静寂の中で

音楽と私の関係は、少し特別だ。音楽を聴くと、なんだか心がざわついてしまう。まるでアレルギー反応が出るみたいに。でも、世界中が音楽に包まれているから、どこに行っても音楽からは逃れられない。 カフェに入ると、BGMが私を出迎える。

コーヒーを飲みながら、自分と向き合いたいのに、メロディーが私の思考に割り込んでくる。まるで、音楽が私の心に入り込もうとしているみたいだ。でも、私はその誘いを断るしかない。だって、音楽と一緒に歌う勇気なんて、私にはないから。

私にとって、音楽はノイズでしかない。でも、周りの人たちは音楽を楽しんでいるようだ。私だけが、音楽の輪から外れている気がする。 電車の中では、イヤホンから漏れる音楽が私を囲む。

隣の人は、音楽と一体になっているみたいに見える。リズムに乗って、身体を揺らしたり、口ずさんだりしている。でも、私にはその世界が理解できない。

音楽がない世界で生きている私には、まるで異星人のように感じる。私の世界は、音のない静寂に包まれている。 友達と話していても、音楽の話題になると、私は置いていかれる。みんなが知っている曲を、私は知らない。音楽を共有できない私は、仲間はずれなのかもしれない。

でも、私には音楽の代わりに、静寂という親友がいる。静寂の中で、自分の思考と向き合える。音楽に頼らなくても、自分らしく生きていける気がする。 音楽と距離を置く私は、音楽のない世界を探し続けている。

でも、それは音楽を拒絶しているわけじゃない。音楽を愛する人の気持ちも、私には分かる。ただ、私にとって心地よい場所が、音楽のない場所なだけ。音楽と一緒に生きる人も、音楽なしで生きる人も、それぞれの選択を尊重し合える世界になればいいのにな。

私は、自分の心の声に耳を澄ませる。音楽に頼らなくても、自分らしく生きていく方法を探している。時には、音楽のない静寂の中で、自分自身と向き合う時間も必要だと思う。そこでは、自分の内なる声がはっきりと聞こえてくる。

音楽と一線を画す私は、きっと特別な存在じゃない。でも、私なりの音楽との付き合い方を見つけていく。そして、音楽好きの人たちにも、私の世界を少しだけ覗いてもらいたい。お互いの違いを認め合える世界になったら、きっと私も音楽と仲良くなれるはずだ。

今は、音楽のない静かな部屋で、自分と向き合う時間を大切にしている。この静寂が、私の心を癒してくれる。そして、いつか音楽と和解できる日が来ることを、ひっそりと夢見ている。

でも、和解するまでの道のりは、きっと簡単じゃない。音楽が溢れる世界で、音楽と距離を置く私は、まるで泳げない人が海に放り出されたみたい。必死に足をばたつかせても、波に飲み込まれそうになる。

それでも、諦めずに自分なりの泳ぎ方を探していくしかない。 時には、音楽の波に飲み込まれそうになりながらも、私は自分の心の声を大切にしていく。音楽と一緒に生きる人たちの中で、私は私らしく生きていく。

そして、音楽と向き合う勇気を少しずつ育んでいく。 いつかは、音楽と手を取り合って、一緒に歩いていけるようになりたい。そのためには、まず自分自身を受け入れることから始めないと。

音楽と距離を置く自分も、音楽に飲み込まれそうになる自分も、全部ひっくるめて私なんだ。 私と音楽の物語は、まだ始まったばかり。

これから先、どんな展開が待っているのかは分からない。でも、私は私らしく、音楽と向き合っていくつもりだ。そして、音楽と私が、互いを理解し合える日が来ることを信じている。