮影。
そのコメントには既読が1。ワニくんからの既読がつくことはありません。
でも、グループLINEのメンバー数は3のまま、というところに思いが込められている気がしました。
最初読んだ時から2ページには、もうひとつ違和感がありました。
スマホ場面の「シュポ」という擬音表示です。
この音はいったい何だろう? と思っていたのですが、読み解いてみると、お花見の時に誰かが缶ビールを開けた音ではないかと。
こう考えると、すべてつながります。
息子に伝えると「ホントだ! 超ナットクぅ」と笑顔が帰ってきました。
ドヤ顔で応えたのは言うまでもありません。
こんな風に楽しめるほど、「100日後に死ぬワニ」は素晴らしい作品だったんだなぁと感じました。
息子たち、こども世代にも何かしら思うところはあったと感じています。
きくちゆうきさん、ありがとうございました。
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