第23回 IT × 里山の可能性:ITを地域の価値創造に活かすには?
2018.01.17
関 治之
一般社団法人 Code for Japan 代表理事
概要
市民自身がITを活用し、地域課題を解決するシビックテック(Civic Tech)の活動が広がっています。
オープンデータの活用やアプリの開発などにより、地方の医師不足や公共交通問題、地域経済の衰退といった社会的課題を解決する可能性を秘めています。情報基盤・通信環境がほぼ整いつつある今、過疎高齢化の進む農村部でこそ、適切にITを活用することによる恩恵は大きく、さまざまな分野での活用が期待されています。
今回は、国内でシビックテックの動きを牽引してきたコード・フォー・ジャパンの関代表をゲストに、「 ITを地域の価値創造に活かすには?」ということについて考え、実践につながる機会になればと思っています。
第1部 講演「 コード・フォー・ジャパン の取組みについて」
1部では、コード・フォー・ジャパンのこれまでの取組みや理念、取組みの面白さや意義について代表の関さんよりお話しいただきました。
「ITの力で地域の課題を~」と聞くと、ついエンジニアやプログラマ等のITに明るい人だけが関わるもので他の人にとって関わりのないものと思われがちですが、地域で「自分たちの課題を自分たちで解決する」ことを目指して取組みを協働で進めていく上では、エンジニアやプログラマでない人でも参加できる余地はあるし、取組めることは多いという話が印象的でした。
第2部 グループディスカッション「ITを里山の価値創造に活かすには?」
小休憩を挟み、2部では3つのグループに分かれ、ワールドカフェ形式(今回は20分ずつ3セットで各テーブルでの対話の内容を共有しながら進行した )でディスカッションを進めていきました。
テーマは 「ITを里山の価値創造に活かすには?」 。どのテーブルも議論は盛り上がり、「AIと農作業」、「獣害対策として檻の遠隔操作やサル群の位置についての情報配信」、「草刈ロボットの活用」、「評価に基づく住みやすさや地域性といった地域情報の位置情報化」等、多岐にわたりました。
発表の後に、各グループで出たアイデアや対話の内容をふまえ、関さんから関連する取組みの例として、プログラマやエンジニアと林業関係者が一堂に会し分野の課題解決を目指しその場で開発まで進める「林業ハッカソン」の取組み等を紹介いただき、たとえば獣害ハッカソンや草刈ハッカソンといったように、特定のテーマでさらに絞ったイベントを開催しても面白いのではという話が出ました。
また、今回の対話の中でも実際にあったのですが、行政の方を交えてこうしたワークショップを実施すると、すでに行政サービスとして提供しているものを住民は意外と知らないということに気づくことがあるということでした。
たとえば、サル群の位置をメールで配信するサービスはすでに提供されていて、そういうサービスがあったら良いのでは、という会話の中で「もうありますよ」と情報提供されたものです。
何かに新たに取組むことが必要と思われがちですが、実はすでに実施されている取組みをいろいろなかたちで発信することも大事で、そうしたできることから始めていくことの重要性に気づく機会にもなったのではないかと思います。