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ぬしさま
その部屋は、長い廊下を曲がった、一番奥にありました。
そして、部屋の前には、少し大きな池がありました。
なんでも、特別なお客様を通すための部屋で、子どもの私が入って
行くことはありませんでした。
しばらくして、その家から引っ越すことになりました。
引っ越しをする最後の日に、初めてその部屋に行きました。
縁側に座って、池と庭を眺めていました。
私は何気なく、縁の下を覗いてみました。
すると、縁の下の奥に、いたのです。
小さめのポットくらいの大きさの、白蛇が。
その白蛇は、私に優しく微笑んでいるような気がしました。
私は、見てはいけないものを見てしまったように感じて、その場からすぐに立ち去りました。
当時私は、小学校の一年生でした。
学校からの帰り道、時々道のまん中に、でろ~んと蛇がいました。
その蛇たちは、鮮やかな黄色と黒のものや、青と黒といった、2色使いの
へんな色をしていて、いつも道の端から端まで横たわり、通せんぼをしていました。
小さい私は、遠回りをしなくてはいけなくて、困ったものでした。
今思えば、あの蛇たちも、見てはいけないものだったのかもしれません。
そんなことがあったことを、つい最近になって母に話しました。
母は言いました。
「あの家の池には、昔からぬしがいるそうよ。」
「白い蛇なんだって。」
私が見たのは、池のぬしだったのかもしれません。
その家から引っ越してからというもの、見てはいけない蛇は
もう見なくなりました。
今回は、不思議な体験のお話でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
大寒波がやってきました。お風邪をひかれませんように。
💗感謝💗 天海瑠璃