奥田民生の曲の、好きな歌詞。
タイトルどうしようかと迷ったけど、もうシンプルにわかりやすくした!!これ以上わかりやすいタイトルはないでしょう!!
民生さんの魅力の大きなひとつに、その歌詞があると思う。
私自身、どんな素敵な内容を歌っている歌詞でも基本的に「はいはい口だけ口だけ、綺麗事の定型文」と思ってしまって全く響かない大変残念なひねくれ者なのだが、どうも民生さんの書く歌詞は違うらしい。
気取らず飾らない、素朴であたたかなその言葉たちが、ストンと心の隙間に落ちてきて、じんわり染み渡り消えてゆく。
そしてたまに、さりげない遊び心とセンスの良さを存分に発揮しクスッと笑わせてもくれる。
そんな民生さんの曲の、個人的に好きだと思う歌詞をただひたすらに羅列する記事でございますよ、ええ。いつか書いてみたかったんだよねぇ、両国ライブも近いし今書いちゃいますっ☆
「愛とはゆがみのつえ すべてのバランス」~なんでもっと~
人生で初めて「一聴き惚れ」した歌詞。
意味がわかるようでわからないようで、哲学的で、そこにどんな真意があるのか、はたまた真意などハナからないのかもしれない。
いずれにしろこの歌詞を初めて聴いたとき、ホッとするような、納得するような、不思議な感覚になった。
この後の「窓辺のいすで一人つぶやいた 特別君にとどいていようが いまいが」も民生さんらしい、素朴で素敵な歌詞だと思う。
「茜の空がまるで お部屋を血に染めるのよ」~674~
初めて聴いたときの衝撃といったら。聞き間違いかと思わず歌詞を確認してしまった。
あの穏やかで哀愁あるゆったりとしたメロディになぜこんな歌詞をつけることができるのか。
特に「民生さんが」この歌詞を書いた、というところに衝撃とギャップを感じた。
このままバイオレンスな雰囲気で続くかと思いきや、その後はいつもの民生節。このやり過ぎないところが民生さんのセンスを感じて大好き。
「彼等を超えて行け 涙で超えて行け」~KING of KIN~
…この曲本当に大好き。もうまじでずっと面白い。好きな部分を書こうと思ったら歌詞全部書くことになっちゃう。初めて聴いたとき終始爆笑しすぎて表情筋つりそうになったもん。さすがに歌詞全部書くわけにはいかないからこのお涙頂戴なところをピックアップしたけどさ。
ビフィズス菌のことだけでこんな面白くできる!?
「ビフィズスという名で菌は生きていて 菌あつかいはどうも だけどなおも 腸の中を掃除して」
この「菌あつかいはどうも」あたりが民生さんのセンスのよさ感じて大好き。なんかこう「いちいち言うようなことでもないけど一応不満には思ってますよ」みたいなニュアンスが笑
こんなやる気ないメロディから、間奏で急に、宮殿で兵隊の行進でも始まったかのような超豪華ブラスになって、またすぐやる気ないメロディに戻るところもめっちゃ好き、そんな待遇でも一応「KING」であることへのこだわりが感じられる笑
民生さんの面白さ、センスの良さ、そして遊び心が存分に詰まった1曲。
「キビしい ややこしい 平成を生き残れるのは 見た目もちょっと素敵な 働き者」~とくするからだ~
決して「見た目は関係ない」と言わないところがとても好き。だって実際見た目も大事じゃん。
大概こういう場合は「見た目関係ない」というところをそうは言わない、けれども「見た目が良い」「見た目が綺麗」ではなくあくまで「ちょっと素敵な」に留まるところも好き。
「ジャンプを決めろ キャラではなくても こうゆう時には 飛ぶのが礼儀だろ」~MTRY~
その場のノリに乗る、周りも自分も楽しいことを心がける、一見マイペースに見えるが実はいつも相手を優先しそちらに合わせている…そんな民生さんらしい歌詞だと思う。
民生さんの素敵なところがギュッと濃縮された一節。
この後の「おしりに必ず ベイビーをつけて歌えと教わった 感謝してるぜベイビー 先人の教えは守らなきゃ」も大好き。
素直に言いつけを守る子どものようにも、経験を積んだからこそ言える軽い皮肉のようにも聞こえて、受け取り手の感性によってどちらの意味になるかが決まるところも文章の奥深さを感じて面白い。(ちなみに私はひねくれ者なので後者の受け取り方をしました←)
「It's gonna be alright」~風は西から~
個人的民生さんの好きな歌詞シリーズに、「民生さんが歌うからこそ響く言葉」部門がある。
この「It's gonna be alright」は言葉こそよく聞くが、大概は、はいはい定型文ねと右から左へ聞き流してしまう。
しかし、滅多に英語の歌詞を入れることがない、入れるとしても遊び心やおふざけの場合が多い民生さんに、曲の一番最後、いたってさらっと、しかし真面目なトーンで「It's gonna be alright」と歌われると、なんだか「民生さんがそう言うならきっとそうなんだろう」と思えてくる。
「青春」という曲の「夜中に窓辺でひざを抱えて とおくで誰かが呼ぶ気がするのはなぜ もしかしたら気のせいじゃないかもしれないぜ」も、その部門に入る。
孤独を感じたとき、寂しいとき、その歌詞を聞くとなんだか涙が出そうになる。
「民生さんが言うならそうなのかもしれない」と感じさせてしまう「奥田民生の人間力」。彼の書く歌詞の大きな魅力のひとつだ。
「まだ×××○×△ ×××○×△ しつこい野郎だ 大きな心のない奴だ」~103~
民生さんマインドが垣間見える一節。
自分の家の外で車のクラクションが鳴りまくっている、という状況なのだが、「何があったか知らんがそんな鳴らさんでもいいだろ!!心の余裕が足りてないんだよ余裕が!!」的なニュアンスが実に民生さんらしい。
何かトラブルや問題が起こっても、焦らず怒らず、じゃあどうしたらいいのかを考える。そんな民生さんマインドが表れていて素敵。
このクラクション部分で、クラクションだとわかるようにコーラスの音を増やしてわざと不協和音にしていたり、そこだけリズムを変えたりと、細かなこだわりが素晴らしい。「しつこい野郎だ」のプンスカ怒っているような歌い方も込みで大好きな一節。
「腹を立てるなよ 余裕を失うなよ 成功を祈るのよ 次の町に行かないと」~ガソリンガタリン~
こちらも「103」同様、民生さんマインドが垣間見える歌詞。
深夜、高速を走っている途中、今どこかすらよくわからない山の中でガソリンが足りなくなってしまう…という、まあ曲名どおりの歌なのだが、そんな状況に陥っても尚「怒ったところでどうしようもないでしょ」マインド。めちゃくちゃ素敵。
2番では、実はガソリンの問題ではなく車自体の問題だということが判明するのだが、それでもマインドは変わらず。
というか民生さんマインドも素敵だけど単純にストーリー展開面白くないかこれ。
リズムによる文字数や音のハマり方に制限がある中で、これだけの短い文章なのにきちんとストーリー展開がわかるってすごくないか。詩人になれるぞ。
「君のスカートの模様 部屋のかべ紙にしよう」~マシマロ~
ここに来て定番の「マシマロ」。
この後の「君に口出しは無用 ただ静かに見ていよう 君とともにいれるよう 日々努力し続けよう」ももちろん素敵だが、あえてその前をピックアップしてみた。
後に民生さんはインタビューで「″~よう″って言いたかった(韻を踏みたかった)だけ」と話している。
確かに1曲を通して「~ない(~い)」、「~よう」で韻を踏んでいるが、それにしたって「君のスカートの模様 部屋のかべ紙にしよう」という歌詞の発想がすごいと思う。
なんて突飛で、なんてお洒落。素敵。
「愛のうたをうたってもひとり 手をたたいて呼んだって 今日もあすも泣いても笑っても 組み立て組み立て はめ込んでつめ込んで きがえて片付けて 君が来るのを待って」~ひとりカンタビレのテーマ~
ピックアップするところが長すぎてもはやピックアップなのかわからないが、どうしても省略したくなくて全部書いた。
この曲も、この部分に限らず全体を通して歌詞が大好き。
雨の日に、家で一人夢中になりながら作業する。雨から連想される悲しさや侘しさは全くない。一人でテンションが上がったり一人で静かに没頭したり、「一人であること」を楽しむ。一人は楽、一人は簡単、一人でも楽しく生きていける。だけど、着替えて片付けて、君を来るのを待っている。
このさりげなさがたまらない。
「結婚というものは、一人でも生きていける人間同士が、それでも一緒にいたいからするものだ」というような名言をどこかで聞いたことがあるが、まさにそんな印象を受ける歌詞。
全体を通して聴くと情景が鮮やかに浮かんできて曲に没入してしまう。
民生さんの歌う「愛」の形はいつもさりげなく、あたたかく、優しい。
「あなたがいないと 死ぬほど寂しいと 言えるまでの愛じゃないと」~The STANDARD~
こちらも言わずもがなの名曲。
前述の「ひとりカンタビレのテーマ」に通じるところがある歌詞だと思う。
「一人でも生きていけるけれど、あなたを待ってる」は「あなたと過ごす時間は楽しいけれど、一人でも生きていける」でもある。その時どちらに焦点を当てるかというだけのこと。
寂しさ、虚しさ。ただそこに在るだけの無機質さと、確かに感じられるあたたかな温もり。聴く度に色々考えさせられる至極の1曲。
「宇宙の唄 魚の唄 裸の豚 コンピューター」~たったった~
「個人的に好きな歌詞」という名目のもと太字で打ち込んでいる現時点であまりのくだらなさに笑いが止まらない。
最初のときも、至極真面目に曲を聴いていたところ、思わず吹き出してしまった歌詞。
1番の後半から「浜辺の唄 牧場の唄」と、「~の唄」で韻を踏んでおり、そのまま2番「宇宙の唄 魚の唄」と来て、ゆったりとした曲調のまま、いかにも哲学的なことを言いそうな雰囲気で「裸の豚」と来たもんだから文字通り吹き出してしまった。いや確かに韻は踏んでいるけれども。
しかもその後気の抜けた声で「コンピューター」と続く。面倒臭くなったんかとツッコミたくなる、遊び心溢れる歌詞。
「3時半を過ぎれば誰もが友だち オレゴンと三重と佐賀とビルマのバンドが出来た」~みんな元気~
単純に面白すぎる。歌詞というかエピソードというか。
あるバーを覗いたら大変賑わっており、何とか奥の方に空いている席があったから座ったものの、周りの客はそれぞれ野球や競馬や下世話な話で盛り上がり、海外から来た客も人種関係なく仲間のようになって盛り上がっている、というストーリー背景が1番で展開されてからの2番でこの歌詞。
「3時半を過ぎれば誰もが友だち オレゴンと三重と佐賀とビルマのバンドができた」
お酒も深まりテンションも上がって楽しくなっちゃった結果が多国籍バンド結成は面白すぎるだろ。
これ実話なのかな、実話でも面白いしフィクションだとしても国や地域のチョイスが絶妙すぎて面白い。オレゴンと三重と佐賀とビルマだよ???こんなん言っちゃアレだけど普通そこ選ばなくない???(おい)
「だいたいこんなことをなんで私が言ってるの しかし頼まれたから言わせてもらうよ 戦え若者よ わしらが楽になる」~人の息子~
まずもう曲名がいい。所詮は人の息子だもんね、好き勝手言えるもんね笑
冒頭の「手を抜け 気を抜くな」も民生さんマインド全開でとても素敵だが、結局ここが個人的に1番好き。民生さんらしすぎる。
「そういう柄じゃないのになんでこんなこと言ってんだ?でも頼まれたんだもん仕方ないよね、俺ら楽になりたいから頑張っとくれ頼んだ」的な適当で人任せの重くないニュアンスが最高。こういう歌が1番応援ソングに適してる気すらする。気抜けるしリセットされるもん。
「机に野ばら 飾って暮らす たまにサンダーが小雨を降らす」~野ばら~
全体を通して世界観が好きすぎる。素朴で飾り気がないのにお洒落。なんというか「丁寧な暮らし」って感じ(?)
一人で穏やかに暮らしていて、外の天気からふと君のことを考える。
その静かで優しく、柔らかい毛布に包み込まれるような雰囲気が大好き。
「机に野ばら飾って暮らす たまにサンダーが小雨を降らす」
この短い文章の中で、どんな人格でどんな暮らしでどんな情景なのか、この曲の背景を細部まで簡単に想像させられるのが本当にすごい。
「何をしに来たの する気なんかあるの ないので帰ろう」~海猫~
歌詞のみならず、メロディも合わせて曲全体が大好きな1曲。
初めて聴いたのはわずか数年前なのに、この曲を聴く度、幼い頃の雨の日を思い出して懐かしさと切なさで泣きそうになる。
誰もいない漁港に車を停め、運転席で姿勢を崩し、1人ボーッと大粒の雨が降る外を眺める。何をするわけでもなく、ただボーッと。
頭の中では無意識に色んなことがぐるぐる回っていて、数分後、ハッと気が付き「…まあ、こんな雨だし何もできんし…帰ろうかな」と車を出す。
そんな情景を思い浮かべる。なんて趣深く素敵なんだろう。
民生さんの歌詞にはストーリー性のあるものも多いが、共通して皆「余白」がある。これがこうでこうだからこう!!ではなく、こちらの想像に任せ、委ねてくれるその「余白」がたまらなく好き。
こんなにエモーショナルで情緒溢れる曲なのに、なんと1曲を通して計3回も犬が横切っているところがまたいい。野良犬が多すぎる。
まとめ
気取らず、飾らず、素朴で、自然で、そしていつも一人ぼっち。それが奥田民生の書く歌詞。
安定と虚しさ、そして侘しさと充足。一見相反するようでいて、実は同じところに存在するもの。
いつも私たちに寄り添い、側に居てくれる民生さんの歌詞は、そんな人間の感情を意図せずありのまま映し出している。
押し付けがましくなく、ここ置いとくんで気になった方はお好きにどうぞ、なスタンスの民生さんが大好きだ。
何かしらの遊び心を入れ込むところや、その遊び心のバランスとセンスも素晴らしい。
ご本人は、シャイゆえに歌詞について言及されるのを避けたがるが、言及せざるをえないだろう、こんなに素晴らしいのだから。恥ずかしいのか知らんが好き勝手言わせてもらうぞ。
今回は「さすらい」「イージュー★ライダー」などの定番中の定番と、ソロ以外の楽曲についてはあえて避けてみた。とんでもなく長くなるので←
でも他にも色々あるんだよおぉ!!「白から黒」なんて韻の踏み方と言葉のチョイスが素晴らしいし、ユニコーンの曲だと「アルカセ」に「素晴らしい日々」に「雪が降る町」に…書ききれない!!!
いつか第2弾書くかもなこりゃ…
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