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対話するリーダーシップ #21 話を遮らない

対話するリーダーシップ#21 話を遮らない

あるグローバル企業のアジア太平洋地域のリーダーシッププログラムを担当することにあたって学んでいることをお伝えしてみたいと思います。学んでいること、そこに関する問いをnoteとPodcastで共有することでビジネスパーソンの方々のご参考になったらと思っています。

今回は、話を遮らないというテーマでお話ししたいと思います。
以前もご紹介したNancy Klineさんの最近の著作についての記事です。Nancyさんは、リーダーシップ育成のコンサルタント、著述家、パブリック・スピーカーです。1984年から「Thinking Environment (考える環境)」というプログラムを教えられています。今回は、こちらの2020年の記事からです。

話を遮らないというと、どんなイメージを持たれるでしょうか。それは当たり前という方もいらっしゃると思います。ただ、実際の会議の場、打ち合わせの場、1 on 1 の場などで、ご自身が話しているときに、最後までじっくりと聴いてもらえる・・・ということはどれだけあるでしょうか。もちろん、発表するような立場では「質問があればいつでもどうぞ」というスタイルの方も多いでしょうし、そのことを当たり前と思っていらっしゃる方も多いとも思います。

Nancyさんは、考えるための環境として、一人で考えるだけではなく、対話をしながら考えていくことを「Thinking Environment (考える環境)」というプログラムにして教えられています。相手が自分の話をしっかりと注意を向けて聴いてくれる、そんな安心感の中でこそ、思考を広げることができるというそういう発想に基づいています。だとすると、対話のなかで自分が最後まで話をできるかどうかというのは、とても大きなポイントになります。

ただ、考えるための場という前提をおかなくても、話を遮らないというのは、あったらよいのになと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際、アメリカのGottman Instituteという機関の調査によると、アメリカでは、聴くことを仕事としている人(医師、セラピスト、コーチ、マネージャー等)でも、対話の中での聴く時間の平均値は、2017年には20秒であったのに対し、2020年ではわずか11秒になっていたという結果があるそうです。元々、アメリカの方は、文化的にはお互いに被せながら会話をすることも多いですし、沈黙を不安に思うところもあるので、3年前の20秒という時間の短さに驚いた方もいらっしゃるかもしれません。ただ、この短くなっているという傾向は、かなり驚きます。Zoomでは間合いが読み取りにくいこともあるので、実はこの間・・・というものがさらに犠牲になっている可能性もあるかもしれません。

最近は社会の中でも分断が進んでいると言われます。Nancyさんは、分断とは、何かに同意できないから起きるというのではなく、お互いが繋がることができないことで起きると考えられています。確かに、同意できなくても、本来は相手の意見をしっかりと聴くことはできるはずです。意見が異なるときに、相手を説き伏せることにではなく、お互いをまずは理解しようとすることで、確かに繋がることはできるのではないでしょうか。

どうして話を遮ってしまうのか。スマートフォンのおかげで、アラートや通知に慣れてしまい、集中できる時間がますます短くなっていることもあるとNancyさんは考えています。ただ、それでよいのか。自分が相手にきちんと注意を向ける、それはできることではないでしょうか。加えて、特に何かの会議の場では、相手の話をよく理解するために一度質問するというよりも、むしろ自分の意見を話すために遮ることも多いのではないでしょうか。

私自身も、最近、ペアワークでお互いに人生のパーパスを探る対話をしました。その後のフィードバックで、対話の中で、どこかに導こうとするのではなく、もっと理解しようとする質問、確認をしてくれたことが本当によかったと言ってもらいました。まずは聴こうと思っても、つい、アドバイス的なことを言ってしまいそうになる・・・ということはよくあるのではないでしょうか。Nancyさんは、そういう気持ちを手放すことこそ、大切ではないかと言われています。誰かが話しているときに、質問したくなったら、その質問の意図を考えてみることが必要ではないでしょうか。

最後に、Nancyさんの言葉を引用したいと思います。

考える環境を創るということは、リーダーシップの最初の責任である
Creating a Thinking Environment is the first responsibility of leadership.
Nancy Kline (渡部訳)

環境の変化の激しいVUCAと言われるような時代、ご自身の周囲の方、チーム、組織の方が主体的に考えること、考えられる場を作ること、ますます大切になっていると思います。

本日の問い
相手の方の話を、遮らずに聴くことができているでしょうか。
質問をするとき、どんな意図で質問しているでしょうか。

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