社会人劇団を、やろう。
「会社で自己紹介シートを書く機会があったの。そこで趣味欄に“演劇”って書いたんだけど、誰からもツッコまれなくて(笑)」
「えー! 私なら速攻で話しかけに行きますよ!」
「ははは! そう言ってくれるの、たぶん演劇人だけだよ」
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稽古場で、私はこんな会話を交わした。
その人は私が所属していた演劇サークルの大先輩で、今は会社員をしている。サークルの同期だった方とご結婚され、小さなお子さんも生まれて絶賛子育て中。カメラロールにずらっと並んだ子どもの写真をスクロールしながら、にこにこと頬を緩ませる。いいパパだ。その素敵なパパはまじめに会社勤めをしながら、今でもずっと演劇を続けている。
社会人劇団。
それは、会社員をしている人が夜間や休日に集まって稽古をして、活動している劇団のこと。
“会社員劇団”って言ったほうがニュアンスが近いかもしれない。要するに、本職で俳優をしている人の集まりではないってこと。
それでも、しっかり外の小屋(演劇人は小劇場のことを「小屋」と言う)を借りて、有料のチケットを売って公演を打つ。
プロ並みの技術力を持つスタッフさんや上手い役者さんも多く、「趣味」と言いながらみんな真剣に楽しく活動している。
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「社会人劇団って、僕は良いと思うんだよね」
誰もが知る超有名企業に勤める先輩が、にこやかにそうおっしゃった。
その方も平日昼間は会社員として働きながら、劇団を主宰してコンスタントに公演を打ち続けている。打合せや台本執筆は深夜に及ぶことも少なくない。
劇場入りして舞台仕込みや場当たりを行う「小屋入り」の期間は、ここぞとばかりに有休を消化しているのだとか。
「演劇界隈ってさ、わりと身内感があるじゃない? それに付き合いで観劇に行くこともよくあるからさ、結局は劇場のお客さんも演劇人だらけで狭い世界だなって思うんだよね。
でも、社会人劇団はそうじゃない。会社の同僚や知人に宣伝して来てもらえたら、普段あまり演劇を見ない人にも楽しんでもらえるでしょ? そういう接点の大きさで言えば、社会人劇団って魅力的だなと思っていて」
先輩からしたら、何気ない会話の中での一言だったかもしれない。
けれども、私がこの言葉を強く記憶しているのには理由があった。
***
もう数年前になる。今はフリーランスとして働いている私だけど、当時は会社員。
ありがたいことに残業はほぼなく有休も使いやすい職場で、私は臆せずに演劇をエンジョイしていた。
「まだ演劇やってるんだね(笑)」なんてかつてのサークル同期から言われてチクッと傷ついても、「うるせえ!!好きだからいつまでもやってんだよ!!」と思いながらバリバリと劇団の仕事をこなした。楽しかった。
ある日ちょっと挫折するまでは。
お声掛けいただいて、衣装スタッフとして参加したとある劇団。
座組は顔見知りも多く、安心できる環境だった。脚本もおもしろかったし、高難度のプランはやりがいも十分。
けれども、その公演はいわゆる“会社員俳優”じゃない本職の役者さんが多かった。劇団が成長しているタイミングだったからか、過去公演に参加していた学生スタッフはほぼゼロ。
本業で演劇をしているメンバーが平日昼間から真剣に場当たりしている劇場に、夜になってから「お疲れ様ですゥ〜」とOLの格好でのこのこ現れる私。埋められない距離感を覚えてなんだか悲しくなった。
本気で頑張って、クオリティにもこだわっていたはずだけど、この人たちには敵わないのかも?
会社員との二刀流? 中途半端な私、かっこ悪。
演劇もついにここまでかな。
寂しくなった。
傷心していた私が縁あって先ほどの主宰さんに出会い、再び演劇の楽しさを取り戻していったのはその後の話。
***
結局今では、会社員でもなくなったし本職の演劇人でもないけれど、やっぱり自分と演劇は切り離せないものだと思ってる。
学生時代の青春。汗まみれの稽古着、叩き場で汚れながらの大工仕事、開演前の舞台袖の薄明かり、木屑と埃だらけになって平台の上で眠る夜。
もっと遡れば、10代の頃に舞台への強い憧れを持ち、中高の部活で6年間もがき続けたあの日々。
私の“アイデンティティ”であり、原点。
そんな私がいちスタッフとして、全力をぶつけます。
2022年9月9日(金)〜11日(日)、ザムザ阿佐谷にて。
観に来てね。
劇団ハーベイ・スランフェンバーガーのみる夢
第6回本公演
「自分の顔が愛せない」
2022年9月9日(金)〜11日(日)
於 ザムザ阿佐谷
あの、顔変え屋ってこちらであってますか・・・?
東京都山手線圏内のその地下に、
裏街が広がっている不思議な日本。
顔変えと、副業で肉屋もやってる店。
流行ってたから来店しちゃった女の子。
彼女の代わりに帰宅する赤い髪の女の子。
娘が入替わってるのに気づかない変な家族。
毎日毎日、せっせと写真をアップしてイイネ稼いで、
顔面補正して変なスタンプ乗っけてアニメキャラのアイコン使って、
自分の顔を愛して欲しくて欲しくてたまらない、そんなどこにでもいる普通の女の子の、
あんまり普通じゃない話。
■主宰・脚本・演出
荒川大(劇団ハーベイ)
■出演
加藤 恵実
寺尾 みなみ
ちこ ゆりえ(坊ちゃん嬢ちゃん)
小倉 愴(劇団すていちゅーん)
マタハル(坊ちゃん嬢ちゃん)
中村 亘
松原 圭
小山 ごろー
高瀬 キリン(劇団ハーベイ)
■公演日程
2022年9月
9日(金)19:00〜
10日(土)13:00〜/19:00〜
11日(日)12:00〜/17:00〜
※上記は開演時刻です。開場は開演の30分前です。
■会場
ザムザ阿佐谷
【アクセス】
JR中央線・総武線
阿佐ヶ谷駅 北口より徒歩2分
(新宿より快速で9分 土日祝日は各駅停車をご利用下さい)
阿佐ヶ谷駅北口を出て線路沿いを荻窪方面へ
右手に見えるTOAフィットネスクラブの北側
【所在地】
〒166-0001
東京都杉並区阿佐ヶ谷北2-12-21
【劇場WEB】
http://www.laputa-jp.com/zamza/main/
■料金
【一般】前売 3500円 当日4000円
【学生】前売 2500円 当日3000円
※当日券は前売券に対し500円の追加料金が発生致します。
※トリオ割…1人あたり3000円(前売りのみ)
※11人割…1人あたり2500円(前売りのみ)
※全て税込価格表示
■ご予約(↓こちらをクリック!↓)
※上記リンク先の「Corichチケット!」からご予約ください。
※サツマ宛のDM・メール問い合わせでも受け付けています。
■スタッフ
舞台監督・美術 村田 夏海
舞台監督補佐 城木 深春
音響 田中 悠也 / 岡 みのり
照明 松竹 理奈
衣装 サツマルリ
制作 SLY
宣伝美術 T
小道具 最上 友里絵
■WEB・SNS
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