対話するリーダーシップ #20 人生をどう測るのか
あるグローバル企業のアジア太平洋地域のリーダーシッププログラムを担当することにあたって学んでいることをお伝えしてみたいと思います。学んでいること、そこに関する問いをここで共有することでビジネスパーソンの方々のご参考になったらと思っています。
今回は、人生をどう測るのかというテーマでお話ししたいと思います。
これは、アメリカの経営学者で、イノベーション論で有名なクレイトン・クリステンセンさんが晩年に話された内容です。クリステンセンさんというと「イノベーションのジレンマ」という世界的な著書や、破壊的イノベーションという言葉で思い出される方も多いのではないでしょうか。業界で最も成功している会社ほど、その事業の成功のパターンに縛られてしまい、顧客にとっての新たな価値見出した会社による破壊的なイノベーションによってその地位を追われることになるといったものです。
今回取り上げるのは、人生そのものについて、脳卒中という大病を経て、クリステンセンさんが話されたテーマです。
こちらのテーマでのハーバード・ビジネスレビューの記事、TED Talkです。
How will you measure your life?
「今日、人生がどうしてこうなっているのか、説明してもらえないかな」
とクリステンセンさんは問いかけます。こう聞かれて、説明できるでしょうか。
クリステンセンさんは、日々仕事に没頭してしまう人について考察します。ご自身もハーバードビジネススクールの卒業生で、5年ごとに同窓会があるそうなのですが、10年、15年・・・と経つうちに、だんだんと同窓生がパートナーとの関係、家族との関係などがうまくいかなくなっていることに気がついていったそうです。仕事は順調そうなのに、なぜそういうことになってしまうのか。仕事では、何らかの達成が目に見える形であって(投資や取引の成果、出荷という形で物が動く)といったことがあるのに対し、例えば家族との関係性などは、すぐに見える成果というのはなかなかない。時間がかかること。子供となると、20年経って、ようやく良かったと言えるようになるくらいかもしれれない。だから、つい、短期的に達成が見えることにのめり込んでしまう。
ハッとさせられました。目の前のことに没頭してしまうこと、そして達成感が得られることであればなおさらです。個人の評価に関しても、年次の目標設定にあたっても、年間ではなく、できるだけ細かく期間を特定し、仕事の段階的な成果を測っていくことが求められるようになっていると思います。そんな時に、つい、仕事以外のことは見過ごしてしまいがちだと思います。ご家族、友人、そして何より、ご自身のことが後回しになっている方も多いのではないでしょうか。
敬虔なキリスト教徒でもあるクリステンセンさんは、こんな風にも語ります。「神様は会計士を雇わない。私たちのような限られた認知機能ではなく、無限の認知機能、頭脳を持たれているから。会社のように様々なレベルから数字を吸い上げて、まとめる必要はない。個人それぞれの行いを全てわかっている」
「私の人生についての神の審判とは『与えた才能を、どう使ったのかね』ということになる。だとすると、私が自分に問うべきは、自分が何らかの形で接した人に、何ができたのかということだ。こう問いかけて日々行動すれば、あなたの人生は成功となる」