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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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2022年10月の記事一覧

「アイ・アムまきもと」今年観た、老人と死を扱う映画の中で最も感動させられた作品

もう、今年もあと2ヶ月半。秋は、色々と映画の公開も多い時期なので、作品を選ぶのも観るのも大変である。まあ、私にとっては秋に限ったことではないが…。基本的に作品情報は予告編とネットの書き込みの目についた物を観ているだけで映画館に行く私である。俳優で観ることもあるし、監督で観ることも、題材で観ることもある。時間が合うか合わないかも重要なところ。そんな中でこの作品「予告編」を見ただけでは、何の映画かよくわからなかった。だから、観るかどうかも悩んでいたが、時間がちょうど良かったので映

「愛する人に伝える言葉」人の生き死にの心の葛藤を映像に詰め込んで、生きている私たちに訴える優れた作品

中年の男が、膵臓がんで余命1年を宣告され、彼自身、家族、医者、看護師らの心の葛藤を追い、人間が生きる意味合いみたいなものを哲学していく感じの映画だ。映像の表現としては、人のクローズアップが中心で、心根を表情で表現していく感じの演技を積み重ねることによって、なかなか骨太な作品になっている。話、そしてテーマがシンプルな中、俳優たちの演技で飽きることなく、主人公の死を観客も一緒に看取った感じの作品。そう言ってしまえば、辛気臭いと考える方も多いと思うが、ただの御涙頂戴にしていない感じ

「夜明けまでバス停で」作り手のメッセージを的確に伝える現代に投げられる爆弾映画

2昔前は、日本国の中で、こういう映画がたくさんできていた気がする。今は何をビビっているのか、私にはよくわからない。先日は足立正生監督が安倍首相狙撃犯の映画を撮り、その上映に反対する輩に靡いて上映中止をする映画館がでたりしていたが、バカじゃないのか?と私は思った。映画の表現で政治を現実を描くことは自由だ。それを見たくないものは見なければいい。もちろん、天国の映画だと言って地獄を見せられたら、それはいけないだろうとは思う。安倍暗殺事件は、詳報がほとんど出ないままに、ママゴトみたい

「LAMB/ラム」不思議な世界に吸い込まれるが、顛末をどう処理するかは観客次第?

予告編を見て、この映画は「羊人間」の映画であることは分かったが、それが何を描こうとするものなのかはよくわからない。そして、観終わった今も、なんかピンとこない。多分、観た人それぞれにどう消化するか?ということなのだろう。確かに世の中には常識ではわからないことがある。しかし、その非常識を理解した気でいると、また痛い目に遭うみたいな映画ではある。(単純な話だからこそ、ネタバレされて見る映画ではない気がする。観る予定のある人は、これ以降、読まないことをおすすめする) まずこの映画、

「マイ・ブロークン・マリコ」永野芽郁、ほぼ一人芝居で映画を成立させる凄み!

監督は「ロマンスドール」のタナダユキ。主演は、昨今、女優力をすごく感じる、永野芽郁。この二つの要素で、早く観たい一作だった。結果的には、すこぶる斬新な小品でありながら、永野芽郁の振り幅の広い芝居で、自分の世界を目一杯開いて仕上げられたという感じの快作。もちろん、タナダ監督の映画創りの繊細さがこういう作品に仕上げているのは確か。 こういう一人称の語り的な映画っていうのは、昔からあったとは思う(あまり、自分の記憶の中から引き出せない)。だが、ここまでしっかりと、人の内在する世界