開館して「見えた」光景とは。アーティゾン美術館
コレクションの現在地から望む地平。
空と海の境界を埋めつくすアートの今、それから未来へ。
東京都・京橋のアーティゾン美術館、ここは2015年までブリヂストン美術館として親しまれていた。ビルの建て替えとともに閉館、あれから5年。名前も装いも新たに、「想像の体感」をコンセプトに生まれ変わった。
東京駅の八重洲中央口、あるいは日本橋駅や京橋駅から徒歩5分。交差点のそばにすっと立つビルが見える。モノトーンの石材はシックな色合いで街に馴染みつつ、壁のちょっとした凹凸や吹き抜けの開放感は遊び心を感じさせる。
このミュージアムのはじまりは1952年、株式会社ブリヂストンの創業者・石橋正二郎が自社ビルの2階に美術館を開設した。
彼が自ら収集したコレクションは、古代美術・印象派・日本近世美術・日本近代洋画など多岐に渡り、並ならぬ美意識を感じさせる。4年後に財団法人石橋財団が設立され、今では20世紀美術や現代美術にまで視野を広げている。
エントランスの階段を登る。いざ、展示室へ。
開館記念展 見えてくる光景 コレクションの現在地
展示室
へぇ、音声ガイドを無料で借りられるんだ。
スマートフォンのアプリに手持ちのイヤホンを接続して、再生ボタンを押す。位置情報を利用して、近くにある作品を画面に表示してくれる。
何ならアーティゾン美術館は学生無料。都内の美術館ではなかなか無い。学生のときに、この場所と出逢ってみたかったな。
新たな旅出を記念する今回展では、見せ方に工夫とこだわりを感じられた。
まず「アートをひろげる」というテーマでさまざまな年代のコレクションを展示。次に「アートをさぐる」と題して同じ作家たちの絵を7つの項目ごとに見せている。この2部構成が素晴らしい。
第1部でアーティゾン美術館が収蔵している作品を知り、第2部でそれらを異なる切り口から鑑賞させる。例えるなら「まずは……わたしの人となりを知ってね?」「次に……わたしをさまざまな角度から見て、意外な一面や新たな解釈を見出してみて!」とフレンドリーな姿勢で、まるで所蔵作品や美術館そのものについて深く触れる機会を生み出しているかのよう。
さらに仕掛けとしておもしろいのは、「アートをひろげる」で登場したクロード・モネの《睡蓮》が、「アートをさぐる」の「異界」の項目で再登場すること。
これは現実の光景のようでいて、実は画家の目に映った異界の景色なのかもしれない、と鑑賞者は気づく。
少し伸びをしたくなったら、太陽光が差し込むビューデッキで一休み。
至近距離で作品の質感までもを余すところなく楽しみながら、鑑賞のおもしろさを改めて実感できるような展示だった。
企画展と同時開催される「石橋財団コレクション選」もここでは見られる。名品揃いでなかなか楽しい。
ミュージアムショップ
展示室を出てミュージアムショップへ。
企画展限定のアイテムだけではなく、美術館オリジナルグッズも数多い。スタイリッシュなキーホルダー、ステーショナリー、歯ブラシ、それから知育玩具まで。彩り豊かな商品に、思わず目移り。
「いらっしゃいませ!」とスタッフの方がにこやかに声を掛けながら、売り場を整理している。
近くにいた初老の男性が、「これをください」と言ってレジの女性に商品を差し出していた。微笑んでいるように見える。何を買ったかはよく見えなかったけど、きっと美術館が好きなんだろう。
そんな様子を見つつ並んでいたら、「お待ちの方、奥のレジへどうぞ」と先ほどの女性が朗らかな笑顔で手を挙げた。
ミュージアムカフェ
ショップを出て階段を降り、元来た場所へ。
1階の開けたスペースにある、ミュージアムカフェに寄ってから帰ろう。
モノトーンを基調とした空間はシックで都会的。メニューもお洒落で、展覧会のチケットがなくても気軽に休憩できる。場所柄、外国人の来館も多いのだろう。「出汁リゾット」や「抹茶ラテ」など日本風のメニューが充実していたし、ヴィーガンやベジタリアン向けのラインナップがあるのもありがたい。
注文したのは、ほのかに薔薇の香りがする焙じ茶。
このカフェでご飯を楽しむコツをひとつ。
ランチタイムはコース料理だけなので、食事がしたい方は14:30からのカフェタイムに来店するのがおすすめ。ガレットやオープンサンドなどのメニューがあるので、少し遅めのお昼ご飯にすると丁度良い。
他に館内には、アーティゾン美術館のさまざまな情報を閲覧できる「インフォルーム」のコーナーもある。過去の展示について調べたいときにもぴったりだ。
おわりに
ARTのHORIZONだから、アーティゾン。
地平線から再び太陽が昇ってきた。芸術の未来へと繋がる世界。この場所からの光景を、これからも見ていたい。
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アーティゾン美術館
〒104-0031 東京都中央区京橋1丁目7−2
TEL:03-5777-8600
公式ホームページ