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鎌倉殿からのミュージカル

 昨年は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にはまり、人生で初めて大河ドラマ全話を完走しました。地理的にすぐ近くで行く機会もそこそこあった鎌倉ですが、日本史音痴のわたくし、実際に鎌倉で何が起こっていたかあまり理解していなかったので、ドラマを堪能しつつ、ドラマの時代考証を担当された坂井孝一先生の著書や比較的文献がある源実朝の和歌に関する書籍を何冊も読み、はるか昔の大学時代を思い出し(そういえば、わたし国文学科でした!)、和歌について学んだ楽しい1年でした。なかでも、源実朝を演じられた柿澤勇人さんの演技に惹かれ、調べてみたら、ミュージカルも演じられる方とのこと。早速、ちょうどこの春に上演される「ジキル&ハイド」で三代目ジキル&ハイドとしてタイトルロールを引き継がれるというので、チケットを入手しました(最終的にはチケット入手困難となった、かなり人気の演目でした)。



 ミュージカルは劇団四季の「ウエストサイドストーリー」「キャッツ」を観たことがありました。キャッツはちょうど習い事でダンスをやっていた娘に見せるために)。キャッツはダンスももちろんですが、劇場全部を猫から見える世界にデコレーションした素晴らしい舞台美術と世界観に感動した記憶がありますが、それ以来のミュージカル。今回一番感動したのは、ミュージカルは“生オケ”ということです(四季は生演奏ではなくほぼカラオケだそうですが、日本で今上演されている四季以外のグランドミュージカルは8~9割が生オケのようです。観劇する方には常識ですね。初心者なもので、すみません)。楽器の音出しが響いている劇場に足を踏み入れた瞬間、日常を忘れ異空間に舞い込んだようでした。以前、吹奏楽の生音が身近にあったときも舞台前の練習のほうが本番より断然好きでしたが、これでたまらなくテンションが上がりました。


 ジキル&ハイドはカタルシス味の高い演目ですが、どちらかといえばそういったほうが私の好み。オケと歌と芝居が違和感なく、むしろ音楽によって増幅されて感情にグサグサと伝わってきます。もう、ストレートにグサグサと。私はミュージカル俳優といわれる人たちの王子様然としたこれ見よがしな歌や佇まいは苦手なほうなのですが、柿澤さんはそんな感じがなく、自身の発明した薬で2つの人格に分裂し、苦悩し身もだえるジキルとハイドの憑依した姿を、とてもリアルに、エモーショナルに、美しく演じ切っていました。地鳴りのようなカーテンコールが鳴りやまないほど。
 
 オケの指揮者は、ミュージカル界では有名な塩田明弘さん。演奏はもちろん俳優の歌のキューやどこまで歌い上げるかなど、上演中の演技と歌の流れをすべて操っているといっても過言ではなく、上演中の存在感が大きい。比較的少人数でもすばらしい音の生オケ、そして熱量をもって歌う俳優の生歌のすばらしさに、すっかりとりこになってしまいました。

 ミュージカルは初心者にはやっぱり敷居が高く、なかなかとっかかりがないと「観に行こう!」という気にはなれませんが、今回の「ジキル&ハイド」をきっかけに、直近の上演作を調べたり、(ミュージカルは映画の舞台化が多いので)元になった映画を観たり、アメリカ演劇・ミュージカル界の賞であるトニー賞での評価を調べたり、演劇への新たな扉を開けた、という気がします。そういえば私、中学生の時は演劇部で文化祭で舞台にも立ったことがあったんですよね。そんなことを思い出しました。
 
 といっても、なんでもが自分にハマるとは限らないので、次は何を観に行こうか、エンタメ情報を調べるのも楽しい毎日。劇場でもらってきたフライヤーを眺めながら余韻に浸っていたら、なんと! 7~9月に上演する「ミュージカル ファントム」に息子の小学校の同級生が出演するのを発見! 小学生のときも子どもミュージカルをやっていたようでしたが、その後音大の声楽科に進んだらしく。やっぱり、次は翼くんの応援を兼ねて「ファントム」かな。このような偶然の発見も楽しいです。


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