見出し画像

無言の乱斗【令和に観ていく日活アクション!4】和田浩治15歳で主役になり、芝居をこなすミラクルさ

この映画は、今回アマプラで初めて観るもの。和田浩治のデビュー作である。当時、若干15歳で、裕次郎に似ているということでスカウトされ日活入社になったらしい。ある意味、ポッと出でのデビューだったわけだが、芝居は思いの外ちゃんとしている。この後、ダイヤモンドラインの一角として「小僧シリーズ」や一連の鈴木清順監督作品に出演していくわけだが、ほぼ変わらない演技スタンスで作品に出続けたことがわかる。

ダイヤモンドラインの他の三人と比べ年下のこともあり、作品的にも、他の日活アクションのパロディ的なものが多いが、若さもあり、当時はやりのロカビリーとの共演というか、歌が挟まる映画が多い。そして、この第一作でも、最後の方でステージで歌う佐川満男(当時ミツオ)や杉山俊夫が堀威夫のバンドをバックに歌っているシーンもある。他の映画もそうだが、和田の映画は当時の音楽的な貴重な資料でもあるのだ。

相手役はデビュー時から清水まゆみ。彼女は1967年「月下の若武者(津川雅彦主演)」の相手役のオーディションで合格して日活入りし、歳も和田より四歳年上だが、今見ても、この二人なかなかいいコントラストのコンビだと私は思う。

話は、冒頭で和田が高品格を刺して殺すところから始まる。母親を寝取られた男が、ノミ屋で大穴を当てて組の金をさらっていったことで、その金を取り戻せとヤクザに言われた男が高品だった。それで刺したという話なのだが、その事実を和田は喋らなかった。

そして、鑑別所に連れて行かれ、本編のほとんどは鑑別所の中の話。まあ、こういう話が、後に「あしたのジョー」に出てくるような話につながるのだが、ここで新入りがリンチされるような話はない。まあ、古参の人間は刺青入れて威張っているが・・。そして、ここでの生活で判断され、裁判もあり、少年院に送られるという話。

そこで、和田を気遣うのが葉山良二。この映画では彼がトップに名前を書かれている。つまり主演扱いだが、実質主演は新人の和田である。そして、和田がドラムが得意だという設定は、やはり裕次郎色があるということもあったのだろう。彼、後々、「ヤング&フレッシュ」のメンバーでバンド組んでもドラムでしたよね。

清水まゆみは、遊戯場で働いてるというが、そこは「ビンゴ場」である。こういう店は映画でも初めて見た。多分、それなりのカードを売って、それで当たりとかがあるということだろうが、今残っていないということは、面白くなかったのでしょうな。でも、店のいかがわしい感じが私的には面白かった。そして、この頃の歓楽街の風景は、いかにもバックにヤクザがいますよ的なところがあり、その地獄に落ちていく感じというか、澱みの深い感じが私は好きである。清水が務めることになるBarもそうである。入る早々ブタな雰囲気のママさんが「私じゃだめ」みたいなのは、流石にもうない世界ですよね。

結果的には、和田の真実を知ろうと葉山が動くわけだが、うまく和田に説明できずに和田が脱走する話になる。しかし、脱走時に壁を登るように階段が用意されてるが、そんなもの何であるのか?深く考えても仕方ないとは思うが・・。

そして、信じていたヤクザに清水を奪われたような形になり、和田が彼と闘うことになる。そこに至る乱闘は、もう一つキレがない。まあ、殺陣の付け方というよりは、和田がそれに慣れてなくてスローな感じになってしまっている。そして、それを止めようとした母親が最後に刺されるというのはお決まりのシーンのようだが、最後に清水に対する和田の誤解がとれた形で終わるのでいいというところか・・。この作品を見て、和田を主役で映画を作る続けようと会社が思ったのは理解できる作品。

「無言の乱斗」1959年12月1日封切 77分
西河克己監督 原健三郎原作 山崎巌、西河克己脚本 
葉山良二、清水まゆみ、和田浩治、白木マリ

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集