ばばあもどきの日常と非日常 その20「仕事のこと⑤」

こんにちは。
“ばばあもどき”のルル山ルル子(ルル)です。
女の容れ物(身体)に男の魂が宿っています。
「トランスジェンダー」とか「FTM」とかの呼称がどうもしっくり来ず、
普段は「見た目は女 中身はおっさん」と自己紹介をしています。

前回までのあらすじ


指定されたビルのエレベーターの掃除をして回る仕事に就き、
汚れたところをキレイにするなんてまあまあやり甲斐がありそうだな、と張り切っていた私に
実家の母親が冷や水を浴びせかけてきました。

「やーい、お前の母ちゃん、◯◯」


いずれ、母親のことも書いていこうとは思っていますが、
私の一人目の母親(生みの親)はひどく差別的な言動をする人でした。
電話で「エレベーター掃除の仕事が決まった」と報告すると、途端に不機嫌になりました。
彼女は「知的で」「人から尊敬されて」「難しい資格が必要で」「座ってやれる」ような、
そして「うちの娘、〇〇の仕事なんですのよ」と誰かに言った時の相手の反応によって自分が満たされるような、
そんな仕事が好きなのです。
這いつくばって汚れながら掃除をして回るなんて、もっての外だったのでしょう。
「ルル子、あんたは私への当て付けでそんな仕事を選んだのね?」と言ってきました。

「当て付けで仕事を選ぶ」ってなんなんですかね。
なんでそんな発想しか出来ないんですかね。
聞いてて情けなくなってきました。
口では「職業に貴賤なし」などと言いながら、明らかに掃除の仕事を馬鹿にしていました。
しかもだんだん口調がヒートアップするにつれ、「エレ“べ”ーター」の「ベ」に引っ張られたのか
「そんな便所掃除なんてしてて、友達に『ルルちゃん今どんなお仕事してるの?』って訊かれて『便所掃除でーす!』って言えるの?」とか
「将来 子供が出来て、その子供が友達に『やーい、お前の母ちゃん便所掃除!』って言われてもいいの?」とか言い出しました。

「えーと、ひとつ目に関しては全く問題ないよ。
詐欺とか博打を生業にしてるならともかく、みんなのために汚れたところをキレイにするんだから、他人に言えないような仕事じゃないでしょ。
ふたつ目に関しては、
寧ろ、用を足した後に汚したまま出て来たところを子供の友達に見付かって
『やーい、お前の母ちゃん便所汚し!』って言われる方が嫌だな。
キレイにする仕事なんだから良くない?」

最後にまた「私への当て付けね」とか「そんなに私が憎いか」とか叫びながら電話は切られました。
私はすっかり便所掃除の仕事をするような気になっていましたが、実際に掃除するのはエレベーターです。

始めてみたら、これがなかなか面白いのです。

「仕事のこと⑥」に続きます。

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