奥田民生「59-60」DAY1 股旅編 現地ライブレポ in両国国技館(24.10.26)
結論から言わせてもらう、DAY1、DAY2ともに、今まで行ったことのあるライブの中で上位に食い込むほど行ってよかった、楽しかったライブだった。
民ソロ弾き語りを現地で見るのは約半年ぶり。「注釈付指定席」だというのでどんな席かと思ったら、民生さんを真横から見ることのできる大変素敵なお席。
ライブビューイングもあったが、見られなかった方や、現地だからこそわかることもあったと思うので、簡潔(当社比)にライブレポをしていこうと思う。
1.農夫と神様(with 浜崎貴司、どぶろっく)
開演と同時に神の格好をした民生さんが出てきたものだから客席は大爆笑。
ということはどぶろっくが出てくるな、と思っているところに農夫の格好をした浜ちゃんが出てきたものだからびっくり。
Xで、ゲストは誰か論争が起こっている際に「浜ちゃんは今日九州でライブだからゲストじゃない」というポストを見たのになぜここにいる???
曲後のトークで判明したことだが、なんとライブの予定を翌日にズラしてもらったとか。そんなことしていいの!?!?ありがとう浜ちゃん!!!
後半にはどぶろっくのお二人も出てきて2人の農夫(浜ちゃん、江口さん)と1人の神(民生さん)が3人揃って大きなイチモツを欲しがる。まだ1曲目だというのに笑いが止まらない。
2.魅惑のパンティライン(どぶろっく)
これを2曲目とカウントしてよいものなのか…
民生さんが神様の服装からライブ衣装に着替えないといけないため、その間の繋ぎ&盛り上げとしてここでなぜかどぶろっくが出番を任され1曲演奏。
曲名からお分かりいただけるようにどう考えても下ネタなのだが、なんせお二人とも歌がお上手なので下ネタどころかだんだんそういう洒落をきかせたタイプのちゃんとした曲に聴こえてくる←
しかし流石は芸人さん、盛り上げに関してはプロ中のプロ。
観客に歌を振ったり笑いを交えながらコール&レスポンスをしたりしてあっという間に会場の空気は楽しげ&和やかに。
3.674
どぶろっくの前説の後、着替えを終えた民生さんが登場して早速演奏を始める。
この曲を生で聴くのは今回が初めて。
民生さんのソロにあまり造詣が深くなかった私だが、この日のために片っ端からアルバムを聴き漁って予習をしてきたので、イントロ部分から「674だ!!!」と嬉しくなった。
初期アルバムから順に繰り返し聴いていたため、この曲はここ最近特によく耳にしていた。出だしの歌声が、当時の音源の面影を強く感じる歌い方で、一瞬、今ステージにいる民生さんにお若い頃の民生さんの姿が重なって見えた。
4.羊の歩み
ここでステージが回転し、民生さんが下手側を向いた。私の席は上手側だったので、こちらからは民生さんの後ろ姿が見える。
この曲も生で聴くのは初めて。
しかも、民生さんの後ろ姿を見ながら生で曲を聴くという機会もそうないため、このレアな光景を目に焼き付けようと集中してステージを見つめた。
リズムに合わせて小さく動く身体、猫背で華奢な背中、力が入ってクッと上がった肩。
普段スタッフさんや関係者の方だけが見られる演奏中の後ろ姿。
ABEDON AND THE RINGSIDEに「ゼロキュー」という曲があるが、詞曲の木内健は「ゼロキューは民生さんのことを歌った歌。前になんかの映像で、民生さんが雨降ってる中リハをしてるところを後ろからのアングルで撮ってるやつがあって。で、民生さんが歌ってたら雨がサーッと止んでいくの。その後ろ姿が男前だなと思って。」というようなことを仰っていた。
民生さんの後ろ姿を見つめながらその言葉がふと過り、納得した。「あぁ、本当に男前だな」と。
5.俺のギター
またしても生で聴くのは初の曲。
下手側を向いていたところ、またステージが回転。完全にアリーナに背を向け、注釈付枡席の皆様と対面する形に。
私のお席からは民生さんの右半身が見える。
リズムボックスもなし、ギター1本で演奏を始める民生さん。民生さんと対面する注釈付枡席の皆様方は手拍子をしたり声を出したりとノリノリだが、民生さんの背しか見えないアリーナ側は比較的落ち着いて曲を聴いている。
すると、盛り上がりが足りなかったのか、間奏で珍しく客席を煽る民生さん。それでもまだ足りなかったようで、演奏をしながらくるりとアリーナ側を振り返り、手拍子を促してシャウトしまくる。
これには客席も大盛り上がりで、自然と会場全体に手拍子の輪が広がる。
普段あまり客席を煽ることのない民生さんが、もっと反応がほしそうな素振りを見せて客席を煽り、自ら盛り上げる姿はとても可愛らしく、意外性もあって素敵だった。
6.エンジン
またもや生で聴くのは初の曲。
ステージが回転し、民生さんが上手側、つまり私の席側と対面する形になる。
もちろん知ってはいたが、特段お気に入りというわけではなかったこの曲。しかし今回生で聴いて一気に魅力的に感じるようになった。シンプルに感動。
まずギターの音がいい。深みと重みのある低音が、1曲を通し、絶えず下の方でビリビリと鳴り響いている。
空間をグワンと揺らすその低音の上に乗っかる、民生さんの酒やけしたハスキーな色っぽい歌声。
砂埃が舞う荒野、ジリジリと地面を焦がす太陽、車高の低い古びたスポーツカー。たった1人で演奏しているのに、ここまで鮮明に想像させる。
サビの最後、「山を越えて時を超えて」のシャウトは圧巻。叫んでも尚厚みを保ち続けるその歌声が、鋭く真っ直ぐ空間を切り裂く。
思わず聴き入っていた観客たちから歓声が上がる。
風邪気味で少し鼻声、この曲の前も時々咳をしたりと万全な体調ではないはずなのに、流石は奥田民生といったところだ。大事なところは絶対に決める男。本当に歌が上手い。
7.健康(with 寺岡呼人)
「ゲストがいます」と呼び込んだのは寺岡呼人さん。
ここまで初めて聴く曲続きな上に呼人さんも初めて生で見られるだなんて、しかも伝説(?)のユニット、「寺田」として!!
「寺田のテーマ」からの「健康」。こちらもまたもや初めて生で聴く曲。
音源で聴いて大好きになった曲だったのでライブで見られて本当に嬉しかった。
上記の通り、呼人さんを生で見るのは初めてだったのだが、もうひたすらにハモリが上手い。映像で見たときも思っていたが、生で聴くとより凄さがわかる。
ベースプレイも全くリズムがブレず、テクニカルな上に安定しているし、とにかく本当に下ハモの音程正確率が異常。下ハモも言わばベースの役割、つまり呼人さんは生粋のベーシストなのだと思う。
そして人と一緒に歌うと自然とギアが上がってさらに歌が上手くなる男、奥田民生。
もうずっと上手い。ゆったりなテンポの曲の方が音程正確率は下がる(勢いでいけなくなるからリズム感の良さと喉の使い方の上手さが問われる)はずなのに、全然音を外さない。凄まじい安定感。
音数が少なく、無音の拍が多い曲のため、自然と客席から手拍子が起こる。
会場を角から角までぐるりと見回して、観客の出す手拍子に合わせて演奏をする民生さん。ドラムがいない股旅スタイルゆえの客席とのそんなやり取りが楽しくて大好きだ。
休憩
(´ё ` )「トイレ行ってきていいっすか、10分休憩!」
突然設けられた休憩時間に、観客は各々トイレへ行ったりスマホをいじったり。かくいう私もスマホを見ていたら、3分くらい経って急に客席から歓声が上がった。
何事かと目線を上げると、普通に民生さんがステージにいる。
(´ё ` )「あっ、いやいやまだ(ステージライト)明るくしなくていいから…笑 休憩時間だからね!」
……いやいやいやいや、だよねー!とはならないだろ。休憩時間なのになんでアンタそこにいんのよ。
ステージライトは最小限、客電は点いたまま、観客はトイレに行ったりスマホをいじったり、民生さんはギターのチューニングをしたりちょろっと喋ったり。こんな緩くていいの?いいならいいけれども!むしろその緩さが我々ファンを信頼してくれてるみたいで嬉しいけれども!!
そして休憩中だというのに、しれっとゲスト紹介をしてトータスさん登場。
トータスさんの髪型がちょんまげだ、力士だ、髪を切らない理由はなんだ、逆に髪を切る理由は何だ失恋か、と、おおよそ60手前のおっさん2人がしているとは思えぬ会話を繰り広げるなど。
8.いい女(with トータス松本)
なんとトータスさんを生で見るのも初。つまり「いい女」をライブで聴くのも初。
この曲は昔民生さんとトータスさん2人で演奏したことがあり、私はその映像からこの曲が大好きになった。ウルフルズの曲の中で現状ダントツ1位で好き。かっこいい。
映像でかっこよかった曲は、生でもやっぱりかっこよかった。
初めてトータスさんの歌声を聴いた印象としては「民生さんと同じ属性の声だ」。
今まで様々なライブやフェスでたくさんのアーティストの歌声を聴いてきたが、結局やっぱり奥田民生の歌声が1番好きだなと思ったし、奥田民生と同じ属性の声の人って案外いないものなんだなと思っていた。
今日やっと見つけた、トータスさんは民生さんと同じ属性。
声質も、パワーも、迫力も、人の歌声をグラフ化する装置があったら、この2人は大体同じあたりに属していると思う。
ただ少し違う点として、トータスさんはアコーディオンタイプ、民生さんは空気砲タイプだと感じた。
トータスさんの歌声のパワーは最小値と最大値にかなり差があり、そのパワーの使い方も1曲を通してコロコロ変わる。アコーディオンのように、弱い出力で音を出したかと思えば、一気に空気を送り込み不意打ちで針を振り切ったようなパワーを発揮する。
エンターテイナーであり魅せ方、引き込み方が上手い。
対して民生さんは空気砲タイプ。その名の通り、出力が一定して強い。
簡単に言ってしまえばずーーーっと声がデカイ。もちろんその中で強弱はあるものの、「地で声がデカイ人」という印象だ。そんなに振り切って思い切り声を出していないはずなのに、他の人の全力シャウトよりデカイ。
属性は同じであるものの、強弱がしっかりあり、魅せ方が上手いトータスさんにはまさに「ガッツ」という言葉が似合うのに対して、一定して声がデカイ民生さんは「大迫力」という言葉が似合う。その違いも面白いと感じたし、人が歌うからこそ生まれる音楽の旨味だとも思った。
肝心の曲に関してだが、シンプルに大感動した。素晴らしかった。今回のゲストセッションの中で1番印象的だったのがこの「いい女」である。
パワータイプのお二人が爆音でギターをかき鳴らして叫び散らかすのだ、そんなの最高に決まっているだろう。
もう私の乏しい語彙では表現しきれないほど素晴らしかったし、今後嫌なことがあって自分に自信がなくなったりしたら「…でもトータスさんと民生さんに『お前いい女』って言われたしな」と思い出して自信を取り戻せそうなくらいには感動した(どういうこと)
持ち前のパワフルさで観客を巻き込み盛り上げるトータスさんと、そうして演奏に熱が入るにつれ増していく2本のギターのグルーヴ、とても正確に、そして熱く勢いよく、その歌声のパワーを爆発させて響かせる民生さんとトータスさん。
あまりに楽しくて、あまりにかっこいい。
死ぬまで一生忘れないであろう演奏がまた1つ、私の中に増えた。
「だけど ひとつだけ言いたいことは♪」のあと「…いつも俺のこといじめんなよ」とぶっ込むトータスさんと「うおぉ!いきなり入れてくんなよ!」と驚く民生さん。
お二人の素敵な関係性に思わず微笑んでしまった。
9.ずっと好きだった(with 斉藤和義)
トータスさんが捌けるなり、(´ё ` )「さあ!ここで、ゲストが!!」と言い出す。
誰だ誰だ、というか思ったよりちょっとゲスト多くない?(喜)とザワザワする客席。
(´ё ` )「斉藤和義!!!」の言葉に会場は大盛り上がり。なんて豪華なゲストたち…!!
いつもの調子で、背中を丸めてのそのそ登場する和義さん。
民生さんも立ち上がり正面から軽くハグをしたのだが、その際のお二人の身長差&体格差…!!!
和義さんは以前ライブに行ったことがあるので「和義さんって画面で見るよりしっかりした骨格だし、普通に大柄な男性なんだよね」とは思っていたが、民生さんと並ぶと差は歴然。
小柄というほど小さくはないものの、華奢で細身な民生さんと、背が高く手足も長い和義さん。軽率に萌えた。2人の肩幅と肩の高さの差に。
舞台にドラムが出てきた時点で「ずっと好きだった」だなと確信。
和義さんの代表曲のひとつなだけあり、和義さんご自身で演奏されることは割とあるのだが、民生さんがドラム&下ハモで参加となると一気にレア度が増す。
演奏を始める前に、(´ё ` )「2番!!…2番だねっ!」と1人呟いていらっしゃったので、2番に何かあるのかな?と思っていたら、1番ではドラム&サビの下ハモに専念されていた民生さんが2番で主旋律を歌い始めた。
当たり前にお二人とも歌が上手い。
民生さんと和義さんは「一見高い声はあまり出なさそうなタイプに見えるのにどこまででも高音が出る歌手」のツートップだと思う。
安定感、音程正確率がとにかく凄まじい。
民生さんの叩く力強い独特なグルーヴを持つドラムに、和義さんのスマートかつスタイリッシュな技巧ギタープレイが重なる。
しなやかで甘い和義さんの歌声と、それを下から確実に持ち上げて支える民生さんのハモ。2人の声が寄り添いながら完璧な音程で歌い上げていく。
民生さんがドラムを叩く姿を見るのは久しぶりだし、こんなに真横から見られる機会もそうない。今日のライブは何もかもレアすぎる。
10.ありがとう(with 浜崎貴司)
再びゲストとして登場した浜ちゃん。一体何の曲をやるのかと思ったら、
(´ё ` )「いつまでもあると思うなよこのコラボ!」
浜「そうよ!感謝しよう!」
からの井上陽水・奥田民生の「ありがとう」!!!
もちろん生で聴くのは初めて。
陽水さんのパートを浜ちゃんが歌い、民生さんは自分のパートを歌う。
お二人ともめちゃくちゃ上手いし声がデカイ。特段声が大きいイメージのなかった浜ちゃんの声量に驚いてしまった。
高音ハモパートになると時々見え隠れするお若い頃の民生さんの面影。快活でハリがあり伸びやか。まだまだ内にパワーを秘めたその歌声に、当時まだ30代だった民生さんの姿がチラリと見えて胸が熱くなった。
こうして生で聴くととても素敵な曲で、知らない間に口角が上がってしまう。
どんな説教を聞くより、どんな熱い言葉をかけられるより、周りに感謝する心を自然と持ててしまうこの曲。
小学校で道徳の授業をやるよりこの曲を生演奏で聴かせたほうがよっぽどタメになると思う。音楽の力の凄さを改めて思い知ったし、周りや運や環境に感謝しようと心から思わされた。
民生さん、段取りを間違う
(´ё ` )「吉井和哉!!!」
まさか吉井さんまでゲストに登場すると思っていなかった観客は大盛り上がり。大歓声と拍手が会場を包む。
しかし吉井さんはすぐに出てこず、少し経ってからゆっくりと登場。スタッフさんが慌てて吉井さんのぶんの譜面や椅子を運んでくる。その一連の流れを見て民生さんが気付いた。
(´ё ` )「あ!!俺1人でやるんだったね!!」
吉井さんを呼び込む前に1人で数曲やる段取りだったのをすっかり忘れていた模様。
(´ё ` )「どうする?このままやる?一回戻ってもらう?」
民生さんが問いかけると身振り手振りだけで「段取りどおり行きましょう、一回戻ります」と示し、いそいそとステージ下の階段部分に戻る吉井さん。
(´ё ` )「追いかけてーも追いかけても♪」
戻る吉井さんの背中を見ながらお茶目に「バラ色の日々」を一節歌う民生さんに会場は爆笑。
11.野ばら
(´ё ` )「…こうなると1人が寂しいな」
そう言って一笑い取った後、歌い出したのは「野ばら」。
生でも何度か聴いたことのある曲だが、何度聴いてもやっぱりいい。
普通、このようなゆったりしたテンポの曲だと多少音程が外れたり、どうしても粗が目立ったりするものだが、民生さんに関してはゆったりしたテンポの曲こそ、その凄さがよくわかる。
軽く歌っているはずなのに本当にピッチが安定していて、とても丁寧。
加えてこの日、民生さんは鼻声気味で、最初の方の曲では曲間に咳き込んだり鼻を啜ったりしていた。そんな万全とは言えない体調であるにもかかわらず、一定のレベル以上の演奏を必ず聴かせてくれる民生さん。なんて素晴らしいミュージシャンなのだろう。
12.ロボッチ
この日の民生さんソロ弾き語りパートで1番感動したのがこの曲。
またしても生で聴くのは初めて。もちろん曲自体は知っていたし、「これは弾き語り生で聴いたらたまらないだろうな」とも思っていたが、想像以上にたまらなかった。
歌が上手い。もうその一言に尽きる。
高音は伸びやか、低音は丁寧、そして全ての音域においてピッチが完璧。こんなゆったりしたテンポで音程の上下も激しい曲なのにまるで音を外さない。上手すぎる。
常々思っていたことだが、民生さんは語尾の部分の音程正確率が異常だ。
実際に歌を歌ってみるとわかるが、サビ頭や明らかな見せ場では意識がそこへ集中するのでわりと音を外さずに歌える。しかし、そこに意識が集中しているぶん、そのすぐ後の語尾が蔑ろになりがちだ。歌っているときは気付かないが、後々聴いてみるとなんか微妙に音が外れていることが多い。
「イージュー★ライダー」で例えるなら、「名曲をテープに吹き込んで」の部分。
「吹き込ん」で音程がグッと上がるのでそこへ耳がもっていかれがちだが、実はその後の「で」が意外と難しい。そのあと「あの向こうの」とすぐ次を歌わなければならないので、息継ぎの時間も考慮すると、一発ドンピシャで音を当てなければならない。
それが異常に上手いのが民生さん。
これはもう練習がとか経験がとかという話ではない。完全な「才能」。本当に生まれながらにして音感の優れた、歌の上手い人なのだろう。
目立つわけでもなく、気付かず聞き逃してしまいがちな細かい部分の話ではあるが、当然のようにさらりと一発で音を当てる技術は真似しようと思って真似できるものではない。
歌が上手く、巧く、旨い男、それが奥田民生だ。
13.何と言う
またまた生で聴くのは初めての曲。
相変わらずピッチは外さない。あたたかくて優しい、ほっとするような民生さんの歌声が会場に響く。
ずっと民生さんを見つめながら曲を聴いていたが、ここで一度目を閉じてみた。
というのも、30周年記念として出された民生さんの著書「59-60」を読むと、年齢が年齢なだけあり、ご自身の生き方や死生観などに関するトピックが多く書かれている。
それを読むうちに「民生さんの歌声と演奏を生で聴ける間に、目にも耳にも色んなことを焼き付けておかないといけないな」と思ったのだ。
目を閉じてギターの音を聴く。
あぁ、奥田民生の音だと口角が上がる。上手く説明できないが、このアコギの音を聴くだけで民生さんが弾いているとわかるのだ。
目を閉じて歌声を聴く。
何度も音源をループし、何度もライブへ足を運び、すっかり聞き慣れた大好きな歌声。
奥田民生の歌声を、演奏を、こんなに何度も生で聴くことのできる人生でよかったと、本当にそう思った。
すぐそこに奥田民生がいるというのに、あえて目を閉じ、音楽だけを集中して聴くというこの贅沢。
贅沢は、贅沢できる余裕があるうちにしておいた方がいい。
自分は一体なぜ奥田民生という男を好きになったのか。目を閉じて聴くとその理由が改めてわかる。
ロビンに怒られるOT
1人で演奏を終え、改めてゲストの吉井さんを呼び込む。
ゆったりと登場し着席した吉井さんが話し出す。
吉井「裏で緊張してたらさ、まあでもあと3曲あるからと思ってたら吉井和哉ー!!っていきなり呼ばれて…」
\(爆笑)/
吉井「あの…裏でちょっと揉めた。出るか出ないかみたいな、ピリピリしてた」
しっとりとしたトーンで裏の混乱を話す吉井さんに爆笑の会場。
その後もつらつらと吉井さんからお叱りを受け、徐々に反省モードになっていく(´ё ` )
吉井「段取り変えると現場混乱するの想像できるでしょ?」
(´ё ` )「はい、めっちゃ想像できます…(🥃飲みながら)」
吉井「飲まないの!」
(´ё ` )「はい…(🥃置く)」
(´ё ` )「いや(順番)入れ替えてやれるかと思っt」
吉井「やれるわけないでしょ冷静に考えてみなさいよ」
(´ё ` )「…………すみません(シュン)」
すっかり反省モードになり、お子のように素直に謝る(´ё ` )
ファンも聞いたことないくらいのトーンで、律儀に吉井さんの方へ顔を向けてシュン…と謝るものだからさすがに吉井さんも焦ったのか、即座に「いやいや、いいですよ。逆にオイシイから」とフォローする。
なかなか見られない民生さんの姿を引き出してくれてありがとう吉井さん…!!年下に怒られて段々反省モードになっていく民生さん超可愛かった…!!
14.LOVE LOVE SHOW(with 吉井和哉)
軽快なトークで会場を何度も爆笑させたあと、始まったのは「LOVE LOVE SHOW」。
吉井さんを生で見るのは初めて。もちろんこの曲を生で聴くのも初めて。
以前この曲をお二人で演奏する映像を見たことがあり、曲自体は知っていたので、イントロからの「おねーさーん!」ですぐにこの曲だとわかった。
吉井さんの歌声を音源で聴いていたときは、もったりとした粘度がありながら同時になめらかで伸びやかな歌声、という印象を持っていたが、生で聴くとその印象がかなり変わった。
まず、その声の丸み。歌声のどこにも角やトゲがなく、するりと空間に馴染む。
かといってモワッとした通らない声というわけではなく、細かな霧が集合体になって1本の芯を作り上げるような、そんな不思議な歌声。
伸びやかでなめらかな印象はそのままに、そこへ暖かみや丸さという印象が加わった。
今日のゲスト全員に言えることだが、何十年も第一線を走り続けているだけあってひたすらに歌が上手い。もう特筆すべきことがない。だって全編通してずっと上手いんだもん。もはや「上手い」以外に書くことがないのよ。
15.もしかしてだけど(with 吉井和哉、どぶろっく)
浜ちゃんを除いたここまでのゲストたちは、それぞれ1曲ずつの演奏だったが、曲が終わっても吉井さんが立ち上がらなかったため「あれこれはもう1曲やる感じ?」と思っていたところ、民生さんが話し出した。
(´ё ` )「あの…どうしてももう1曲、やらないといけない、やりたいやつがあって…はい、どぶろっくー!!」
どぶろっくを再び呼び込む民生さん。
もうこの時点で民生さんの魂胆が全てわかってしまった観客たちは大爆笑。
(´ё ` )「どうしても!どうしても吉井和哉とどぶろっくを繋げたかったの!!見てみたかった!!笑」
ですよね、だと思いました。民生さんのそういうところ好きですよ。私も吉井和哉×どぶろっく見たい。
そうして4人で始まった「もしかしてだけど」。どぶろっく往年のテッパンどストレート下ネタ曲に会場は大盛り上がり。
(´ё ` )「車で道路を走ってたら~♪バイクに乗ってる女が~♪赤信号の度に隣に来るんだ もしかしてだけど~♪」
\「もしかしてだけど~♪」/
(´ё ` )「もしかしてだけど~♪」
\「もしかしてだけど~♪」/
(´ё ` )「バイクじゃなくて俺の上に跨がりたいんじゃないの~!!!♪」
\(大歓声)/
…改めて文字に起こしたら何だこれは。かくいう私も大歓声を出していた側ではあるのだが。だって盛り上がるじゃん、こんなデッケェ声でどストレートな下ネタ言う奥田民生見られる機会そうないでしょ。
最後の「バイクじゃなくて」のところなんて反響しやすい会場で何て言ってるかちゃんと聞き取れるようにわざわざギター弾くのやめてとんでもなくデカイ声で歌ってたんだから。
その後のどぶろっくによるコール&レスポンス。
江口「民生に抱かれた~い♪民生に抱かれた~い♪さあ皆さん恥ずかしがらずに!」
\「民生に抱かれた~い♪」/
(´ё ` )「(客席に)おっさんもおるから!!」
めちゃくちゃ笑った。
この日イチ観客たちが団結したの多分ここ。お姉様方の声量がすごかった。
というか普通に考えて「民生に抱かれたい」が冗談抜きで成立してしまう還暦(ほぼ)すごすぎないか。私の場合は親より歳上なのでさすがにだけど、あの会場の大部分を占めるお姉様方はそこそこ本気で歌っていたと思う。
…と、Xで呟いたら「おっさんだけど自分も歌ってました」とリプが来た。何件も。
お姉様方だけでなくお兄様方も民生に抱かれたいようです。
そんでめちゃくちゃ笑うと同時にめちゃくちゃ萌えた。
「民生に抱かれたい」コール&レスポンスの真っ最中、大画面に映し出された民生さんのお顔…!!口角はふにゃりと上がって眉は八の字に垂れ下がり、気恥ずかしそうにテレテレしてるあの表情…!!なにそれかわいい…!!!
照れ隠しの「おっさんもおるから!」だって、女性はわかるけどおっさんは抱かれたいって言わないだろってことかい!?
女性に「抱かれたい」と言われることを甘んじて受け入れてる感じがいい。とてもいい。説明はできないがすごくいい。
「抱かれたい」って言われて素直に照れちゃう還暦(´ё ` )可愛すぎる。
その後「和哉に抱かれたい」ターンも来るのだが、さすがは吉井和哉、ふわりと笑って何でもないことのように受け流す。強者の余裕。隣の男は今だテレテレしているというのに。
その後、どぶろっく江口さんが「民生のことが好きな女はみんな可愛い~♪」と歌ったときも、民生さんの表情が凄まじく可愛らしくて思わず叫びそうになった。
先ほどと同じく、ふにゃりと上がった口角に眉は八の字、大きなお目目をきゅるきゅるに輝かせて、嬉しそうに照れくさそうに顔を綻ばせて はにかみ笑うものだから心臓がギューーーンってなった。(語彙)
自分のファンが可愛いって言われて嬉しいかい、そうかい。それで照れちゃうのかい、そうかい。ハァ…カワイイナ…
曲の締め部分、
江口「民生に抱かれた~い♪」
\「民生に抱かれた~い♪」/
江口「民生に抱かれた~い♪」
(´ё ` )「そういうことだろ?♪ ジャーン」
(´ё ` )「…いや、そういうことだろ?じゃないんですよ」
それまでテレテレし続けてたのに、締めだからとデッカイ声で「そういうことだろ♪」と歌ったあたりもギューーーンってなったし、そのあとの照れ隠しの「そういうことだろじゃないんですよ」にもギューーーンってなった。
なんかもう、とりあえずどぶろっくに多大なる感謝を。ありがとう、またいつでもゲストとして遊びに来てください。心待ちにしております。
曲後、捌けようとする吉井さんが、ギターを抱えたまま座っている民生さんに近付きハグ。
大きな背を屈め片腕でスマートに軽く民生さんの肩を抱く吉井さんと、体勢的な問題と「1人にするな、1人は寂しい、帰らないでくれ」との思いから、縋りつくように吉井さんのシャツを鷲掴んでスッポリ胸に収まる民生さん。
……………ッッッッ(声にならない声)
16.さすらい
どぶろっく、吉井さんが捌け、1人になった民生さん。
(´ё ` )「…なんかもう、さっきのが最後でいいんじゃないですか?さっきのやつラスト感あったよね笑」
そう言いながらスタートしたのは往年の名曲「さすらい」。
あぁ、もう終わってしまうのだなととても寂しくなった。
体調も万全とは言えない中、今日もこれほどたくさん歌ったというのに、変わらずまだまだ伸びやかな歌声。最後まで驚異の音程正確率。
「さすらい」は、バンドバージョンよりも弾き語りバージョンの方が、民生さんの歌声をより堪能することができて好きだ。
「どーなったー♪」では観客たちの歌声が会場を包み込む。
音が反響しやすい会場の造りゆえ、観客の歌声も実際よりかなり大きく聴こえる。
「このまま死なねぇぞ」の雄叫びで拳を突き上げる観客たち。
奥田民生のファンになってよかった、ここへ来られてよかったと、心の底からそう思った。
アンコールで登場
本編が終了した後、すぐにアンコールを求める手拍子が起こる。
その間にステージ上では袖からドラムセットが運ばれてきたり、スタンドマイクなiPadをセッティングしたりとスタッフさんたちが慌ただしく動いていたため、「これはアンコールゲスト総出演では?」と思っていたらビンゴ。
吉井さんを除いたゲストが全員ゾロゾロと出てくる。
どぶろっく森さんはヅラ&サングラスという出で立ちで、本日仕事で来られなかったYO-KINGさんの代役。
「ほぼカーリングシトーンズ」の完成だ。
曲前のトークで「まさかこの人数が一日に集まるとは思わなかった、何で皆(予定が)空いてるの笑」と言う民生さん。
とりあえず片っ端から声をかけたら片っ端から来てしまった模様。
民生さんが片っ端から声をかけてくれたおかげでこんなに貴重なライブを見ることができた。大感謝。
17.俺たちのトラベリン(with 浜崎貴司、寺岡呼人、トータス松本、斉藤和義、どぶろっく)
和義さんがドラムにつき、下手からどぶろっく森さん、トータスさん、民生さん、呼人さん、浜ちゃん、どぶろっく江口さんの順に並んで「俺たちのトラベリン」。
実はカーリングシトーンズの現場へまだ行ったことがなく、この曲も初めて生で聴いた。
ここで何より驚いたのは、シトーンズメンバーの実力と経験値の高さ。
というのも、どぶろっくのお二人も演奏に参加し、所々歌ったりしていたのだが、これだけ大所帯のバンドになると楽器の数が増えるぶん音も増え、全体的なボリュームが大きくなる。
そうなると、どぶろっくのお二人が歌ったときに全く歌声が聞こえない。なんかうっすら歌ってるような気がするが、楽器の音にかき消されて何を歌っているのかよくわからないのだ。
ところが、シトーンズメンバーのパートになった途端に声がハッキリと聴こえてくる。漏れなく全員きちんと聴こえる。
なんというか、ここにいるニコニコ楽しそうなおじさんたちが皆「百戦錬磨の一流プロミュージシャン」であることを改めて思い知らされた。
声の出し方、響かせ方、全てかき消してしまう爆音の中でどうしたら自分を活かせるか、どうしたらその他大勢にならずに目立てるのか、たくさんの経験と場数によって鍛え上げられたその実力が、もはや意識などせずとも身体に染み付いている。
トークパート、盛り上げパートでは、それが本職であるどぶろっくのお二人が場の空気を作ってリードし、バンドでの演奏、歌ではそれが本職のシトーンズがリードする。
まさに適材適所、双方の魅力が十分に発揮される素敵なライブだ。
18.ソラーレ(with 浜崎貴司、寺岡呼人、トータス松本、斉藤和義、どぶろっく)
今度は民生さんがドラムに移動、和義さんはステージセンターでメインギターを担当する。
こちらも生で聴くのは初めてだったが、とても感動したし印象に残った。
まず出だしの和義さんのギターが上手すぎる。上手いのは十分知っていたが、それでもわざわざ上手いと言わずにはいられないくらい上手い。テクニカルでスタイリッシュ、技巧イントロも音源そのままさらっと弾きこなしてしまう実力の高さ。民生さん周りのミュージシャンはどうしてこうも才能豊かなのだろう。
この曲を聴いて改めて思った。奥田民生の歌声が主人公すぎる。
先ほど「爆音の中でもシトーンズは全員声が聴こえる」と書いたが、中でもやはり民生さんの声の通り方は半端じゃない。
「声がよく通る」という言葉からイメージされるような、高くてキンキンしたトゲのある声では全くない。
ではなぜ通るのか。再三言っているように「単純に音量がバカデカイ」からだ。
高くてよく通る声が「スパーン!」なら、民生さんは「ズギャーーーン!!!!」だ。
当たり前みたいに一定してずっとデカイから、こちらも慣れてしまって、声がデカイという事実を忘れがちになる。
主旋律を歌っているときはもちろん、ハモを歌っているときもハッキリとよく聴こえるし、ハッキリ聴こえるのにうるさく感じないのは民生さんの声質と技術の成せる業だ。
シトーンズの皆様方のハモも素晴らしい。さすがは全員フロントマン。
上も下もそれぞれが自分のパートを全うし、パワフルでグルーヴィーな層を作り上げる。
「ハモる」とはこういうことを言うのだ。
ラテンチックな陽気で明るいメロディとリズムが楽しくて曲にノリながら思わず笑顔になる。私の周囲の観客もノリノリで踊っており、「音楽っていいな、素敵だな」と心から思った。
19.イージュー★ライダー(with 全ゲスト)
最後に吉井さんを再び呼び込み、全ゲストで最後の曲「イージュー★ライダー」を演奏。
和義さんのドラムのテンポが信じられないくらい早くて必死についていく民生さん。
お若い頃から今に至るまでの全ての「イージュー★ライダー」の中で圧倒的歴代1位のテンポの早さだったと思う。あんなに早いイージュー聴いたことなくて思わず笑ってしまった。(翌日友人たちと「昨日のイージューめっちゃテンポ早くなかった?」と盛り上がるなど)
疲れてるしテンポは早いしでもう観客に振ってしまえ!!といつもより早めに観客に歌わせる民生さんに笑った。
わかるよ、和義さん体内年齢若すぎて結構テンポ早めにすること多いもんね。
そんなわけでいつもより早めに歌を振られた観客は皆で大合唱。
女性からするとキーが低く、さらに爆音のバンド演奏の中での合唱のため、ステージまで聞こえるかどうかわからないのだが、どうか聞こえてほしいと、民生さんまで届いてほしいと必死に声を張り上げた。
曲が終了し、民生さんとゲストの方々全員でステージの端から端まで時間をかけて丁寧に挨拶回り。
1人、また1人と袖へ捌けていき、最後に残った民生さん。
両腕を高く上げ、ひらひら手を振るその後ろ姿が、30年前の映像から全く変わっていなくてグッときた。
この会場の7500人を魅了した世界一かっこいい男は、大きな拍手を受け、袖へ消えていく。
あぁ、本当にこの人を好きになってよかった。最高だった。
私にとって初めて尽くしだったこの日のライブ。半分以上が初めて生で聴く曲だったし、吉井さん、トータスさん、呼人さんを生で見たのも初めて。
こんなに豪華で素晴らしいライブが1万円そこそこでいいのだろうか。このメンツ、この選曲を考慮したら5万円くらいしてもおかしくないと思う。
忘れられないライブのひとつになったし、このライブを生で見られてよかった、この日のために頑張ってよかった、と心からそう思った。
「今日最高だったな~!明日はどんな感じだろう、楽しみだな」
そんなことを思いながらホテルへ戻り、余韻に浸りながら眠りについた。
翌日、この日に並ぶほど凄まじいライブを経験することになるとは知らずに。
てなことで両国DAY2、GOZ編もあとで書きますー!興味のある方はそちらもご覧いただければ…!!
※追記
2日目レポも書きましたのでよろしければどうぞ…!!↓