ルルの冒険物語 第2話
これは、もう一つのルル物語
ルルが生まれた村はとても寒く貧しい村でした。
村では子供達も働き手の一人です
ルルの父親はマルセルという名でした。
マルセルにはララという娘がおりました。
マルセルはララをとても可愛がっておりましたが、ララはとても美しく賢い女の子でしたが生まれつき身体が弱くいつも病気がちで村の子供達と遊べずにいました。
村は貧しく一人の子を育てるのも大変でしたが、それでもマルセルは、自分の助けになる男の子が欲しいと強く望んでいました。
そんな中、マルセルの妻が身ごもります。
マルセルは、次は絶対男の子だと信じて疑いませんでした。
そして、今か今かと生まれてくるのを楽しみにしておりました。
しかし、生まれてきたのは女の子、ルルでした。
マルセルは、ショックのあまり暫くは、生まれてきた子の顔も見ることができないでいました。
しかし、そんなマルセルも生まれたばかりのルルの笑顔と笑い声に少しづつ心が癒されていきました。
大きくなるとルルは、とても元気で明るくどの村の男の子よりもたくさん働きました。
そして、姉のララを慕い、外で友達と遊べないララをいつも笑わせることに一生懸命でした。
母親は、ララとルルに薬草の作り方や料理など生きるための沢山の知恵と知識を与えました。
父親は働く時にはいつもルルを連れて行き、働き者のルルを村人に自慢していました。
マルセルはとても明るく朗らかで村で困っている人を見つけるといつも助けてあげていました。
村人たちは、そんなマルセルにとても感謝し慕ってていました。
マルセルの家は暖かくいつも笑いが絶えません。
家は小さいでしたが、ルルには何も足りないものがありませんでした。
そんなある日
幸せそうなルルをよく思わない一人の男の子がいました。
男の子の家はとても裕福でした。
しかし、男の子の父親はとても厳しくいつも怒鳴ってばかりです。
母親もそんな夫にいつも怯えて下を向いてばかりでした。
大きな家が尚更、孤独と冷たさを大きく感じさせました。
そんなある日、男の子はルルに向かってこういいました。
「お前の家は小さくて貧乏だな」
その時ルルは何を言われてるのかよく理解できませんでした。
貧乏って何だろう(・・?
ルルは、今の家で充分満足でした。他に必要なものなど何もありませんでした。
ルルは、家に帰ると父親にその日の出来事を話します。
今日ね、男の子にこんな事言われたの
「お前の家は小さくて貧乏だなって」
「お父さん、あの子変だね何を言ってるんだろうね」
そう笑顔で話します。
マルセルは、ルルの問いかけに返す言葉は無くただ顔を曇らせます。
「お父さん」
ルルの呼ぶ声に返事はありません・・・
それからというもの、マルセルは、毎日、毎日朝から晩まで働きます。
ある日、いつものように困った村人がマルセルに助けを乞います。
しかし、マルセルは、困った村人を助けることはありませんでした。
あんなにマルセルを慕っていた村人たちも段々とマルセルから離れていきます。
マルセルは、こう思っていました。
(自分のせいで愛する家族に充分な物を与えられなかった。そして、大事な子供達が私のせいでいじめられているのでは・・・もう村人に尽くすのはやめて自分の家族のために働こう)
妻は、そんなマルセルに助言しますが、責任感の強いマルセルは聞き入れません。
妻との間で口論も多くなり、次第に会話を交わすことも少なくなってしまいしまいには、仕事の不満や辛さから手をあげることも多くなってしまいます。
それに耐えられなくなった妻は、とうとう子供達をおいて家から出ていきます。
その頃からルルの目には、魔法が解けたように、暖かく綺麗だった家が、汚いみすぼらしい家に変わっていきました。
ルルは思いました。
あ~これが貧乏というものなの・・・・
マルセルは、いなくなった妻の分まで働きました。
自分のせいで子供たちに不憫な思いはさせたくないと必死です。
ルルは心の中で叫びました
「お父さん何を見てるの、お父さんが見ているルルは違うルルだよ、私はここにいるよ、ねえお父さん私を見て・・・」
遠くを見つめる父親の目にはルルは映っていません。
ルルには、近くにいる父親が遠くに感じられました。
それは、姉のララも同じです。
ララとルルは、言葉は交わさなくても心は通じ合っています。
胸の痛みも全てを共有します。
そんなある日、働きづめだったマルセルは、とうとう病で倒れてしまいます。
もう治ることはありませんでした。
この世を去る時、マルセルは、二人の娘を親戚に預けることにしました。
預けられた親戚には、一人子供がいましたが二人のことを不憫に思い育ててくれました。
しかし、元々、身体の弱かったララは預けられた直ぐに病気で亡くなってしまいます。
この時から、ルルに本当の孤独というものが訪れます。
大人になるとルルは親戚の家を出ます。
父親を亡くしたルルに村人は冷たくあたります。
仕方なくルルは誰も住まないような荒地に住むことにします。
ルルはもう笑うことも喋ることもしなくなりました。
ルルの心は氷のようです。
月日は流れ、いつしかルルは荒れ地の魔女と村人に呼ばれるようになりました。
ルルの心の奥底にはいつも後悔がありました。
私の無知なあの一言さえ無ければ・・・と
そうしながらも孤独と後悔に生きるルルにある日、こんなことが起こりました。
いつものようにぼんやりと椅子に腰掛けうとうとしていると何やら遠くで声がします。
何やら自分を呼んでいるようです。
誰だろう
懐かしい、どこか聞き覚えのある声、女の人だ
その声からはかつて両親から受けていた同じ愛が溢れていました。
ルルの冷たい氷のような心が一瞬で溶けていきます。
ルルには、知らない世界の女神の声のようでした。
でも・・・この懐かしさは何だろう
ルルは、意識を集中してその声を辿っていきます。
ルルは、感じました。
嗚呼、この声は、私だ、私の声だ
ルルは、この声が自分の未来の声だと確信しました。
その時、同時にルルは、希望という光を見つけます。
私は、こんなにも深い愛を見つけることができたんだと
それからというものルルは、母親から教わった薬草を使って村人の病気や心の病を治してあげるようになり荒れ地の魔女と呼ばれながらも沢山の村人から感謝と愛を受け幸せに暮らしていきました。
おわり