【婚姻史】
<類人猿>
我々は類人猿の子孫ではなく、類人猿です。類人猿は進化、分岐して、今ではオランウータンとゴリラとチンパンジーとボノボと新人=サピエンスが生き残っています。
ゴリラはボス婚=一夫多妻制で、オス同士が闘い、追い出し、殺し合い、勝った雄が群れを支配して、雌の連れ子を殺し、自分の子を産ませます。
オランウータンとチンパンジーとボノボは群婚です。(群婚の事を世間では「乱婚」と言いますが、「乱婚」には「道徳的にいけない性交」と言う意味が有るので、小生は群婚と言います。)新人=サピエンスも本来は群婚です。その証拠に性交の時に男は数分で満足しますが、女は数十分間求め続け、声を出して他の男を誘います。更に膣の中で複数の男の精子が競争し、精子がホルモンを出して、他の男の精子を排除し、卵子もホルモンを出して、相性の良い精子を誘います。
<旧石器時代>
旧石器時代の母系制氏族社会では、男達は狩りや漁に、女達は木の実拾いにいそしみました。収穫は平等に分配しました。生殖と宗教は未分化で、集団でキャンプファイアの回りで、多産を祈りながら性交したりしました。初期には男女は誰と誰がやっても自由で、群婚・自由恋愛でした。男の射精を「男の授乳」と言い、多くの優れた男達が膣に射精すれば、優れた子供が生まれると信じていました。(現代の狩猟採集民のヤノマミ族も同じ。)生まれた子供は共同で育てました。子供は村の男達全員を父と呼び、村の女達全員を母と呼びました。
女は子を一人産むのに一年近くかかるので、優れた男を慎重に選びました。男は相手さえ居れば毎日でもやりたいので、良い女を求めてムラからムラへ渡り歩きました。その結果、どこのムラも女は地元出身者ばかり、男はよそ者ばかりでした。だから竪穴住居などの財産は女が管理し、婆さんから母へ、母から娘へと女系=母系で受け継ぎました。ムラの掟や方針は巫女の婆さんが神のお告げと称して決めました。
<古代>
やがてヴュルム氷河期が終わって温暖化するのに伴い、草原から森林に変わり、大型草原獣が絶滅して収穫が減り、男達は磨製石器や弓矢を発明して、新石器時代になりましたが、小鳥や小動物を狩っても追いつかず、農耕や牧畜を始めました。農地や家畜などの生産手段は男の私有財産になり、それを男達は奪い合い、貧富の差が付きました。男達は女をも私有して、自分の子孫を特定し、財産を受け継ごうとしました。女から共同体の権力も奪い、女性を差別し、女を生殖資源として、他のムラとの外交手段に使い、交叉いとこ婚や平行いとこ婚になり、近親相姦を禁忌としました。更に有力者の一夫多妻制に、後に一夫一婦制になりました。収穫が少ないと、ムラとムラが闘い、勝ったムラは王や貴族になり、負けたムラは奴隷になりました。
女達は従来の群婚・自由恋愛か、結婚して人妻になるか選択を迫られました。結婚する場合はムラの男達とはもうできなくなるので、結婚前夜にムラの男達みんなとやりまくって、別れを惜しむ風習が世界各地に残りました。
<中世>
中世にはそれが変質して、ムラの男達の代表として、有力者とか聖職者が花嫁に対する初夜権を持ちました。
一方群婚・自由恋愛の名残りは歌垣や妻問婚や歩き巫女や夜這いや一夜ぼぼなどの形で後世まで続きました。夜這いは中世の農村の婚活で、若者組や青年団が取り仕切り、目当ての女性には事前に打診し、女性には拒否権が有りました。
<近代>
夜這いでは幕府や政府には税収が入りませんでした。そこで政府は夜這いや一夜ぼぼを禁止して、一夫一婦制を勧め、産業革命に伴って、農村の余剰人口を都市に流し、男は工業労働者に、一部の女は売春婦にし、性産業を整備し、税収を確保しました。
だが群婚・自由恋愛の名残りは更に不倫などの形で続きました。西洋のロマン主義が恋愛を歌い上げ、婚外恋愛を決闘で決着したりしました。
<現代>
優れた子孫を産むには遺伝的に遠い相手を選ばなければなりません。だから年頃の女の子は実の父親や実の兄弟を嫌い、「キモイ」と言ったり、「下着を一緒に洗濯するなんてヤダ。」と言ったりします。
んで、結婚して何年か経つと、いつも一緒にいる配偶者に対しては肉親かと脳が錯覚して、性欲が起きなくなります。そいで不倫をしまくり、先進国では4割の夫婦が離婚に至り、一夫一婦制は崩れつつあります。
恋愛経験がある程度あれば、いくら「君だけを愛してる」なんたって、××クスの相手が一人だけじゃぁいずれ満足できないのは誰でも自覚するだろうし、自分が不倫すれば相手の不倫もとやかく言えないのが自然な成り行きだし、お互いの不倫には気にしないようにした方がうまく行くのは、多くの夫婦が経験済みだと思うんですけどね。それを構造主義系の文化人類学者が無視して「原始乱婚は証拠が無いから無かった」などと言い張っても空しいばかり・・・
群婚・自由恋愛の名残りは更に援助交際などの形でも続きました。
一方、恋愛弱者の女は性的欲求不満でヒステリーを起こすと、精神科に連れて行かれます。満たされない女はホストに嵌ります。又恋愛弱者の男は性犯罪を起こすと刑務所に送られ、自己規制で精子が減ると、草食男子になりました。
経済的に自立した男女による群婚・自由恋愛、多夫多妻制に向かうしか解決しないと思います。ヒッピーや全共闘はそれを実践しようとしましたが、全共闘内部では女性差別がまかり通っていました。今ではオープン・マリッジやポリアモリーなどが試みられ、既婚者向けマッチングアプリも増えています。
長谷川眞理子『オスとメス~性の不思議』
ルイス・ヘンリー・モーガン『古代社会』
フリードリッヒ・エンゲルス『家族・私有財産及び国家の起源』
カール・マルクス『資本制生産に先行する諸形態』
ウィルヘルム・ライヒ『性と文化の革命』
高群逸枝『日本婚姻史』
マービン・ハリス『文化唯物論』
宇佐美静治『新・人類の起源』
クリストファー・ライアン、カシルダ・ジェダ『性の進化論』