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関係人口ってなんだを振り返る

文京区にあるRural coffeeで隔週水曜日に開催される、”もやもや円卓会議”。その内容の振り返ってゆくnote連載、この度は記念すべき第一弾です。今回のテーマは「関係人口」。

存在感を放つ、関係人口ということば

地域で活動する人なら、一度は聞いたことがあるワードかもしれません。「関係人口づくりが目標だよ」、という方もいらっしゃることでしょう。

逆に、これまで地域に関わったことがなかった人で、地域に興味のある人は、「まずは関係人口になる」ことを考えていらっしゃる人が多いかもしれません。

そんなふうに、地域に関わる私たちの頭の中で、キーワードのように存在感を放つようになった「関係人口」ということば。

関係人口のもやもやポイント3つ

でも、振り返ってみると、よく考えて使ってないような気もしませんか。そんなもやもやに着目して設定した今回のテーマ。

今回は、もやもやを一緒に考える”一緒に円卓を囲む人”として、富山県にある人口500人の村”利賀村”をフィールドに関係人口づくりの活動する大学生松尾さん(松尾さんが参加されている活動についてはこちらをご覧ください。)にご参加いただき、会の中では、3つの点で考えてみました。

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①どういう状態を関係人口というのか

②どういうステップで関係人口が生まれるのか、その際のポイントは何か

③なぜ/なんのために関係人口をつくるのか

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盛りだくさんで、それぞれちょっと重めな話題を、ご自身の経験をもとに、軽やかに触れてくださった松尾さん。ここからは、松尾さんの経験に基づく考えと参加者の皆さんから出た意見を交えてお伝えしていきます。

①どういう状態を関係人口というのか

まず大事な、言葉そのものの定義。もやもや円卓会議が大事にしているポイントです。

松尾さんの考える関係人口は、

その地域に対して 何かしらの⾏動に移すほどの愛着を持った⼈」。

観光人口と移住人口の間の状態という一般的な定義を、”行動”と”愛着”というワードで松尾さんなりにより深く定義しています。この定義の意図は、②、③以降で明かされます。

また、参加者のAさんからは、

「”その地域で活動するのが楽しい”という要素も、関係人口の状態に含まれる」という意見も。Aさんご自身は、なんのゆかりもない島に家を買い、定期的に通って地域で活動していらっしゃっているとのこと。そして、その活動がどうしようもなく楽しい、だから通い続けられる、と語ります。

このAさんの定義、みなさんはどう考えますか?

私は、一般的に知られている関係人口の定義に照らすと、必要な要素というよりは、理想の要素に近いのかな、と最初は感じました。しかし、そういう状態でなければ、地域に関わる持続性が生まれないという点や、主体的な行動が生まれないという点から、実は必要な要素といえるかもなあ、と思い至りました。ただ、この点は関係人口の目的(すなわち③)とも関連してきそうです。

こんなふうにもやもや円卓会議では、それぞれの経験を通して得た感覚のを定義に落として共有します。そうして、今まで立ち止まって考えてこなかったもやもやをパキッとさせたり、時にもっともやもやさせたりしながら、より本質的で、今後の活動の拠り所になるような定義を考えていきます。

②どういうステップで関係人口が生まれるのか

定義の次に考えたのは、どういうステップで関係人口が生まれるのか、ということ。

ここで、一口に関係人口といっても、2つの立場があるよね、という話を挟みたいのですが、2つの立場とは、

・関係人口をつくる側の人

・関係人口側の人

のこと。

どういうステップで関係人口が生まれるのかという問いは、このうち「関係人口をつくりたい人」にとって特に避けては通れない問いであるといえますね。

さて、そんな今回の問い。松尾さんは、ご自身が、

・活動を通して関係人口をつくる側の人

である一方で、

・個人としては利賀村の関係人口側の人

でもあるということを生かして、自分がどのようにして関係人口になったかを振り返りながら、関係人口を作る側の人として、モデル化したステップを提示してくださいました。

<松尾さんが利賀村の関係人口になるまでのステップ>

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このようなご自身の体験から、関係人口が生まれるステップとして挙げたのは、①接点づくり、②村への導線、③愛着づくりという3つのステップ。

<関係人口が生まれるステップ>

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参加者のBさんからは、オンラインでの活動しかできない現状において、関係人口を生むステップが踏めないのではないか、という声も。Bさんは、関係人口づくりそれぞれのステップにおいて、身体性を伴う体験が不可欠だと考えているようでした。

Bさんの意見について、みなさんはどう考えますか?

最近では、恋愛マッチングアプリから移住相談のプラットフォームまで、オンライン上の接点がその後の関係性づくりの起点として十分に役割を果たしている例も多くあります。ステップ1に関しては、オンライン上でも十分に実現できるのかもしれませんね。今なにができるのか、でいうとこの点は強化ポイントと言えそうです。

また、松尾さんは、このステップの中で特に必要なこととして、以下の2つの要素を挙げています。

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”その地域に対して 何かしらの⾏動に移すほどの愛着を持った⼈”という、松尾さんなりの関係人口の定義と照らすと、確かに必要な補助線的要素・仕組みですよね。このように、定義がパキッとしているとそれを達成するのに必要なことも自然にわかります。

③なぜ/なんのために関係人口をつくるのか

さて、この回の山場の、関係人口の意義/目的についての問い。

ここでも、関係人口をつくる側と関係人口側から見つめました。

松尾さんは、

関係人口側の人にとっては、

関わる⼈と⼈⽣の選択肢が広がって、 豊かになったと感じること

関係人口をつくる側の人にとって

関係⼈⼝は連鎖を呼ぶ 村のがんばる⼈にとって勇気になること

を挙げ、関係人口づくりの意義を語ってくださいました。

人口減少対策としての移住政策につながる、とか、地域にお金がまわる、とかの大きな課題解決ではなく、もっと細かな視点の、「そこに関わる人にもたらされる豊かさ」について着目し、意義を見出していますね。この定義であれば、①の問いでAさんが挙げた「楽しい」という要素も必要要素といえるのかもしれません。

もやもやに向き合うことの意味

さて、以上のように大きく3つのもやもやを、ひとつずつ、互いの経験を踏まえながら定義してみた今回のもやもや円卓会議。

読んでくださったみなさんのもやもやは晴れましたか?

もちろん、もやもやが晴れることが最終ゴールですが、私たちRURAL LABOは、立ち止まって考える、ということそのものに意義を感じています。一緒に考えてみたい、という方はぜひ次回のもやもや円卓会議へご参加くださいね。

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