A&Sのヴィクトリアンケーキ

「DOWN THE STAIRSの」と書くべきかもしれないけれど、
私にとってこのヴィクトリアンケーキはA&Sに帰属している。
そして今回は、
白い生クリームと赤いラズベリーソースが
今の時期にぴったりな光景だなあと
運ばれてきたときに新鮮な幸福感を味わえた。
微かに胸に灯るほの暖かい幸福感。

このケーキの本当に重要なところは、
カトラリーと器だと思っている。
あのカップとあのお皿でないといけないし、
何よりあのフォークとナイフで食べないとあの味わいにはならない。
ケーキのお供はセイロンディンブラ。
これはイギリスのイメージから生まれた個人的な思い込みかもしれないけれど、
やっぱりこのケーキには紅茶が合うと思う。
ケーキをお食事のようにフォークとナイフで食べる、という
特別な時間!
ナイフを入れた感触で
ちょっと重めのしっかりした生地なのかな、と思うのに、
口に含んでびっくりする。
濃厚ではなく軽いのにフワでもカサでもない、
そして緻密な生地。
間にサンドされた甘みが加えられていない生クリーム、
そのピュアなミルク感を味わうためだけに作られたような
奇跡の生地。
生クリームの胸がいっぱいになるようなゆったりした乳脂肪と
フレッシュなラズベリーソースが持つ少女のような酸味と楽しい甘みとの相性の良さは、
誰もが知るところ。
もういくらでも食べられる!と思いながら無心に味わっていると、
最後にはちゃんとお腹いっぱいになるところもいいなあと思う。
本当はランチを食べたあと、
2人でこのケーキをシェアする食べ方がいいのかなという気もするけれど、
どうしてもこのケーキを独り占めしたくて、
いつもランチの代わりにヴィクトリアンケーキを注文して、
ランチを食べるお客様に囲まれながら、
1人でナイフとフォークでもくもくケーキをたべて、
お腹も気持ちもいっぱいにしている。
そして食後はいつも
「もうヴィクトリアンケーキは満足!
今度は違うケーキにしよう」と思うのに、
しばらく経つとどうしてもあの幸福感が恋しくなって、
またランチにケーキを食べに行ってしまう。

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